“ボトムアップ”の時代へ

 最近日本での M:tG の広め方に関して、ちょっと思うところがあります。

● トップダウンとボトムアップ

 この2つの言葉は、会社勤めをされている方なら嫌と言うほど聞かされている物ではないでしょうか?。 (^^; ただ学生さん等にはちょっと馴染みの薄い言葉だと思うので、本題に入る前にちょっと説明しておきます。

 この2つは例えば会社の方針決定、あるいはプロジェクトの進め方といった物を表す用語です。“トップダウン”というのは、その名の通り方針や決定事項が上(上司)から振ってくるというやり方で、“ボトムアップ”はその逆に、提案や意見が下(部下)から上がってくるというやり方を言います。

 トップダウンの場合、方針を決めるのは(その組織の実権を握った)ごく一部の人となるため、方針が決定しやすいというメリットがあります。またその下に付いた人達は基本的に“言われた事を言われた通りにやる”事しか求められないので、それなりに楽だったりします。ただ問題なのはトップの人間が方針決定を誤った場合、基本的には誰にも訂正ができないのです。いわゆる“ワンマン”と言われる組織はすべてこれなのですが、うまくいっているケースもあればそうでないケースもあります。まあ大抵の場合、年を追う毎に組織の内部は陳腐化する事が多いようです。

 これに対してボトムアップの場合、方針の決定はプロジェクトにいるメンバー全員の意見を集約して進められます。ですから当然意見の相違から揉めたり、場合によってはプロジェクト自体の崩壊をも招きかねない訳です。ただプロジェクトの中に「自分の意見を通して俺がこのプロジェクトを動かすんだ!」という意欲に燃えた人間が大勢いて、そういう人達を束ねられる強力なリーダーシップを持った人がいるプロジェクトは、トップダウンでは得られない爆発的な成果を得る事もあります。ですから最近では、多くの企業が自分の会社をボトムアップで運営しようと色々と画策しているようです。

● さて、本題

 今回なぜ私が唐突にこういう話を書いたかと言うと、日本の M:tG に漂う沈滞ムードの原因とその対策を探っていくと、どうしてもこの話を取り上げざるを得ないと感じたからなのです。

 はっきり言ってしまうと、今まで日本の M:tG 普及は“HJという会社がリーダーとなったトップダウン”によって進められてきたのです。遊ぶ際のフォーマットにしてもそうですし、その普及にしてもそうです。そして私に言わせるとそれは決してうまくはいかなかった、いや「失敗だった。」と断言しても構わないとすら私には思えます。

 このリーダーのいい加減さに関しては、今まで幾度にも渡って記事に書いてきました。最近になって改善というかやる気を感じさせる動きも幾つか見えてはいますが、でもやっぱり体質が昔のまんまだと感じさせる事例もあったりします。(これに関しては最後に追記として取り上げます。)しかもこのリーダーは部下の意見や言い分に関してはとにかく聞く耳を持たないようです。これって「自分達がリーダーであり続ける事に拘っている。」あるいは「 M:tG により得られる利益を自分だけで独占したい。」という意図からそうしている、というのが私個人の見方です。そしてそういう身勝手なリーダーを持ってしまった、その時点でこの“日本に M:tG を広めようプロジェクト”は失敗する運命を背負っていたのです。

 それじゃあ、我々日本のデュエリストはこのリーダーと運命を共にして討ち死にするべきなのでしょうか?。多分これに関しては、この記事を読まれたほとんどすべての方々が「冗談じゃないよ!」という感想を持たれると思います。言い方を変えると、我々プロジェクトのメンバーは“リーダーを見殺しにしてでも生き残る”あるいは“リーダーを無視してでもこのプロジェクトを成功させる”という発想が必要なのではないか?、私はそう考えるようになっています。つまり「 M:tG にもボトムアップの発想が必要になった。」そういう事なのです。

