なぜ日本人に Magic は受けないのか?

 ちょっと日本での Magic 販売に関して思うところを書いてみます。

● 苦戦する日本の Magic 

 1月11日の日記で触れたのですが、日本における Magic の市場規模は遊戯王やポケモンTCGに比べてかなり小さいようです。11日の日記に掲載したTCGの市場規模の表を再度掲載しておきます。

☆★☆ 日本で発売されている主なTCGの市場規模 ★☆★
遊☆戯☆王OGC2000年3月期で売り上げ200億円(約6.7億枚)、更に2001年3月期は300億円(約10億枚)の見込み。
ポケモンTCG日本国内に累計18.5億枚、全世界で累計40億枚を出荷。
MAGIC:the Gathering全世界で累計60億枚を出荷。日本でも1996年の発売以来2億枚が出回る。(額にして約67億円!?)
注1:括弧内は日本国内での販売価格等から推計した物。
注2:データは2000年10月現在の物と思われる。
 私が前から取得しているHJとポストホビーの売り上げ額から言うと、私にはこのデータを100%鵜呑みにできない部分もあります。ただ、このデータの日本国内での Magic 販売量を日本語版のみと考えて英語版をこれと同量と仮定しても累計は4億枚にしかならず、これでも遊戯王の昨年度1年間の売り上げに遠く及びません。今回参考にした記事でも「 Magic は遊戯王の原作漫画にも影響を与えたものの、ルールが複雑なこともあり日本では一般的な認知度が低い。」という内容が書かれていて「あいたたたた・・・」という感じです(涙)。流石にマーケティング関連の記事はこの辺情け容赦ないね。 (^^; まあ今回は別にこれに関してHJやポストホビーを突っつくのが目的ではないので (^^;;; これ以上深く突っ込むのは止めますか。

 要は「なぜこうなっているのか?」という事なのです。 Magic は他のTCGに先駆けて発売されていますし、ゲームシステム的に劣っている訳ではないでしょう。しかし実際には「日本人にTCGを知らしめるという Magic の役目は終わった。これから日本人は遊戯王でTCGを知り、遊ぶ事になるだろう。」と断言する販売店すらあるようです。それはなぜなのか?、その大きな要因の1つに“日本人向けの販売戦略ができているか否か”という問題があるというのが私個人の見解です。

 これは以前の記事でも書いているのですが、日本で生み出されるブームの多くが“マスコットキャラ”を軸として知名度アップを目論んだキャンペーンによって生み出されています。少なくとも遊戯王は原作そのものがそうなっていますし、ポケモンTCGもピカチュウといったカードに登場するキャラクタそのものがマスコットなのです。しかし Magic にはそれがありません。要するに“ Magic は日本人に対してインパクトが薄い”のです。遊戯王を遊んでいない人でも遊戯王という漫画や一部の登場キャラクタは知っている。ポケモンTCGは遊んでいなくてもピカチュウは知っている。じゃあ Magic を遊んでいない人が Magic と言われて何を連想するか?・・・何もないのです。

● なぜ、そうなっちゃったのか?

 日本語版4Eが発売されて以来、日本の Magic は明確な象徴的キャラクタを設けないまま販促を展開してきました。(というか、4Eとかミラージュサイクルの頃って販促自体やっていたという記憶がないのですが。 (^^; )これに対して我々デュエリストの一部は、自分が好きなカードを自分だけの象徴キャラとして Magic を遊んできました。それは確かにその人自身の Magic への傾倒を深めては来たのですが、しかし一般的な Magic の知名度アップやファン層の拡大にはほとんど貢献してこなかったのです。

 これに対してHJは、自社出版物で幾つかのキャラクタを設定してそれを象徴キャラとして販促を進めようとした雰囲気があります。しかしHJはそういったキャラを自社出版物でのみ使用し、一般への知名度アップをほとんど考えなかったのです。要するにその時HJが見ていたのは“自社出版物の拡販”でしかなかった訳です。これではそういったキャラにいくら魅力があっても Magic そのものの知名度アップには全く貢献してくれません。

 私はそういう状況を見ていて、それで例のオリジナルのイラストを使った販促物の配布を思い付いたのです。実際この発想は日本人に合ったようで、今では様々な個人や組織がライフカウンター等のサプライ品を製作されるようになりました。またそういった流れから代理店も販促を見直し、GAMEぎゃざの表紙を飾ったイラストをサプライ品に起こして流通させるようになりました。まあその事で私は別に「これは俺の手柄だ!」だなんて言う気は微塵もないですが。

 ただ、そういった動きもデュエリストに対するサポートにはなっているものの、 Magic そのものの知名度アップには必ずしも貢献してくれていない気がします。ぎゃざガールの知名度がいくら上がっても、それが直接 Magic の知名度アップに結びついていないからです。そういう意味では遊戯王やポケモンTCGに比べて Magic は“日本で売りにくいTCG”であるとも言えるかも知れません。少なくとも欧米で成功している Magic の販促が日本では決してうまく行っていない、という事は間違いないかと思われます。

● では、どうすればいいのか?

