人は何を以て動くのか?

● そこにイベントがあるから

 今私は今月22日に愛知県で開かれる Magic イベントへの遠征を予定しています。

 こんな話は改まって書く事でもないのですが、このイベント参加で私は何か金銭的あるいは物質的な利益を得る訳ではありません。また今回のイベント主催店やスタッフの方々にそれ以前からお世話になっていた訳でもないです。しかも私は間違いなく遠征により交通費や参加費を負担する事になる。「それでも遠征をするのはなぜ?」と聞かれたら、私の答えは「行きたいから。」以外にありません。

 例えば私の知り合いは、あるTVゲームのイベントがあるという情報を聞くと喜々として出掛けていきます。別に参加する事で賞金が出る訳でもなく、高額な賞品がもらえるという話もありません。それでも彼は出掛けていきます。多分彼に「なんでそんな遠くまで行くの?」と聞いたら、多分彼もさっきの私と同じ答えを返すでしょう。

 私は今福井で Magic イベントを定期開催していますが、これにしても同じです。自分で開催するイベントは遠征に比べると参加費の収入等が期待できる分気楽な面があります。でも開催する事の大変さみたいな物は遠征とさほど変わりが無く、むしろ無事に成功させるというプレッシャーがあって大変かも知れません。じゃあなぜイベントを開くのか?。それは「やりたいから。」なのです。

● “モティベイション”の話

 昔書いた記憶もあるのですが、今回改めて“モティベイション(動機付け)”に関する話を書いてみます。モティベイションには主に次の3タイプがあるそうです。

  1. 報酬によって生み出される“プラスのモティベイション”
  2. 懲罰によって生み出される“マイナスのモティベイション”
  3. 報酬や懲罰には関係無く内面から沸き上がる“自発的モティベイション”

 我々が例えば仕事とか趣味に取り組む場合は、特に3.の“自発的モティベイション”が重要になります。よく「一生懸命やれば結果は後から着いてくる。」と言いますが、これもこの自発的モティベイションによって行動した結果と言えるかも知れません。

 報酬によって生み出されるモティベイションは、その報酬の有無や内容によってアップダウンが激しくなります。しかも当然ながら報酬が得られる見込みが無ければ人は動かなくなるのです。また懲罰によるモティベイションはその個人の能力を十分に発揮できない場合が多くなります。しかもいわゆる“ノルマ”を達成する事にその主眼が置かれ、自動的にやる事が雑になります。

 この2つと自発的モティベイションは明らかに異質な物です。「自分はその仕事なり行動をやりたくてしょうがなくなる。」そういう状態です。確かにそういう心理状態の中で“見返り”を求める部分は皆無ではないでしょう。でも「楽しかった。」「有意義な時間を過ごせた。」そういった結果を報酬として行動できれば、人はより積極的な行動に出られるのです。「行っても何も収穫は無いかも知れないけど、とにかくあのイベントに行きたいという衝動を抑えられない。」というモティベイションは世の中を動かすのです。

● 人はその時どう動くか?

 私はイベント・コーディネイターとして、自分が開催しているイベントには自発的モティベイションで参加してもらえるように常に頭を捻っています。(イベントの参加費を安く抑えるために高額な報酬を用意できない、そういう事情もあるのですが。)決して万事がうまく行っている訳ではないと思うのですが、おかげさまで常連さんも獲得してそれなりに賑やかにやっています。

 最近特に思うのですが、日本の Magic って自発的モティベイションによって人に始めてもらえる物になっているでしょうか?。私個人はこれに関しては「どちらかと言うとNOじゃないか?」という印象を持っています。本来 Magic を始めとするTCGにはカード購入/デッキ構築/デュエル/コレクション/イベントへの参加等、色々な面白さが用意されているはずです。しかし実際には日本の Magic ってその面白さを自ら減衰させてしまっているのです。カードは高いからあまり買えない。デュエルは Standard がメインでデッキを工夫する余地が乏しい。コレクションしたくなるようなカードが見当たらない。イベントも画一的で工夫が無い。そういう状況でなおかつ「 Magic やりてえ!」「カード買いてえ!」と心の底から思ってもらえるのか?。私には素直に首を縦に振る事ができません。

 ではそういう現状に対してどう取り組むのか?。これには大きく2種類の対応しかありません。要するに“諦める”か“諦めない”かの2択です。実際私が伺っている範囲でも、多くの人達が“諦めて” Magic から離れていきました。また Magic を止めるまでは行かなくても、以前に比べて規模を大幅に縮小して細々と続けている方も少なくありません。じゃあ私はどうしているかと言うと、そういう現状を少しでも変えたいという動機からこういう活動をしています。でもこの際なのではっきり言ってしまいますが、決して Magic を諦めない人が偉くて諦めた人が偉くない訳ではないです。むしろ“諦めると決断して実行に移す”という行動力を発揮したという点で、ある意味で諦めた人が諦めない人よりも賞賛されても良さそうな気すらします。

 また日本の Magic って欧米の Magic に比べても魅力が薄そうな気がします。(「それはなぜか?」とか「誰が悪いのか?」とか、そんなの今更語りたくもないですが。 (^^; )こんな状況下で日本の Magic に自発的モティベイションを求めるのはかなり厳しいと私は感じています。だから私は「日本独自のプロリーグを立ち上げてプロを育成しろ。」とか「公認ジャッジをもっと優遇しても良いんじゃないの?」という提案を書いているのです。はっきり言って現状の日本の Magic には手弁当で貢献したくなるような魅力は無いです。だからトーナメント・プレイヤーが育たない。だから公認ジャッジが大量に辞めちゃう。そういう事ではないかと私は思っているのですが。

● 人を動かせる Magic に

 これは折りある毎に書いているのですが、要するに私が考える Magic の理想像は“デュエリストやジャッジ等が手弁当でイベントにはせ参じたくなるような魅力を持った物”なのです。しかし実際にはどこかのアホな会社が日本の Magic をしっちゃかめっちゃかにかき回してくれていて、TCGとして Magic が持っている魅力の半分も発揮されていないのでは?、と思える散々な状況になっているのです。ですから私は自分のイベントに「手弁当でサポートに来てね!」なんてとても言えません。ただ実際にはそれでも手を貸してくれる仲間がいます。そういう自発的モティベイションが日本の Magic の中で大きく成長し、それこそ全国規模のイベントがボランティアスタッフだけで運営されてしまう。そういう日が来るように私は祈っていますし、個人としてできるだけの事をやっているつもりです。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。