第7版雑感

 私が基本セットの雑感を書くのは2度目なのですが、今回は随分と難産でした。

● 第7版の基本姿勢

 第7版を語る際、その前に発売されたCLASSIC(第6版)の事に触れない訳にはいきません。

 私が見ている限り、第6版は既存のデュエリストよりもこれから Magic を始めよう(あるいは始めるかも知れない)人達の事を考慮した基本セットだったような気がします。大幅なルール改定に関して私は第6版の発売当時から「 Magic のコンピュータゲーム化を見越しての物だ。」と書いてきたのですが、その予想は現実の物となろうとしています。また一見すると Magic のルールはその前の5版ルールに比べて簡素化されたと思われ(実際は違うんだけどね (^^; )、これもやはり初心者の事を考慮しての措置と思われるのです。実際それ以前から Magic を遊んできたデュエリストの中では6版ルールの施行はかなりの混乱を招いていて、実はその混乱は未だに完全に解消されたとは言えない状況が続いているのです。

 さて、それでは第7版はどういうコンセプトで制作されたのでしょうか?。どうも色々な方と意見交換をした範囲では“ Magic の PORTAL 化”というのが概ね一致した意見でした。要するに更にルールやカードを簡素化してニューカマーを幅広く受け入れていこう、そういう狙いがある気がします。また現在 PORTAL シリーズや STARTER といったカードセットにはWoCから何のサポートも無い状況です。以前に「 PORTAL 限定のリーグを立ち上げるべくWoCが検討しているらしい。」という消息筋からの情報もあったのですが、この企画は PORTAL シリーズの予想以上の販売不振等から立ち消えになったと思われます。要するに今回の措置は「せめて PORTAL シリーズのカードを少しでも Magic として使えるようにしよう。」というWoCのお詫びの意味もありそうな気が私はしています。ただそれにしても PORTAL3 (ポータル三國志)に限って言うと、基本地形を除くと5種類位しか救済されていないのですが。 (^^;

 要するに基本セットという物が既存のデュエリストに取ってはますます縁遠い物になり始めている、という事は言えるかと思います。WoCは「イラスト全部変えたよ!」とか「彼女(=セラの天使)が帰って来たよ!」等とキャンペーンを打って我々に第7版を買わせたがっているようですが、そういう販促とは裏腹に我々の基本セットに対する購買意欲はいよいよ減退の一途を辿りそうな気が私はしています。

● 第7版の収録カードを見て

 実は先日デッキメーカーの最新版が公開されて、ようやく第7版の詳細を検討する事ができました。やはりあのツールに取って代わるだけの便利な物って無いんですよね。

 という事で、第7版の再録カード(特に第6版との差分)に関する私個人の印象を以下にまとめてみました。

【白】
 まだ“壁”に夢を見させたいですか?(笑)
 本気で“死なない色”になった気がする。
 ハルマゲドンの基本セット落ちなんか気にならない位のパワーアップ振りでは?
【青】
 手札のブーストが更に充実した感じ。
 本気で“ビッグ・ブルー”を組ませたいらしい。 
(WoCは「ビッグ・ブルーこそ青の正しい姿だ。」と思っているのでは?)
【黒】
 主力が“手札破壊”になりそうだけど、それって黒使いはどう思っているのだろうか?。要は「エンチャントもアーティファクトも除去できないから、場に出される前に捨てさせろ。」という事なのかも知れないが、以前の黒って「そういうパーマネントで負ける前に相手を叩きのめせ!」な色だった気がするのだが。
 クリーチャー戦を主力に考えると単色では辛そう。他の色に依存して生き残る淋しい色になっちゃったかも。
【赤】
 ジョークルホープスの代わりが燎原の火というのは、ちょっと違うんじゃないのか?。しかも白には聖なる場があるし。 (^^;;;
 嵐のシャーマン( Storm Shaman(AC/7E) ) が復活していてビックリ。AC全盛の時代にお姉ちゃんイラストのカードばかり集めていた物で。 (^^; まあそれは良いのだが、この日本語訳どうにかならんか?(爆)
 クリーチャー戦をするにしろ土地破壊をするにしろ、焼き呪文で焼くにしろ中途半端な感じ。赤という色の独自性があまり見られなくなってしまっている。
【緑】
 クリーチャーとクリーチャー戦支援が充実しまくり。
 7EのカードってUDまでって言ってなかったっけ?。なんかINのカードが再録されていてしかもレア。おまけに結構使えるカードときたもんだ。
 緑だけ“対抗色の土地の渡り”があるのってずるくないですか?
【アーティファクト】
 “ラッキーチャーム”ってまだ必要なの?(笑)
 なんか無難にまとまりすぎ。従来のアーティファクトって黒や赤が単色で生き残るための強い味方だったのに、今は見る影もない感じ。
【総括】
 実用性の高いカードが入り、使用頻度の低いカードが消えた。
(CLASSICから7Eで落ちたカードには「ああ、やっぱりね。」という思えるが多い。)
 長く基本セットに収録され続けてきたカードが結構落ちている(神聖変異/セゴビアの大怪魚/黒死病/野火/茂みのバシリスク etc. )。ただまあ個人的には納得できない事もないのだが。
 抜けたカードの代わりのカードが必ずあるという感じで、基本セットの移行が比較的やりやすいように配慮されている形跡はある。

