正しい Ashnod's Coupon の使われ方

●  Ashnod's Coupon とは?(基礎編)

  Ashnod's Coupon(UG) は  Unglued  に収録されているカードの中で、最も有名なカードの1つではないかと思います。その能力ですが・・・

Ashnod's Coupon
0
Artifact
{Tap},Sacrifice ~this~: Target player gets you target drink.
Errata: You pay any costs for the drink.

(2001.2.14時点の最新のCRSより抜粋。)

 ・・・となっています。カードテキスト中にエラッタがあるというのは、 Unglued というカードセットのユニークさを表していると思います。これの日本語訳ですが・・・

(T), Ashnod's Coupon を生け贄に捧げる:対象のプレイヤーはあなたに対象のドリンク1本を与える。
エラッタ:あなたはドリンクのためのコストを支払う。

(あいせん個人による私訳)

 ・・・となります。

●  Ashnod's Coupon とは?(応用編)

 では更に Ashnod's Coupon に関する見識を深めるために、CRSを紐解いてみましょう。

1.お酒は二十歳になってから

  Ashnod's Coupon で誰かにドリンクを買わせるからといって、法律を破って良いという訳ではありません。例えば Ashnod's Coupon を使ったプレイヤーが二十歳未満の場合はドリンクとして酒を対象に取る事はできません。また Ashnod's Coupon でドリンクを買いに行かされるプレイヤーが二十歳未満の場合も同様です。

 ちなみに余談ですが“ドリンク”と“ジュース”の違いってご存知でしょうか?。日本語では両者はほぼ同意語として使われますが、英語での正確な意味で言うとジュースは“100%果汁や果肉でできた飲み物”になります。

2.“コスト”について

  Ashnod's Coupon でいう“ any costs for the drink ”というのは、そのドリンクを手に入れるためのすべてのコストが含まれます。例えば“ハワイの免税店に売っていたあの洋酒”と対象を取った場合は、その洋酒の代金はもちろん、その免税店に行くための渡航費やパスポート申請等の諸手続の費用、またその間の対戦相手の休業補償等が含まれるはずです。(CRSには渡航費のみ記載があるのですが、厳密に言うコストはここまで考慮されるべきでしょう。)

 また支払ったコストについては、万が一そのドリンクが売り切れていた等の理由でフィズった場合でも戻って来ません。呪文や能力が対象不適切でフィズった場合にも支払ったマナ等のコストが戻って来ないのと理屈は同じです。マナは戻って来なくても文句は出ないのに、追加コスト(現金)が戻って来ないと言って文句を言うのは変でしょう?。

3.効果の解決について

  Ashnod's Coupon が起動された場合、その能力はドリンクが手元に届くまで解決されません。対象に取ったドリンクが無くて効果がフィズった場合を除いて、当然 Ashnod's Coupon を起動したプレイヤーもその効果が解決するのを待つ必要があります。(数時間戻って来ないからと言って別のデュエルを・・・なんて以ての外です。)

● 実際に Ashnod's Coupon を使ってみよう!

  Ashnod's Coupon は Unglued のカードなので、当然ヴィンテージですら使用できません。ですから一般イベントとして Unglued 使用可のイベントを開催しましょう。ただし、そういうイベントが開催されて「ならばこの機会にクーポンを・・・」というのは、間違いなくあなた1人ではないはずです。

● 実践! Ashnod's Coupon

  Ashnod's Coupon はドリンクを買いに行くプレイヤーとドリンクそのものを対象に取っています。ですから本来“対象に取れないドリンクは買いに行かせる事ができない”はずなのです。厳密に言えば「ここから目に見えるあの場所に売ってるあれ。」と指定できる物でなければ対象には取れないはずですから、「どこかに売っているはずのあれ。」は対象としては不適切なのです。ましてや「どこかに売っているはずのこの銘柄のドリンクを買って来い。見つかるまで帰って来るな!」は以ての外です。

 ただし Unglued のカード全体に言える事ですが、実際にプレーされた場合の処置はその場のジャッジの裁量に任されています。ですからジャッジがYESと言えばそういった目に見えないドリンクも対象に取る事はできます。ただし、それでプレイヤー同士が揉めて困るのは、そういう無責任な裁定を出したジャッジ本人なのですが。まあそんな参加者とジャッジが結託してイジメをするようなイベントは、ドリンク代もらってとっととバックれるのが正解かも知れません。

● 打倒! Ashnod's Coupon 

 実は今回の記事はこの章がメイン・イベントになります。

 これは一部のデュエリストには知られている事ですが、ドリンクを買うための費用は“コスト”と定義されています。つまり効果がフィズろうが何をしようが、 Ashnod's Coupon を起動したプレイヤーはコストを支払う義務を負います。たとえ買ってくるドリンクを宣言し、その代金や購入のための渡航費等を払った後で、その効果が Interdict(TE) で打ち消されてもです。

