Japanese Magic プロ化への道程

 先日日記で話題にした“日本の Magic をプロ化するための方法論”を書いてみます。

● 前提条件

 私がこういった話を書く時は「やる気のある人にしか期待しない&やる気のある人だけメリットを被る仕掛けにする。」という事を考えます。

 はっきり言ってしまうと、やる気の無い個人や組織にこういった事で何かを期待しても無駄です。実際色々な遊びがメーカーや販売サイドにサポート等を期待し、それらはことごとく裏切られてきています。ですから今現在やる気のある個人や組織だけを当てにして話を進める必要があります。

 私が見ていて日本の Magic 競技化にやる気を持っていそうなのは、まずWoC/DCI、一部の並行輸入業者とやはり一部の販売店、そして一部の競技者グループといったところです。実は現在並行輸入に携わっている方々は「日本でもっと Magic を広めたい!」という志を持って業務をされているケースがかなりあるのです。そういう意味で私はかなり戦力になって頂けるのではないかと思っています。

 そして当然ですが、そういう人達が志を持って汗をかいた結果、それ以外の志無き Magic 関係者が必要以上に潤うのは私の本意ではありません。別に汗をかいた人達に利益を独占させる気はないですが、でもやはり汗をかいたらそれに見合う見返りがないとやる気が起きません。ただ当然こういう話が軌道に乗ると尻馬に乗ろうと話を持ちかける組織は現れるでしょうから、その都度適当に人とかお金を出してもらって適当に参加してもらえばいいでしょう(ぉ。

● ステップ1:畑を耕す

 こういう話をいきなり全国規模で始めるのはあまりにも大風呂敷過ぎます。そこでまずは“地域毎にその地域の実情に合った Magic 推進”を進めていきます。

 自分の地元で Magic の土壌を固めるには幾つかの必要条件があります。

  1.  Magic でそれなりに利益を上げている販売店が現れる事(できれば複数が理想)。
  2.  Magic イベント推進&初心者育成を志す有志によるサポート組織がある事。
  3. その販売店と組織の存在を地元のデュエリスト達が知っている事。
  4. 以上の一連の動きを地元が好意的に受け入れている事。

 1.に関しては、やはり“並行輸入の英語版”が切り札になると思います。(という話を書かないといけないのが今の Japanese Magic の実態なのですが。)ただしそういった商品を扱うには店側にも多少の知識と思い切りが必要なので、主旨に賛同してくれそうな販売店を見つけてお願いしてみて下さい。

 2.に関しては、無ければ取りあえずは自分でサポート組織を立ち上げましょう。まあ正直言ってしまうと、最初はあまり大勢で始めない方がいいかな。そしてまずは組織のバックアップをしてくれるであろう販売店を盛り上げる事から始めます。週末に講習会を開いたり簡単なイベントを開いたりと、個人でできる事でも随分と店には貢献できるはずです。

 3.に関しては、この後触れるイベントの定例化やWebサイト等での告知で知名度アップを図ります。最初は思った程反響が得られなくて大変かも知れませんが、回を重ねる毎に手応えみたいな物を得られるようになると思います。

 4.に関して具体的に活動するのはかなり後の話になるでしょう。ただしこの事は Magic 販売店の経営安定& Magic そのもののメジャー化には必要不可欠な条件なので、決して疎かにする事はできないのです。(過去に多くの遊びがこれをサボって衰退していきました。)

● ステップ2:イベントの定例化

 次に小さな規模の物で構わないので定例イベントを開催します。開催頻度ですが、私の経験上“月に1度”位が適当かと思われます。この場合、いわゆる“競技フォーマット”は一旦無視してしまって構いません。まずはその地域で Magic が定着する事が主目的なので、どこかの個人や組織が相変わらず Standard だの Limited だの煽っても無視しちゃって良いです。大事なのは「どうすれば地元で Magic が盛んになるか?」なのです。それで今更 Standard に夢を見るような人は、正直言ってこの話には加わらない方が無難かも知れません(笑)。その中で例えば“○○モデル”といった形で複数の事例が出てくるでしょう。それを後発の地域は色々と吟味して、自分達の地域に合いそうなやり方を選んで実行すればいい訳です。

