APACで何が起きたのか?

 正直言ってこういう記事を書くのはかなり気が重いです。

 まず「一体何が起こったんだ?」という話ですが、これに関しては森慶太さんが書かれたレポートを読んで頂くのが一番良いと思います。

3選手が失格処分に 〜 2001 年 APAC 決勝ラウンドで起こった出来事に関して〜

 森さんのレポートにもある通り Magic を始めとするDCI公認大会(=DCIが認可したDCIのポイントやランキングを競う大会)では、賞品の分割により対戦相手を投了に導く行為は禁止されています。(ただしこれには1つだけ例外があって、シングルエリミネーションの最終戦で1位と2位が賞品を分け合い、なおかつジャッジのいる前で交渉が行われる場合のみ認められるようです。詳しくは汎用トーナメントルールの第25節、及びペナルティガイドラインの第161節を参照のこと。)これは例えばAPACやプロツアーといったプレミアムイベントだけではなく、世界中で開催されているすべての公認大会に適用されるルールです。つまり根本的な話として「今回この件に関わった3名のトーナメント・プレイヤーはフロアルールを熟知しないままプレミアムイベントに臨んでいた。」という可能性が高い事になります。

 この件に関しては色々と考える事ができると思います。例えば「もしこの大会が日本で開催されていたら、彼ら(=受賞資格も失う失格を受けた日本人プレイヤー2名)は同じ事をしただろうか?」という事です。ひょっとすると「ここは外国だから別にいいか。」という意識があったかも知れませんし、また逆に日本でもそういう経験があって「ああ、またか。」だったのかも知れません。ただ私が過去に聞いている限りでも、プレミアムイベントでマッチが売買されたってこれが初めてじゃないですよ(笑)。見学に行った人がかなり呆れて帰って来て愚痴っているのを何度か聞いているので。 (^^; それが事実かどうか私は知りませんが、少なくとも私個人は今回の事件の事を伺う前から「 Magic のプレミアムイベントなんて金まみれじゃん。」という印象を持っていました。

 森さんもレポートに書かれていますが、我々がこの事件を教訓に考えるべきなのは“自分はデュエリストとして今まで何をしてきたのか?”という事だと私は考えています。

 例えばの話、日本人デュエリストの中に「代理店の出版物に載っている Magic に関する話はオフィシャルな物だ。」という勘違いをしている人はどの位いるでしょうか?。実際には Magic ではORACLEこそが正式なカードテキストであり、トーナメントに参加するプレイヤーは当然その内容を熟知している必要があるのです。しかし実際には Magic の世界では何の拘束力も持たないGAMEぎゃざの内容、あるいはWebサイトで聞いたルーリングに関するQ&Aの内容を盾に「俺はここでこう聞いたからこれが正解だ!」という勘違い君が日本には少なくないようです。

つい最近も Apocalypse 日本語版のカードテキスト誤植に関して DECK EXPRESS に“ホビージャパンゲーム開発室”なる組織からのコメントが載りました。しかし Magic の世界ではこんな組織からのコメントは正式な物でも何でもありません。そういう感覚が何よりも代理店自身に無いのがかなり問題なのですが。

 また販売店等で開催される公認大会は、傾向としてルーリングの適用がかなり甘いようです。大会の会場にORACLEを常備して何か問題があったら参照する、そういう運営をしている大会ですら下手すると少数派だと思われます。しかしDCIは「君らが開催する大会でDCIのポイントやランキングを争いたいのであれば、最低限これだけの要件は満たしなさい。」とはっきり唱っているのです。そういう要件を満たす努力をせずに、ただ「競技だ」「公認だ」「ポイントだ」とバカ騒ぎする。そういう現状を私は今まで「こんなの競技じゃねえよ。」と言ってきただけなのです。

 私だって競技 Magic の仕組みを100%熟知している訳ではありませんし、ましてや Magic のカードやルールを知り尽くしている訳でもありません。そんな中でこういった記事を書いたりジャッジをしたりするのですから当然ミスをします。しかし少なくとも私はそういうミスを限りなく0にしようと努力はしているつもりです。そういう努力を「 Magic は競技だ!」と宣う方々のどの位の割合がされているのか?、という事です。実は日本では競技 Magic の推進を口にされる方ほど、競技 Magic の数を増やす事にばかり気を取られて質の向上に目が向いていないんじゃないですか?。だって「 Magic のマッチは金で売買しちゃいけない。」なんて私ですら知っていた話です。それをそれこそ日本でもトップクラスに入るトーナメント・プレイヤーが知らなかった。私にはそれが何よりも信じられないのですが。

 今後日本の Magic は羅針盤を失って彷徨う事になるかも知れません。しかしそんな状況だからこそ、1人1人のデュエリストが“自分にできる事”をやるべきだ。これを今回の記事に関する私なりの結論としておきます。多分今回の件は、この後何ヶ月あるいは何年にも渡って日本の Magic 界にダメージを与え続けるでしょう。それをいかにして克服しプラスに持っていくか。我々は当事者となったプレイヤーがどういう心境で今回の件をコメントし、それを森さんがどういう心境で記事にしたのか、それを真剣に受け止めて今後に活かすべきなのです。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。