● 難しく考える必要はないのです

 さて、では我々はこのボトムアップによる M:tG 普及に関して、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか?。・・・等と書くと随分と難しい話になりそうですが、実際にはそんなに難しい&大それた事をする必要はないのです。

 まず何よりも“ M:tG と付き合い続ける”という、この事がこのプロジェクトに対する最大の貢献になるのです。月に1パックでも2パックでもいいからカードを買い続け、そして雑談目的でもいいから近所のデュエルルームや M:tG 関連のWebサイトに顔を出す。これが M:tG に賑やかさを与えて活性化する第一歩になるのです。

 そして次に“自分なりのやり方で M:tG を楽しむ”事です。お金に余裕があるならレア満載のトーナメント指向なデッキを作ったっていいだろうし、予算に限りがあるならその範囲で楽しめるデッキを作ればいいのです。コレクションを始めたり M:tG 関連のイラストを描いてWebサイトで公開する、そういう活動も M:tG を賑やかにする事には大きな貢献となるでしょう。そしてそれで飽き足らなくなったら自分でイベントを開いてみたり、それこそ全国レベルの公認大会で腕試しをしたっていい訳です。

 要は「与えられる物を待っていても誰も何もしてくれない。」という事です。HJという会社は今まで我々デュエリストに、とにかく“フレッシュパックを買わせる”事以外の目的を持った提案をしてくれた事がありません。そんなリーダーからの提案を鵜呑みにして M:tG と付き合う事、それも1つの選択肢なのかも知れません。でも、実際には多くのデュエリスト達がその事に疑問を持っています。だとすれば“自分ができるところから違うやり方をやってみる”事も必要なのです。そしてそういう意見が多くの日本人デュエリストからぶち上げられた時、多分プロジェクト全体の体質が変わるのです。

● 自分は何をしているか?

 最近私は“ Standard 以外のフォーマットの普及とイベントの定着”を目標に、色々なイベントや企画の提案をしています。ただ正直言ってしまうと、私1人が手を下せる範囲って自分の地元(福井市)が精一杯なのです。本当言うとこの動きをせめて福井県全体位には広めたいところなのですが、実際には色々と難しいのです。

 福井市にはイベント開催に理解のある販売店、気軽に借りられる公共施設、そして何かと力になってくれるデュエリスト仲間といった環境が揃っています。このうち公共施設に関して言うと、最近私は申請書類に“イベント名:焼肉定食”と書いて出すのですが、職員の方は眉1本動かさずに受理し、そのタイトルを表玄関に告知してくれます(笑)。でも福井市を一歩出ると、大部分の販売店は M:tG は定価で店頭に並べてるだけ、施設に関しても無いか利用規約が厳しい(公民館は基本的に地元の人間しか借りられない)、そして人脈に関してはほとんど零、そんな状況です。HJのリストに掲載されている福井県内の M:tG 販売店で、現在機能している( M:tG を今も売っている)のは半分位かな。しかもDCI公式認定ショップとなると、福井市以外では確か坂井郡と武生市に各1店ずつという状況です。そして実際には、そういう環境が揃っていない街にもデュエリストはいて、そこで頑張って M:tG に取り組んでいます。そういうデュエリスト達にHJが何をしてくれましたか?。単に自社出版物で「それはそれとして補充デッキを作りなさい。」と書くだけじゃないですか!。

 そういう現実をもう何年も見てきて、でも私のような1個人には何もできないのです。実は1度そういう地域に友人を連れて遠征&講習会に行った事があるのですが、イベントを盛り上げるための気配りのつもりで持っていったフレッシュパックを見た保護者の方に「こいつら商売しに来やがった。」と誤解され、追い返されたという失敗をしています。つまりそういった“誰かに与えられる M:tG ”は、結局うまくはいかないのです。要は“その地域の実情を知った有志が立ち上がるしかない”そういう事なのです。例えば福井市の事例を見て「いいなぁ、この地域は Type-I が盛んな上にシングルカードも安く買えるみたいで。」と思っても、そういう環境を誰かが作らなければ自分の周囲がそういう環境になる事はあり得ないのです。

