災難対治抄の概要

 真蹟十五紙完、千葉県中山法華経寺蔵。日興の『安国論問答』に、第八問答以降最終第十六問答の末文数行を除く殆んどが引文されている(『興全』4頁以降)。身延山に日進の本書写本(後欠、引文が○によって略される)が所蔵される。日全の『法華問答正義抄』第九に「災難根源事」として引文されている。 なお、本抄真蹟について、浅井要麟氏は聖筆にあらずと断じ(『昭和新修日蓮聖人遺文全集』別巻162頁)、また『山上論文』(『日蓮大聖人の思想』二『興風』9号66頁)も真蹟にあらずとする。 確かに字体は、常の宗祖のものとはやや異なるように思えるが、『日常目録』『日祐目録』の「種々災難起御勘文」「種々災難根源御勘文」の題号が、本書の冒頭部分「国土起大地震・非時大風・大飢饉・大疫病・大兵乱等種種災難知根源御勘文。」に よっていることは動かし難く、今は文字に若干の違和感を覚えつつも、一往真筆としておく。また日進の本書の要約と思われる写本があり、後欠ながら引文を略している他は全同であり、本書の存在を裏付けている。
 本書の内容は、先ず種々の災難の原因が、『法華経』が流布せず悪法が流布する故であることが諸経文によって示される。これは「立正安国論」の第二問答に相当する。次に正法が存在してもそれが流布しなければ災難が起こることが示される。  これは「立正安国論」の第三問答に相当する。次に災難の具体的原因は法然の『選択集』にありとして破折が加えられ、その退治が急務であることが示される。これは「立正安国論」の第四問答に相当する。次にその退治の方法が示される。これは「立正安国論」第七問答に相当する。なお、『選択集』の破折の途中から以降は「災難興起由来」とほぼ全同である。