 最近流れてきている7Eの収録カード情報を見ていると、私個人には「WoCもその辺は分かって対策を講じようとしているのではないか?」と思える節があります。その大きな目玉が“セラ天とシヴァドラの復刻”です。まだ噂レベルの話ではありますが Serra Angel(AL-4E) や Shivan Dragon(AL-5E) は日本でも人気の高いカードです。これが再録されるというのは(当然欧米の市場も見ているとは思うのですが)やはり日本市場をある程度配慮しての措置だという気が私はしています。ただオデッセイサイクルのアートディレクターが元 Legend of the Five Rings の担当に変わるという事で、日本市場から見たプラスマイナスとしてはそれでトントンという気がしているのですが。 (^^; 日本でアメコミ調の物はマニアは買うけどヒットはしないんだって(苦笑)。

 私個人としては、日本市場での Magic 拡販を狙うのであれば“日本の市場に受けるカードイラスト”も盛り込んで欲しいと思っています。やはり NeNe Thomas 氏といった日本人受けするイラストレーターの復帰、あるいは日本人イラストレーターの起用といった思い切った施策を講じて欲しい気もします。アルファ版から収録されているカードイラストを今の今まで引っ張らないと販促ができない、それはやはり最近作られるカードイラストに何らかの問題がある訳です。それは別に私が言わなくてもWoC自身分かっている事でしょう?。そうでなきゃ今頃になってセラ天のFoilで販促なんかしないだろうから。

 さて、じゃあ日本国内でこの“ Magic の低い知名度”を挽回する方法はないのでしょうか?。私はこういう理由もあって、以前の記事で「日本人の世界チャンピオンを出そうよ。」と書いた経緯もあるのですが、やはりそれ以上にマスコットキャラを軸にした知名度アップが必要だと考えています。ただ日本で設定したマスコットキャラは Magic そのものとリンクさせにくい訳です。またHJの販促もそういう方向性を意識していない(=広告を見た側に対するインパクトが薄い)ようですし。でも、何度見ても印象に残らない広告なんてやるだけ無駄なんだけどね。 (^^;

 ただ、これに対する1つのアプローチを我々はかなり以前から試みていて、しかも一定の成果を収めています。要は“ Magic のカードイラストを日本向けにデフォルメする”という事です。こうすればそのイラストで Magic に注目した人の目を Magic そのものに向けさせる事ができます。このアプローチが一定の成果を収めるのであれば、今度は更に Magic のカードイラストを日本向けに差し替えた物をWoCに発行してもらい、販促物としてHJから配るという方法も考えられるでしょう。これは何も単なる思い付きで書いている訳ではありません。実際にこれは昔小学館のコミックで試みられ、1度は大きな話題を集めて大成功を収めているのですから。

● 日本人を騙すためには(笑)

 HJは自社出版物で何人かのイラストレーターさんに Magic をモチーフにしたイラスト製作を依頼して来ています。実際 DUELIST JAPAN の表紙って日本での評判はかなり高い訳で、こういった物を利用しない手はないのです。確かに最近HJも様々なサプライ品を発売していますが、私に言わせるとまだまだ手ぬるいです(笑)。特にHJのサプライ品が Magic の知名度アップ&プレー人口増加に貢献している気配がないのがちょっと・・・という感じかな。

 確かに Magic はTCGの中でもゲームシステムが良くできていて長く遊ぶのには適していると思います。でも、前から書いているように「だからと言って日本人が遊んでくれる訳ではない。」という事です。競技プレイヤーの皆様から言わせると、カードイラストに萌えて Magic を始める私のような人間は不要なのかも知れません。でもね、そうやって Magic 人口を増やす工夫を続けていかないと、やがてはその競技すら成立しなくなるような淋しい状態に Magic が追い込まれる可能性があるのです。競技というのはいわば“プレイヤーを篩にかけて落とす作業”であり、それこそプロ野球並に“目指し甲斐のある高い目標”になっていない限り、それがプレー人口の増加に直接貢献する訳もないのです。

 前から書いているように、日本人は“メーカーが騙してくれるのを待っている民族”です。自分が Magic という遊びに月n万円をつぎ込む、そういう事に何の疑問も持たないような状況に追い込まれたいのです(笑)。確かに Magic はゲームシステム的にはそういう面白さを持っていると思います。でも、だからと言ってそれで日本人は Magic には手を出さないのです。そしてブルーアイズやピカチュウといった馴染みのキャラがいるTCGに流れていく、そういう物です。その流れを断ち切って日本人を Magic に振り向かせるには、やはりそういったキャラに対抗できるだけのマスコット的存在&それを前面に押し出した販促が必要なのです。

 WoCがちょっとでもカードイラストで日本人を騙そうと思うのであれば、例えばうちの萌えリスト辺りを参考にされて「どうやったら日本人を騙せるか?」を是非吟味して欲しいです(笑)。そしてそれはHJにしても同じです。米国でデザインされて日本に輸入される、実はその事が日本の Magic 普及に取ってはある意味でハンディキャップになっています。それをいかに克服して日本への浸透を図るか?、そのためのヒントをうちが少しでも提供できれば、というのが今の私の決意でもあります。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。