 イベントに人を集めるのに“豪華な賞品”は必要ありません。例えば中・上級者に余ったコモンカードや基本地形を提供してもらい、それを会場で初心者に再分配するといった事が考えられます。ですから逆に言うとこの時点で競技フォーマット(あるいは公認大会)を有り難がるような風潮を生み出す事にはメリットが無いのです。初心者がそれで十分に Magic を楽しめるのであれば、タダでもらったカードだけで遊んでもらえばいいのです。そしてそういう中から「あのカードが欲しい。」「自分でもっと色々なカードを使ってみたい。」という動機付けをして自発的にカードを買ってもらうのです。その方が結果的には個人のカード購入量は増えるはずです。

 当然この場合「デッキの情報が無い。」とか「地域を越えた交流に支障が出る。」等と言った問題が発生するでしょう。しかしそれでいいのです。むしろ全国一律に同じフォーマットを遊ばせるから特定カードの高騰等といった弊害を生む訳で、いっそ全国各地がバラバラな遊び方で Magic を遊んだ方が結果的にはベターな環境が生まれるはずです。例えば別の地域に行って交流試合をしたいのであれば、その時は“郷に入れば郷に従え”です。しかもかえってトレードなんかは(自分が余らせているカードに別の地域ではニーズがある&別の地域で余っているカードが自分の地域ではニーズが高いといった事で)スムーズに進んでかなり楽しめると思います。

 このステップでの最終目標は“その地域のデュエリストをどこかの販売店かイベント会場に集めてしまう”事です。1つの販売店に売り上げが集まれば余力が生まれ、より大きなイベントや組織運営が可能になります。日本の Magic は現在相当体力が弱っているはずなので、まずはその体力回復+強化を図るのです。ですからイベントの際は「このイベントは○○店さんの協賛を得ています。」と宣伝し、協賛店に顧客を誘導する配慮も必要です。またイベント単独での収支も考慮します。この辺りからイベントで黒字を出せる(最低でも赤字を出さないで済む)ようだと後々楽なのです。

● ステップ3:競技プレイヤーの募集と選抜

 定例イベントにある程度の人が集まったら、いよいよプロ化に向けての第一歩を踏み出します。具体的には将来的なプロ化を見越した定例イベント(リーグ戦)を開催します。その地域毎に独自のランキング等を設け、プレイヤーの戦績を管理します。そしてやる気があって成績がある程度優秀な参加者を仮に“プロ候補生”とします。

 ただしここで勘違いしてはいけないのは、単に“戦績がいい=プロ候補生になれる”ではないという事です。かつての格闘ゲームはこれをやって失敗しました。(“鉄人”と称したクズ野郎集団を世間にのさばらせる結果を招いてしまったのです。 (^^;;; )当然プロ候補生になる人間は初心者の面倒位は見られないと駄目ですし、例えばデュエル中に悪態を付くなんて以ての外です。ですから定例イベントの会場にはフリースペースや初心者講習の場を設け、プロ候補生にそこで経験を積ませます。そういう場で何もできない/何もしない、あるいは問題行動を起こしたプレイヤーは密かに候補者名簿から外してしまって構わないでしょう。まあ本人に「君にはプロとしての素養が欠けている。」と言ってあげる事は、結果的には本人のためだったりするのですが。

 プロ候補生にはそれなりの特典を準備します。例えば選手権等への参戦費用の一部を補助する、あるいはデッキ用のカードが必要になった時に貸し出す制度を設ける等、方法は幾らでもあります。(その費用はイベントでの収入や協賛店からの協賛金で賄います。私がイベント自体の収支を重視しているのはそういう理由もあるのです。)要は候補生が「自分は地元の人達からこんなに期待されていて、それに見合う待遇も受けている。これは頑張らなければ!」と思えるような雰囲気を生み出せればいいのです。前から言っているように“器は人を作る”のです。

