ネズミに勝てぬ魔道師達

 代理店から「WoCが Pok?mon 生産に追われて M:tG に手が回っていない。」という趣旨の通達が出ました。メーカーであるWoCのこの M:tG に対する待遇は、日本人デュエリストの多くが M:tG に対して抱いている感覚とは随分隔たった物だろうという印象を私個人は持っています。

● 空前の Pok?mon ブーム到来!

 日本にいる我々には米国の Pok?mon ブームがどの位の物なのか実感がないのではないかと思われます。日本でポケモンTCGはキャラクタ人気から相当数売れてはいるものの、その売れ行きはその他のポケモングッズと大差ない印象がありますし、特に国内でTCGとして遊ばれているという印象はあまり感じられません。ただ実際今米国での Pok?mon の売り上げは凄まじい勢いのようなのです。

 英語版 Pok?mon は発売されて1年で11億枚を販売しているそうです(小学館発表)。 M:tG のベータ版は発行枚数が730万枚と発表されていますので、これと比べると桁が2つ程違います。 (^^; アンリミテッドの発行枚数が4000万枚程度(リバイズドでさえ約6億枚)だそうなので、多分この数字は M:tG が1993年〜1994年までの(多分第一次全盛期と言ってもいい)期間に売られた枚数を上回っていると想像されます。しかもそれだけのカードが基本的には米国内だけで販売され消費されている訳です。(少し前から欧州への輸出も始まったようですが。)

 そして米国の Pok?mon フリークはそれに飽きたらず、今は本家日本のポケモンTCGを全力で吸引しているという状況です。これにより日本のメーカー(つまりポケモンTCGを作った元祖)は国内向けの出荷を制限せざるを得ない状況になっていますし、日本の販売店には米国向けへの出荷を見越してと思われる「定価で買い取るので全量売って下さい。」という申し出があるのだそうです。中には米国向けへの高額な取り引きを見越して国内にカードを卸さない問屋すらあるという噂もある位で・・・。

●  Pok?mon ブームの影で・・・

 過去の経緯から見て、WoCには最低でも年間15〜20億枚程度のTCGを生産する能力があると想像されます。(MIRAGE発売の頃に米国に工場を作ったりしてますし。)ただ Pok?mon の需要は明らかにそれを越えているようで (^^; そうなると自動的に“何か”を犠牲にしてその需要に応える必要が出てきます。今は M:tG だけでなく、WoCが発行しているその他すべてのTCGの生産が止まっているのは多分間違いないでしょう。 M:tG 位市場の大きなTCGでさえその有様ですから、ましてやその他の無名どころのTCGなんてどんな扱いを受けているか(笑)。

 元々WoCは M:tG で名を挙げ、米国ではTCGに関する特許を取得してライバルを1人残らず蹴落としました。しかしそんなWoCが今や自社オリジナルの M:tG よりも日本で生まれた Pok?mon を喜々として増刷して好景気に沸いている訳ですから、これは特にそれ以前からWoCのTCGを遊んできた人間に取ってはやり切れない印象もあるのではないでしょうか。ましてやそれで自分が遊んでいるTCGが作られないとなると尚更でしょう。我々のように基本的には絶版カードしか見ていない“枯れたデュエリスト”は被害も少ないのですが(爆)。

● やはりその程度の物なのか

 私個人は今回の件を見て「所詮は M:tG ってこの程度のゲームだったんだな。」というのを改めて感じます。メーカーが M:tG をいう物を世界的なメジャー・ゲームと考えて普及に取り組んでいるのであれば、他に販売が急増したTCGが現れてもそれで生産を減らすなんて事にはならないと思うのです。しかし今現在WoC内部での M:tG の待遇が Pok?mon に比べて悪いのは明らかな事実なのです。 M:tG が Pok?mon の亜流というか後発だと言うならともかく、TCGとしては M:tG が元祖なのにですよ。

 今までWoCはDCIと共に M:tG の普及や世界的な競技化について真剣に取り組んできた印象があります。そして我々遊ぶ側もそれを信じて着いてきたのです。ですがそのWoCは M:tG よりも稼げるTCGを見つけた途端にこの有様です。 (^^; どうやら我々が抱いていた M:tG に対するイメージって、WoC/DCIによって産み出された単なる“虚像”だったようです。

● 誰がこの状況を招いたのか?

 ではなぜ M:tG はそうなってしまった(そういう扱いしか受けられなかった)のでしょうか?。少なくとも日本向けに M:tG が出荷されない要因に関して、私個人は“我々日本人にもある”と考えています。

 日本の M:tG は今までに1度として“ブーム”として広まった歴史を持ちません。しかし日本の M:tG は売る側も買う側もかなり以前から“守りの姿勢”に入ってしまっていたのです。代理店は約4年ほど前の日本語版4E発売以来ずっと米国に比べて高額な価格設定をしており、特に1パック500円[税別]という価格設定は「これ以降新規プレイヤーの参入なんか必要ない(今遊んでいる奴らから儲けられればいい)。」という姿勢を鮮明に打ち出しています。また遊ぶ側(の一部の方々)も初心者虐めやシャークを繰り返してニューカマーの参入を阻害し続けています。こんな状況では市場が拡大する訳もなく、それ故WoCが“日本の M:tG に未来はない”と考えても全く不思議ではないのです。

