ここが変だよ!?“日本の M:tG ”
第2部:矛盾だらけの販売戦略

 次に“日本での M:tG の売られ方”についての私見を述べます。

●  M:tG 人口の低年齢化が抱える問題

 “ M:tG 人口の低年齢化”に関しては、私個人は M:tG イベントを運営しているスタッフとして感じていたのですが、最近ではHJが自らそれを認めるコメントを出しています。

 普通こういった趣味の人口は、少しずつ高齢化しながら定着するのが一般的です。これに関しては“ガンダム世代”と呼ばれる人達の事例をあげるのが分かりやすいでしょうか。実は私もその1人なのですが、ガンダム世代というのは一般には“初代ガンダム(1年戦争物)”を見てガンダムのファンになった人達の事です。ただガンダムのファンというのは別に1年戦争時代のガンダムファンだけではなく、ZやZZあるいはそれ以降の作品を見てファンになった人達も大勢います。今回はそういった方々を総称してガンダム世代としますが、ガンダム世代は“昔からのファンがガンダムを離れずに新しいファンが増えている”という状況なので、全体としては少しずつ平均年齢が上がっている訳です。人間は間違いなく1年に1つずつ年をとりますので(笑)。

 それに対して M:tG 人口が“低年齢化”している、これはイコール“昔からの M:tG ファンがどんどん M:tG を離れている”という事です。元々 M:tG は社会人や大学生を中心に広まったと思うのですが、それが今では高校生や中学生にその中心が移っているという印象です。これに関してHJは「いやぁ、新しい人達が M:tG に参入してくれてうれしい限りだね。」的なリアクションしかしていないのですが、果たして本当にそうでしょうか?。

 ガンダムが日本に登場してもう20年以上になるそうです。しかしガンダムという物の市場は縮小するどころか、最近更に大きくなっている印象すらあります。我々のような1年戦争世代がガンダムを離れず、そこに新作のガンダムアニメを見た世代が入ってきている訳ですから、普通に考えるとガンダム人口(市場)はどんどん大きくなっているのです。また昔からのガンダム世代は今はそれなりに金持ちになっているので、例えば1箱数千円のプラモデルとか数万円のLD−BOX(今だとDVDか)が売れるようになっています。予算の乏しい若年齢層にもガンダム市場はちゃんとその予算で買える物を用意していますので、現在ガンダムというアニメで動くお金はかなり膨大な金額になっているはずです。

 これに対して M:tG では、昔からのデュエリストが M:tG を離れている代わりに、それに匹敵するか下手をするとそれを上回る数の中高生が M:tG に参入してきています。でも、彼ら1人当たりが M:tG に費やす(費やせる)予算は間違いなく大学生や社会人よりも少ないので、全体として見ると M:tG 市場が縮小している危惧があるのです。(実際私が情報を頂いている販売店の関係者は、この事を揃って口にされます。)また社会人はBOX買いなどで出た余剰カードを初心者に譲ったりするサポートができるのですが、1人当たりのカード購入量が少ない中学生辺りにはそういった芸当は多分無理です。するとこれから M:tG を始めようという人達はコモンカードや基本地形まですべて自分で揃える必要に迫られ、それが M:tG という物の敷居を高くしてしまうのです。

 そしてもっと本質的な話を書くと、少なくとも社会人や大学生の少なからぬ人口が M:tG を離れている、そこには必ず何らかの“理由”があるはずです。その理由を突き止めて何か対策を打たない限り、同じ理由で高校生や中学生が M:tG をやめる事は十分に考えられます。また流石に M:tG は小学生が続けるには負担の大きな遊びですから、これ以上の低年齢化には多分歯止めがかかるでしょう。上はどんどん止めていき、下に伸びる可能性は薄い、するとどうなるか・・・多分書くまでもないでしょう?。実際日本では、数多くの遊びのブーム(あるいはブームになりかけた物)がこうして衰退していった歴史があるのです。

 最近のHJのコメントって、私に言わせるとかつての“大本営発表”とレベルが同じなのです。 (^^; 事実はひた隠しにして「我々は勝ってる、みんな頑張れ!」なのです。でも最近の M:tG の盛り上がりといった物に不安や疑問を持っている方は少なくないようですし、少なくとも毎月の売り上げを把握している販売店はそんな文句には騙されないでしょう。ちなみに福井での印象を書くならば、中高生デュエリストが増えたのはウルザサイクルが発売された頃の話で、最近は横這いか微増 or 微減位じゃないかな。一時期焼肉定食開催の度に大量に押し寄せたニューカマーも、最近は確実にその数が減っていますし・・・。

● HJは誰に M:tG を売りたいのか?