 ただ、今我々が恵まれているのは、そういう“成功事例”を自分の地元で作ろうとした時に、1から10まですべて自分で考え実行する必要はないという事です。例えば私も絶版カードを遊ぶためのフォーマットに関しては他の地域での事例を参考にさせて頂いていますし、また絶版カードの入手ルートについても今なら Brassman 氏やダメ老師氏の力を借りれば簡単に開拓できます。既に存在するリソースを上手に活用/流用する事で、そういう成功事例って昔に比べると随分簡単に作れるはずです。昔務めていた会社の上司が私に教えた事、それは“既にある物を最初から作る奴は馬鹿だ”でした(笑)。これだけ色々なWebサイトがあって情報が転がっているんですから、それを活用しない手はないのです。

● 追記

 最初の方で触れた“最近のHJのサポートに関する雑感”を改めて書いておきます。

 基本的に私は最近HJが取っている販促に関しては、あまり良い印象を持っていないケースが少なくありません。なんか前々から私が予告していた通りP3Kリーグや Japan Classic は有耶無耶にされてしまいましたし (^^; マクドでのキャンペーンや高校生選手権といったイベントも“関東地方での M:tG 普及”にしかなっていません。あと最近i−modeぎゃざといった企画も始まったようですが、J−Phoneが100円/月で地域情報を検索し放題のサービスを始めたのに対して300円/月という利用料を高いと思ってしまうのは私だけなのでしょうか?。なんかHJって執拗に金儲けに固執しすぎていて、でもその強欲が災いして結局大した事ができていない、そういう印象を私は持っています。

 ただ少し前に私は総括記事で「HJには日本の M:tG 普及に真剣に取り組んでいる人など1人もいないのでは?」と書いたのですが、これに関しては一部訂正しないといけないようです。最近HJのWebサイトを見ると分かるのですが、少なくともあそこはそういう意欲的な取り組みが見られるようになりました。発売前に Invasion のカードリストがあったり、ぎゃざガールの壁紙配布があったりと、ユーザーへのサービスやサポートに熱心に取り組んでいるという雰囲気が随所に見られます。また高校生選手権の結果やGP京都の告知が今までにないスピードで掲示されていたりして「なんかあの部署だけは頑張っているなぁ。」という印象を私は受けました。まあそれがユーザーからの突き上げでそうなったのか、ブロッコリー辺りのサポート振りを見て焦ったのか (^^; それともHJ内部の有志による取り組みの成果なのか、私には分かるはずもないですが。

 でも私は思うのですが、そういった改善がデュエリスト自身の手による物でなく、アクエリ辺りの成功事例に触発された物による成果だとしたら、我々デュエリストって随分と情けない存在だという気がしませんか?。だって我々が今まで何年もかかってできなかった事を、他社のTCGあるいはそれを遊ぶマインドブレイカー達の手で実現されちゃった訳ですから。あと何よりも問題なのは、そういう形での改善って結局はアクエリから見ると後手後手に回っている訳で、それじゃあアクエリ辺りに人口を奪われる事への歯止めにはならない訳です。以前の記事に書いた“ロビー活動”といった大それた事はできなくても、我々デュエリストも自分にできる範囲の事をコツコツやっていくべき時代が来た、私はそう考えています。例えばGAMEぎゃざを購読されている方でしたら、毎月のアンケート葉書にご自分の意見をびっしり書き込んで毎月送る、そういう積み重ねが大事だと私は思います。まああんまり過激な動きに出るとクレーマーとして認知されちゃってそれはそれでまずいのですが (^^; でも“自分の M:tG への取り組みを後で後悔しない”ためにも、今できる事はできるだけやっておいた方がいいと私は考えています。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。