 そして特に M:tG を遊ぶ側にはそういった状況に興味すらもない方が圧倒的多数のようです。しかもそういった方々の中にはDCI公認大会やフリーデュエルでの勝率をやたらと気にし、勝つためには手段を選ばない(そしてそれを正義だと言い張る)方も少なくありません。でもね、よく周囲の現状を見て下さいよ。今 M:tG で強い事ってそんなに自慢できる物なのですか?。 Pok?mon ごときに生産ラインや話題を根こそぎ奪われ、目新しい話題も乏しくあまつさえ人口の減少に歯止めがかかっていないTCGで1勝を上げる事がそんなに名誉な事なのでしょうか?。少なくとも私にはそうは思えないのですが。たかがネズミ1匹に勝てない魔道師が何を偉そうに言っているの?、まあ極論してしまえばそういう事になりますかね。 (^^;

 日本国内でのトーナメント・プレイヤー(あるいはそれもどき)の皆様の情報発信等を見ても、どうも私は日本のデュエリストって M:tG を過大評価し過ぎていると思います。でもその認識は現実とはあまりにかけ離れているというのが私の見解です。だって実際の M:tG ってピカチュウ1匹の存在がその地位を危うくしている弱小TCGなのですよ(笑)。少なくとも自分のデッキの強さや過去の戦績を自慢する前に、もっとやるべき事があるんじゃないですか?。

●  M:tG 復活に向けて

 WoCに“それでも M:tG を日本に出荷させる”には、何よりも日本国内での M:tG の地位向上と市場の拡大が必要不可欠だと思います。そしてそれを実現するには、何よりも“プレー人口の増加”と“国内市場でのカード流通量拡大による市場の活性化”が必要なのです。簡単に言うと「海外からカードを買い付けて暴れ回る百戦百勝のトーナメント・プレイヤーを1人産み出すよりも、額は少なくても日本国内でカードを買ってくれるプレイヤーを1人でも多く産み出す方が何倍も重要だ。」という事です。こんな事は M:tG の販売等に多少関わった人間なら誰でも気が付く事なのですが、あまつさえ今日本では、代理店ですら雑誌等で“海外からカードを買い付けて暴れ回る百戦百勝のトーナメント・プレイヤー”の育成に力を入れていらっしゃるようで(笑)。

 そしてこういった遊びをより多くの人達に普及させるには、既に遊んでいるプレイヤー1人1人にも「自分がこのゲームを普及させるんだ!」という意識が必要になると思います。そういう意識を持って遊んでいるプレイヤーとそうでないプレイヤー、その比率がそのゲームのその後というか将来を決定付けると言っても過言ではないでしょう。ちなみにそういう視点で日本の M:tG を見ると・・・という危惧が、元々私が Echizen Gather-ruを開設した動機だったりするのですが。

 今回の M:tG 減産の最大の要因が米国人の都合である事は明らかな事実です。ただそういう状況になる前に M:tG というTCGに確固たる地位と安定した市場を(少なくとも日本に)作るべきだった、それが私の意見です。そしてそういう意識を持ったデュエリストなり販売店が日本に極めて少ない(あまつさえ日本での M:tG 普及の旗頭になるべき代理店にそういう意識がない)事が、多分最近の一連の事態(悲劇と言ってもいいかも)を招いているのです。

● 夢を見るなら現実も見るべし!

 最近私は M:tG に纏わる日本国内での事象を見ていて「この人“夢”は見てるけど“現実”を見てないよなぁ。」という方が多いと感じています。日本の M:tG に夢を抱いてその実現を目指すのは素晴らしい事です。しかし夢の実現は現状認識無しには達成できないはずなのです。夢とは現実を変える事で始めて実現します。ですから夢は持っているけど現実を見ていないというのは、その夢が実現不可能な安っぽい物である事を自ら認めているか、あるいは自分の夢を既に現実の物だと思い込んで満足してしまっているかのどちらかなのです。

 あとこういう話を書くと、例えば日本でDCI公認大会を推進されている方や M:tG で自分が強い事をステータスシンボルにされている方が私個人に反感や怒りを感じられると思うのですが、でも皆さんくれぐれも“噛み付く相手”を間違えないで下さいね。 (^^; あなた方が本当に噛み付くべき相手は“日本の M:tG の地位が(日本語版発売から4年になろうというのに)一向に向上しない要因を産み出している元凶(個人あるいは組織)”なんじゃないですか?。本当に日本の M:tG が日本国内で遊びとしての確固たる地位を持っている、あるいは M:tG のトーナメント・プレイヤーが将棋や囲碁のプロ並みに賞賛される地位にいるのであれば、私だってこんな記事を書こうとは思いもしないでしょう。じゃあ現実はどうなのか?、なんて書くまでもないでしょう。

 余談ですが、実はWoCからカードを買って自国内の業者に卸しているディストリビューター(日本ではHJがこれに当たる)は、売るTCGが M:tG から Pok?mon に変わったところで(売り上げが確保できるなら)何も困ったりしないのです。ある一国の業者を除いてね(笑)。流石にHJが日本国内で Pok?mon を扱えるような余地は金輪際残っちゃいないのですよ。 (^^; 実際日本国内のポケモンTCGの大会では英語版は使用禁止のはずですし、特に小学館が絡んでいる物は版権が厳しいからねぇ。ですからこのまま M:tG が生産されない(あるいはこれを機にオンラインTCGに移行する)という状況になった場合、代理店はどうされるのでしょうか?。 (^^;

 この辺で日本で M:tG に関わる人達全員が奮起して行動を起こさないと、本当に M:tG は対戦格闘ゲーム辺りの二の舞を踏みますよ。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。