 以上のまとめとして、私個人は現時点では「基本セットとしての構成はちゃんとできているが、色毎のバランスがどうにも悪すぎ。」という結論を出しました。ただ最近WoCが一括して提唱している“ Magic の低速化”という点では、今回の再録カードはその流れを受けた物になっているという印象は受けます。

● イラストについて

 さて、実はここからが私が書く雑観記事の本題になります(笑)。

 第7版のカードイラストに関しては、一足早くエンサイクロペディアですべて確認させて頂きました。率直に言わせてもらえるならば・・・

「あんた達本当に Magic を日本で売る気があるの? > WoCスタッフ一同」

 ・・・というところです。明らかにカードイラストが日本人の好みからは大きく離れていると私個人は考えます。少し前にその事で「WoCは日本市場なんか見ちゃいない。」と書いたところ「それは言い過ぎでは?」というご意見を頂いているのですが、私に言わせるとそう断言しても構わない位 Magic のカードイラストは日本人向けではなくなってきています。

 前の記事でも触れましたが、こういう状況は日本の Magic におけるTCGの“T”の要素を大きく失わせる結果を生み、それはやがて個人ベースでのカードのデッド・ストック化を招くのです。 Magic 販売店がフレッシュパックやシングルカード等のデッド・ストックを大量に抱えると、店の活動が停滞して最終的に閉店に追い込まれます。これと同じ事が日本の Magic では個人ベースで起きる危険性が高いのです。確かに日本人の“他人任せ主義(カードの価値を自分で決められない体質)”にも問題はあります。しかし逆に言うと日本人は自分が気に入った物に対する執着は非常に強く、コレクター心をくすぐる事で爆発的な購買力を発揮させる事もできるのです。

 私に言わせると日本で本当に Magic を売りたいならば、メーカーがやるべきサポートは大きなイベントを幾つも開く事ではなく、たった1枚でも良いから日本人が目の色を変えて欲しがるカードを作る(基本セットやエキスパンションに毎回盛り込む)事なのです。今はそういうカードって外国の大きな大会で猛威を振るった“強いカード”な訳ですが、日本人が自発的に「これ欲しい!」という“萌えるカード(笑)”をWoCが継続的に発売しない限り、日本の Magic が本当の意味で活性化する事はあり得ないと私は考えています。

● 私個人の第7版への対応

 一言「買いません」です(ぉ。

 私自身は第7版がカードイラストを総とっかえするという事で、旧来のカードの中に本気で「新しいイラストで最低4枚揃えなきゃ。」という物が現れてくれる事を期待していました。しかし残念な事に、私には今回そういうイラストのカードは1枚として見当たりませんでした。まあセラの天使が戦力にならない状況というのは流石にお話になりませんね。あと私と同じ様な感想を第7版に抱いている人は相当数いるようです。「あの新しいセラの天使を集め始めました。」というコレクターが現れたという情報って私は聞かないです。旧セラ天がこれだけの人気カードなのにそれっておかしいでしょう?。

 日本語版4Eあるいはそれ以前から Magic を遊んできた人の中には、昔のあの雰囲気のイラストが好きで Magic を楽しんできた方々がかなりいます。そういう人達に「新しいイラストもなかなかやるな。」と思わせる事ができていない、それが今の Magic の現状なのです。ここではっきりと「昔のイラストの方がいい。今のは駄目だ!」と断言する気はないですが、実際そういうカードのクオリティに関しては市場が一定の評価を下しているでしょう。