 あと例えばの話、対戦相手に「コンビニであのドリンクを買って来い。」と言われたとします。それであなたはそのコンビニに行き、全く別のドリンクを買って自分で飲んでしまいます。それで帰ってきて「言われたドリンクは売り切れてました。」と言っても、実際にそれを確認する方法はありません。まさか本当に売り切れだったかどうかを確認するために、コンビニにジャッジを走らせる訳にもいかないでしょう。万が一確認されて「売ってたじゃねえか。」と言われたら「多分僕が行った後で補充したんだろう。」で話は終わりです。

 そして対 Ashnod's Coupon の究極の策、それは「コストの支払いをさせて次の瞬間に投了する。」という方法です。プレイヤーは呪文や能力の処理中に投了してはいけないというルールはどこにもありません。というか、汎用フロアルールでは「いつでも投了できる。」と明記されています。これでドリンクの代金は丸々対戦相手の懐に入ります。

 要するに「あまりプレイヤーに遠出の買い物を強いる事にはろくな事がない。」という事です。対戦相手に“イジメ”的な心証を与える Ashnod's Coupon の使い方は厳に慎まれるべきです。ですから Unglued を使用可としたイベントを開催する場合は、運営側があらかじめドリンクを用意して「対象に取れるのはこのドリンクのみ。」とするのが親切だと思われます。1本数十円で仕入れたドリンクを百円で売れば、運営側にも幾ばくかの収益がありますし。

 ちょっと上記の話だけだとあまりにも殺伐としているので、福井で実際にあった“ Ashnod's Coupon 対策”をご紹介しておきます。

  1.  1度目に買いに行かされたプレイヤーがあらかじめ先読みで余分にドリンクを買っておき、2度目に使われた時に「はい、これ。」と差し出した。

  2.  使った側が特にドリンクを指定しなかった事を幸いに、ドリンクを買いに行ったプレイヤーが思い切りドリンクを大量に購入してきて「さあ、コストを払いなさい。」と迫った。

●  Unglued の使われ方に見る“日本の Magic ”

 これは Ashnod's Coupon に限った事ではなく、WoC/DCIは Unglued に関して「この拡張セットは面白おかしく作られたものです。そのことに留意して下さい。」と明言しています。つまりその収録カードはユーモアとして面白おかしく使われるべき物です。これは私個人の解釈ですが、それはイコール「 Unglued は使う方も使われた方も、そしてそれを見物している人達をも笑顔にするような使われ方をするべきだ。」という事なのです。

 これに対して、特に Unglued 発売直後に日本国内で見られた Unglued に対するコメントは、その多くが“対戦者への合法的なイジメ”を臭わせる物でした。以前にも書いたのですがエンチャント(プレイヤー)を確実なダメージ源として使う、あるいはクーポンで対戦相手が途方に暮れるようなリクエストをしてゲームを遅延させる、そういう発想しか無いのです。でも例えば Volrath's Motion Sensor(UG) で確実にダメージを与えたいなら Teferi's Puzzle Box(VI/6E) 等を組み合わせるといった工夫ができるのです。そこまで創意工夫して・・・という人って日本にいたんでしょうか?。

 私個人は「だから日本の Magic は駄目なんだ。」と思っています。日本人には欧米人には無い思想や発想があるはずです。そういう物で欧米人が考えもしなかった Magic カードの使い方を編み出す、それが日本人デュエリストが欧米のデュエリストを越える唯一の道だと私は考えています。でも実際には日本人の Magic って欧米人の手の中から一歩も抜け出せていないのです。それを最も顕著に表している一つの事例が Unglued に対する日本人の取り組み方だ、それが私個人の意見です。取りあえず「DCI公認大会で使えないカードなんて・・・」で見向きもしない。買ったら買ったで「どれが強いか/弱いか」しか考えない。使ったら使ったで対戦相手をいじめる手段にしかしない。そりゃ日本の Magic が鳴かず飛ばずになるのも納得できますよ。

 でも多分そういう傾向は世界的な物で、だからWoCは Unglued の続編を作らなかった、というか作れなかったのだろう。私個人はそう考えています。いくら Magic のカードがユニークで面白い物になっても、それを遊ぶ側の発想が貧弱(誰かが敷いたレールの上を走るだけ)では何にもならないのです。特に日本人の Magic に対する発想はあまりにも貧弱すぎませんか?。ただ私に言わせると、やはり Standard や Limited だけしか遊んでいないデュエリストにそういった奇抜なアイディアや柔軟な発想が生まれる訳もないのですが。

● 次回予告

 今のところ Goblin Bomb(WE) / Ring of Ma'Ruf(AN) / Shahrazad(AN) の中から選んで書く予定・・・と書くところなのですが、ちょっと飛び込みで1つ書きたいカードが出てきたのでそれを書きます。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。