 こうしてその地元代表が例えば選手権やプロツアー等で優秀な成績を収めれば、その話題性に引き寄せられて更にリーグに人が集まってきます。また後援ショップに名を連ねたいという販売店も増えるかも知れませんから、そういう物はどんどん受け入れて規模を大きくしていけばいいのです。またある時期を見計らって地元の新聞社に取り上げてもらう事も有効かも知れません。ただ実際福井では新聞記事で Magic が取り上げられた瞬間に「小学校で Magic 禁止!」とかやられた事があるので (^^; くれぐれも慎重に。

● ステップ4:地元への定着

 ステップ3までの過程が日本国内の複数の地域で実施されると、そろそろ「あの地域のあいつは目立ってる。」「あそこはこんなフォーマットで盛り上がってるらしい。」という情報が流れ始めるはずです。でもまだそういう地域を統括して動かすには時期が早いです。もうちょっと地元の足場を固めてからでも遅くはありません。

 その地域である程度大きな規模のイベントが開催できる位体力が付いたら、いよいよ“ Magic のメジャー化”に向けた動きを起こします。具体的に言うと夏休み等を利用した規模の大きなイベントの開催です。要は地元の大人達に「うちの地域では子供達が Magic という遊びを一所懸命やっている。」そして「その遊びには地元にしっかりしたサポート組織があるから子供を任せても大丈夫そうだ。」という印象を与えるのです。このステップを疎かにすると、いざ全国区に撃って出た瞬間にPTAに足下をさらわれます(笑)。

 そしてWoC/DCIにイベントへの協賛をお願いしてみるのもこの時期です。外国のメーカーが協賛しているイベントなんて(特に地方には)そんなにある物じゃないですから、第三者が見た時に箔が付くのです。 (^^; 本当にちょっとしたプロモカード位をもらえればいいのです。要は“WoC/DCIに自分達の事を認知させた”という事実が大事なのです。そしてこの時期にイベント組織スタッフの“英語力”も同時に身に付けるのです(自分で書いてて耳が痛いですが《汗》)。

 こういったイベントをそれこそ定例化させる事ができれば、まあ間違いなくその地域での Magic 販売店の経営も軌道に乗っているはずです。周囲の大人達も Magic に対してはそれなりに理解を示してくれている。その地元のデュエリスト達が常に集まって情報交換ができる場があり、そして何よりも自分達の地域を代表するプロ候補が誕生している。さあ準備は整いました。いよいよ全国区に撃って出ましょう。

● ステップ5:おらが町を全国区へ(笑)

 前の方で私は「地元の代表を大きな大会に送り込んで結果を出させる。」事を推奨しました。それはそういう結果が出せるとその地元の Magic が一気に活性化するからです。では、もしもそういう大きなイベントを自分達の地元に誘致できて、なおかつそこで地元の人間が優勝したらどうなるでしょうか?。その影響力や話題性たるや計り知れない物があります。だから、それをやるのです。

 既にWoC/DCIには自分達の存在は知らせてあり、地元で大きな Magic イベントを定例化させて頑張っているという恩(!?)も売ってあります。そこで「GPあるいはそれに準ずるイベントを我々の地元に招致したい。」と持ちかけるのです。流石にこの時点ではWoC/DCIだってむげに断る事はできないでしょう。何よりも「この地域で実施すると動員の問題も解決できてうまくいくかも。」なんて思ってくれるかも知れません。

 しかしここで大きな問題が発生します。そうやって大きな Magic イベントを招致したい組織は、何もあなた方の住んでいる地域だけにある訳ではないのです。複数の地域で同じ様な組織が動いていれば、それこそ「是非うちに」「いやうちに」と始まっているのです。そういう組織同士が同じイベントを奪い合うのは得策ではありません。ここで始めて“全国にある組織を統轄する企画集団”が必要になる訳です。ただしここでそういった統括組織の作り方を論じる事には意味がありません。ひょっとするとどの地域がリーダーシップを取るかで揉めるかも知れませんし、逆に自分の仕事が増えるのが嫌でお互いに擦り付ける事になるかも知れません(笑)。まあそういうのは「“産みの苦しみ”なので頑張って下さい。」としか今は言えません。 (^^;;;

 この時点で日本全国のサポート組織が1つにまとまり、更にその組織をWoC/DCIが重要視してくれてるという状況が出来上がりました。はっきり言ってしまうとここまでが“前振り”です(笑)。さて、ではいよいよ“本題”に入りますか。

● ステップ6: Magic プロリーグ開幕!