 今後 Magic は更にコンピュータゲーム等でより幅広い人達を対象に拡販を展開しようとしています。そういう状況で旧来のデュエリストを納得させる事ができないカードイラストで、新たな Magic ファンをどれだけ獲得できるのか、私には甚だ疑問だったりします。オデッセイサイクルからは新たなアート・ディレクターが Magic のイラストを担当すると伺っているのですが、その辺を十分検討して頂きたい物です。このままだと Magic は日本人に見放されますよ。

● 第7版を初心者に勧めるか否か?

 「基本セットを初心者に勧めるか否か?」という問題は、第5版以降の基本セットでは常に話題になってきています。現状を考えてみるとやはり Magic の主流は Standard です。そのフォーマットの中でも基本セットのカードは一般的にアンダーパワーであり、特にレアカードをトレードして別のエキスパンションのカードを・・・と考えた時に戦力になりにくいのです。(逆に言うと先程書いたデッド・ストックになりやすいという事にもなります。)そういうカードセットを果たして初心者に勧めて良いものか?、という疑問が私にはあります。

 この問題を問うと「自分は買わないけど初心者には勧めている。」という回答が良く聞かれます。自分は既に(再録されたカードを)多く持っていて買う必要はない。でも初心者はカード資産が乏しいだろうから買っておくべきだ、そういう事のようです。ただどうでしょう。初心者が Magic につぎ込んでいる予算なんて限られています。それなのに1度に複数のカードセットを相当量買えというのは、かなり厳しいリクエストなのではないでしょうか?。ましてや自分が魅力を感じなくて買わない商品を人に薦めるのはやはりおかしいのです。これは例えば日本語版にしても全く同じ事が言えます。自分が何らかの理由があって買わない物を、人に買えと勧めるのは無責任なのです。そういう観点から第7版を考えると、私個人は多分初心者には勧めないだろうなと思います。インベイジョンサイクルや次のオデッセイサイクルを買い続けていれば、やがてはその辺のカードが基本セットの主力になる事は容易に想像が付きますし。

 では、我々はどうすれば初心者に安心して第7版を勧められるのでしょうか?。その答えそのものは案外簡単で、要は“第7版だけで楽しく遊べる Magic を初心者に提供する”という事です。極端な話ですが“最新基本セット限定フォーマット”なんて物が日本で盛んに遊ばれていれば、我々は既に持っているカードの中から第7版に再録された物をピックアップして使い、初心者にも「同じフォーマットで遊ぼうよ。」と第7版を勧めればいいのです。しかし残念ながら日本では「 Standard は最も初心者向けの分かりやすいフォーマットだ。」等という誤解が一般に広く認知されています。こういう状況で私個人は初心者に第7版を勧める気にはとてもなれないのですが。

 あともう1つ、この問題にはかなり強引な解決方法があります。それは「カードイラスト等を工夫してコレクターを増殖させ、その人達に買わせてしまう。」という方法です。こうなるとカードの購買力が高い中・上級者がカードを買うため販売量が増えます。しかも彼らは余ったカードを初心者へのサポートに使ってくれるので、結果的に初心者にも基本セットのカードが行き渡るのです。私は何も自分の都合だけで第7版のカードイラストを批判している訳ではありません。むしろ基本セットだからこそカードイラストには力を入れるべきなのです。私はWoCがそういう事を分かっていて、それでカードイラストを総とっかえしたのだと思っていました。だからこそ第7版には大いに期待したし、実際に発売されたイラストを見た時の落胆が大きかった訳ですが。

 基本セットが売れるか売れないか、そして基本セットを初心者に自信を持って勧められるか否か。この事が実は Magic という物がより多くの人達に遊ばれるかどうか、果てはメジャー化してプロ競技として成熟できるか否かの鍵を握っている、そう断言しても差し支えないと私は考えています。そういう意味で言うと、残念ながら日本では基本セットを初心者に勧められない状況が随分と長く続いています。そういう現状をどう改めて Magic の間口を広げるか?。この事が基本セットの成否、しいては Magic そのものの行く末を決めるのです。

● 追記

 この記事は4月に一旦公開したのですが、こちらの不手際で削除されていました。申し訳ございませんでした。 m(__)m


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。