 私はこの事をずっと考えているのですが、未だに答えが出ていません。

 流石にこれだけインターネットが普及すると、社会人や大学生のかなりの割合が“安い並行輸入カードの存在”を知っているでしょう。実際私の周囲では大部分のデュエリストがこれを利用しています。我々には日本語版を使う理由も無ければ、高いカードをHJの為に買う必要性も感じていません。我々福井のデュエリストは、福井での M:tG 普及でHJに何かしてもらったなんて恩は微塵も感じていませんし、むしろDCI公認大会の推進といった“余計なお世話”で邪魔をされたという印象しか抱いていないもので。 (^^;;; まあ実際には福井でのイベント開催に積極的な販売店さんへの感謝を込めて、結果的にHJ経由のカードを多少は買っているという状況です。(ちなみに私自身は所有カードの9割以上をHJ経由の販売店で買っているのですが。)

 それじゃあ日本の M:tG (特に日本語版)は高校生や中学生向けの商品なのでしょうか?。あんな高いパックがですか?(笑)。例えば高校生の1ヶ月のお小遣いが¥5000だとしても、これを全量 M:tG につぎ込んでも4ヶ月分貯めないと1BOX買えませんよ。しかもHJの雑誌(の記事)は「みんな補充デッキを組もう!」の大連呼ですから (^^;;; そんなの普通にパックを買っていたら何年先の話になるか(爆)。ちなみに言ってしまいますが、福井で競技 M:tG を頑張っている中学生や高校生のかなりの割合が、かなり以前から並行輸入カードに手を出しています。「そうでなきゃ無理だ。」それが彼らの口から出てくる偽らざる感想なのです。

 HJの勧めるDCI公認大会を中心にした販促は、結果的には日本人デュエリストの並行輸入カードへの依存度を高めているのです(爆)。しかもその裏で、公認大会では使えない Portal や Starter は日本では売れずに大苦戦をしました。HJが鳴り物入りで発売したP3Kですらあのていたらく振りでしたし。 (^^;;; でもHJって相変わらずDCI公認大会以外の“ M:tG を遊ぶ動機付け”を打ち出せずにいる訳です。まあ今まで散々DCI公認大会を推奨してきてすっかりそれにのめり込んでいるデュエリストも少なくないので、今更他の提案をする事自体無理なのかも知れませんが。

●  M:tG の価格設定

 米国では M:tG は少し前に1パック$3.25になっています。ただ実勢価格としては$2.50から$2.00近いようで、例えば我々が持っている並行輸入ルートですと1パックは¥250程度で購入できます。この位の値段ですと例えば3パック使ったシールド戦やドラフト戦が¥750程度で遊べますから、毎週イベントを定例化してもあまり負担にはならないでしょう。

 これに対してHJ経由で販売される日本のカードは定価が¥500(税別)で、実勢価格で言うと¥400を切っている店はまず無いと思われます。(もしあったとすれば、間違いなく英語版の並行輸入カードで採算を合わせています。)日本のカードは定価だけでなく仕入れ原価も高いため、販売店の自助努力による値引きが難しいのです。(掛け率は概ね65%〜75%というところで、品薄&人気商品になると更に高くなる。)最近HJは米国辺りでの流れを受けて「 Limited を遊ぼう!」とか言っていますが、米国みたいに¥750で遊べるならともかく、流石に¥1200〜¥1500も払って Limited を遊ぶのは無理があり過ぎます(笑)。