 日本のデュエリスト組織がGP誘致等で実績を積めば、この時点で全国規模でのイベント開催に関するノウハウが蓄積されているはずです。サポート組織の方もそれなりの規模になってきました。さて、ではいよいよ本題であるプロリーグ開催に向けて動きましょう。

 ・・・とはいえ、これ以降の話は推測というか思惑で書けるレベルの話を越えています。この時点で統括組織がどの位の資金を動かせるかにもよりますし、また全国的な Magic の知名度がどの程度になっているかでも話が変わってきます。それこそ有名企業や全国区の大手新聞社の協賛が得られれば話は早いのですが。

 とにかくまずはWoC/DCIの協賛無しでも良いのでリーグを立ち上げる事です。大丈夫、いざ動き出せばあの会社はちゃんとサポートしてくれますって。DCIからジャッジを派遣してくれるかも知れませんし、ひょっとするとイラストレーターを呼んでくれるかも知れません。とにかく我々が高い目線を持って先に進もうとしなければ結果は着いて来ないのです。

 ただこういったプロリーグって、立ち上げる以上に維持する事が大変です。これにはリーグ開催に至るまでの“積み重ね”が大事なのです。例えばあるプロ候補生がイベント会場で初心者をシャークした。そんな小さな出来事1つでリーグが失敗に終わるかも知れません。この話はその位デリケートな問題ですし、またプロにはそれだけの素養が求められるのです。

● 広げる風呂敷は大きい方がいい

 要はそういう事です。私だってこういう話が“思い通りに進む訳なんかない”事は百も承知です。でも誰かがそこまで大きな夢を持って前に進もうとしないから、日本の競技 Magic には夢を持てない状態がずっと続いてきたんじゃないんですか?。 Magic にはここまで大きな夢を持っていいと私は思っています。我々はその位完成度の高いTCGを遊んでいるはずなのです。

 この手の話題に関して、今まで我々日本人デュエリストは「いつかあそこがやってくれるに違いない。」という実現性の無い夢を見てきました。でも日本語版が発売されて5年にもなるのに、日本の競技 Magic の実状ってほとんど変わっていない、いやむしろ悪くすらなっていると思われます。これではデュエリストが競技 Magic に夢を見て、それこそ寝食を忘れて取り組むなんて不可能です。だから私は「動く気のない組織に頼るのはもう止めよう。やる気のある人達だけで事を進めた方が絶対にうまく行くから。」と考えています。そして「まずはあなた自身が自分にできる事から始めて下さい。」とお願いしたいのです。

 皆さんご存知の通り、私は有名プレイヤーでもなければ公認ジャッジでもありません。福井という地方に住むただの1コレクターです。でもそういう人間にだってこの話の導入部分位は実現できました。私にできる話が皆さんにできない訳がないのです。いや、むしろ皆さんの方が私なんかよりもずっとうまくやれるんじゃないですか?。ただ今までは「どうせ無理だ。」「忙しい。」「続かない。」といった理由を付けて動こうとして来なかっただけなのです。

 例えば週末にデュエルルームで誰かと喋ったりデュエルをしたり、まずはそれでいいのです。ただそういう行動というか活動にどういう目線を持っているか、すべてはそこから始まるのです。単に「今が楽しければそれでいいや。」というやり方から「目の前の初心者をいつかはプロにしてみせるぜ!」という視線を持った行動に切り替える。日本の Magic プロ化はそこから始まると私は考えています。それこそ5年かかるか10年かかるか分かりません。いや、それだけ期間を費やしても実現できない可能性の方が高いでしょう。それでも「やってみよう!」という Magic 馬鹿が日本にどの位いるか、それが Japanese Magic の将来を決める事になると私は考えています。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。