 私も過去の記事でHJの価格政策に対して色々悪口を書いてきましたが、これって見方を変えると“HJの販促には自主性が無い”のです。米国でのDCI公認大会や Limited の推進は、ああいう価格設定で M:tG を売っているからできるのです。それを米国の1.8〜2倍の値段でカードが売られている日本で同じ事をやろうったって無理があるのですよ。これではDCI公認大会の参加者のレベルが欧米並になる事なんか到底期待できないし、ましてや Limited 推進なんて夢のまた夢なのです。しかもHJってしぶちんで、販促に関しては必要に迫られない限り金をかけない会社だからなぁ(爆)。DCIJの体制を強化してFNMを始めるだけでも、随分と事態は好転する気がするのですが・・・。

 あと日本のカードが高い理由として“日本の流通事情(問屋と小売店の関係)”を上げる方が少なくないのですが、それを口にされる方は「日本の M:tG はホビージャパンとポストホビーで利益の二重取りがされている。」という事実をご存知の上で発言されているのでしょうか?。WoCから日本に出荷される M:tG のカードはまず全量がポストホビーに入り、そこからポストホビー直営店での販売分を除いた全量がホビージャパンに入るという仕組みになっています。つまり2つの会社がそれぞれ利益を上乗せして次に送り出している訳です。(ちなみにホビージャパンとポストホビーの経営者はほとんど同じメンバーです。)まあこの部分に関しては「そういう仕組みになっています。」という事で、あくまで“情報”としてお伝えしておきます。 m(__)m ちなみに言うと、こういった記事を書く以上は私もホビージャパンやポストホビーの会社概要や売り上げの推移位は調べた上で書いています。

● 第2部・総括

 日本の M:tG は明らかに、日本語版4E発売の頃に M:tG を始めた世代のデュエリストの維持/確保に失敗しています。私は自分の周囲で M:tG を止めた方々からはその理由を伺っているのですが、皆さん口を揃えて「 M:tG がこんなに続けるのが辛い遊びだったとは・・・。」とおっしゃいます。「社会人がそういう台詞を吐いて止めていく遊びを、よく中高生が続けられるよなぁ。」それが最近私が感じる偽らざる感想です。

 従来の日本での M:tG 販売戦略は、明らかにターゲットを社会人や大学生に絞った物です。価格設定もそうですが、例えばDCI公認大会の推進にしてもデュエリストの(平均年齢が高いという事で)スキルやモラルにある程度期待できるという前提で成立しています。ただ最近の事例を見ていると、こういった販促は明らかに日本の M:tG の実状には合わなくなっています。日本のカード価格は中高生が買い続けるにはかなり厳しいですし、DCI公認大会を開いても自分でデッキが作れないデュエリスト&マナーやモラルを欠いて他のデュエリストを不愉快にさせる参加者を助長している感じです。どうも最近特に「デュエルに強い奴が正義!(=デュエルが強ければ何をやったっていい)」的な風潮が日本にある気がするのですが、実際DCI公認大会への参加をきっかけに M:tG を止めたという事例は、福井でも決して少なくはないのです。

 個人的な意見として書くと、私自身は M:tG は今のような中高生への普及を目指す路線で良いような気がします。今更大学生や社会人の間で火が着くとも思えないですし (^^; そうする事で“おもちゃ屋”ルートでの拡販が見込める(=手厚いサポートが期待できる)からです。ただそうするからには、流石に今までと同じ売り方では駄目でしょう。価格設定にしても遊ぶ動機付けにしてもそうです。でもHJにそういった配慮、あるいは具体的な施策の用意があるとは、私にはちょっと思えません。

 実は日本の M:tG にはもう後がありません。社会人や大学生の間での普及に失敗した以上、今 M:tG を遊んでいる中高生の確保(あるいはその世代内での市場拡大)ができなければ、本気で M:tG は衰退の道を歩むしかなくなります。ただどうも私が見ている限り、HJがそういう危機感を感じて具体的に動いているとはちょっと思えないのですが。そうですねぇ、この際女性市場の開拓を目指して、CMキャラにキムタクでも起用してみますか?(笑)。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。