“自分の M:tG ”を取り戻すために

 最近福井のデュエリストの中で、特に「 Standard が面白くない!」という声が多く上がっています。実際そのために Standard (あるいは M:tG そのもの)を止めてしまう傾向も見られます。これに関して福井で何人かのデュエリスト達と話をした結果、ほぼ意見が集約できましたので今回はそれを書いてみます。

● 本当に Standard は面白くないのか?

 私は最近の Standard のデッキ事情はあまり詳しくないのですが、福井で中堅以上と思われる複数のデュエリストの方々からリサーチした限りでは「最近の Standard のデッキ(構築)は面白くない。」という意見で一致しています。この傾向はインターネット環境等で流行のデッキ傾向を調べられている方ほど多く見られます。特に日本国内で紹介されるデッキ情報に関しては「雑誌で取り上げられる物もインターネットに流れる物もどれも同じ。流石にあれだけ同じ物を何度も見せられると飽きる。」という感想が多く上がりました。

 以前の記事に書きましたが、私は去年の全米選手権のTOP8のデッキレシピを喜々として拝見させて頂いた記憶があります。「うわぁ、やっぱりこの人達はクレイジーだわ。」そんな雰囲気がプンプン匂っていました(笑)。「誰もやらない悪い事をしてやろう。」「俺のデッキを見やがれ!」そんな自己主張に溢れていました。でも日本で発信されるデッキ情報にはそれが全く無いのです。流石に私自身もその状況にあきれ果て、それ故最近はデッキ情報そのものを見なくなってしまった訳です。

 でもだからと言って、そういった在り来たりなデッキではない物を作ろうと思っても、最近は特に“どうしてもそういう在り来たりなデッキを越えられない”というジレンマに直面します。そのためデッキ構築そのものへの意欲を失っている方が少なくないようなのです。ですから逆にそういった悩みを持たず、インターネットや代理店の雑誌が紹介するデッキを組んで適当に初心者いじめをして悦に入っている人達に取っては、多分今の Standard って楽しくてしょうがないんじゃないかと思います。ただ少なくとも福井の中堅層のデュエリスト達の多くが、そういう風潮を快くは思っていないのです。

● “ボトムアップ”から“トップダウン”へ

  M:tG (特に Standard )が面白くなくなった原因に関しては、よく“情報の弊害”が言われます。「色々考えて思い付いたデッキを作ったら、既に1ヶ月も前にどこかの大会で暴れてた。」こんな経験を何度かしてしまうと、誰でも自分でデッキを考えて作ろうという意欲を失うものです。ただ私はそれ以上に、今の M:tG が以前の“ボトムアップ”な物から“トップダウン”な物へ変わりつつある事に原因があると考えています。

 私が日本語版4Eを買って始めた M:tG は、いわば野原の真ん中に置き去りにされて「はい、どこかにゴールがあるからたどり着いてね。」と言われたような物でした。 (^^; まずどっちに進むか(どの色を使うか)から試行錯誤の連続で、実際私と同じ時期に始めた複数の知り合いの中で、私と同じ方向に進む人間は1人もいませんでした。いやむしろ“他人と同じ方向に進むのを嫌がった”位です。黒い人はどんどん黒くなり、そして黒いじめに悩まされると更に黒くなり(笑)、ついには「私、脱いでも黒いんです。」と豪語する位に黒くなったのです(嫌爆)。また当時の M:tG はそういった様々な方向に進んだデュエリストのほとんどすべてに“希望の光”がありました。ゴールに向かっているかどうかは別にして、躓いたり悩んだりした時に助けてくれるカードやコンボが間違いなく存在したのです。

 ところが最近(特にウルザサイクル発売後)の M:tG は、新しいエキスパンションが発売されて物の半月か1ヶ月位で、世界でも有数の“ M:tG バカ(ぉ”がほぼ最強と思われるコンボやデッキを編み出して、それで暴れてしまうのです。そういったデッキやプレイヤーに我々素人レベルの知恵で考えたデッキやコンボが太刀打ちできる可能性はまず0と言っていいでしょう。しかも最近の M:tG は必要以上にクリーチャー戦への偏重が顕著で、いわば“脇道”を失った状況なのです。一般のデュエリストはトップデュエリストが敷いた舗装された道路の上を走らされているだけで、脇道を発見する事すら困難です。しかもせっかく見つけた脇道はその幹線道路に行く手を塞がれていたり、どう頑張っても幹線道路を走るより遅かったりするのです。これでは「こんなに快適に走れる幹線道路があるのに脇道を探している奴はバカだ。」と言われても仕方ないかも知れません。

 こういった“競技”をレベルの高い物にするためには、トップダウン技法によるデッキの追求は必要不可欠な物です。しかし最近は(例えば企業の多くが)トップダウンによる方針決定に限界を感じていて、ボトムアップによるアイディアの集約に躍起になっています。特に M:tG のような遊びの場合、こういった極端なトップダウン(によって作られたデッキの台頭)は、間違いなく多くのデュエリスト達に「 M:tG は面白くない。」という印象を与えるでしょう。こうなると最終的には M:tG という世界に残るのは“デッキを作れるごく一部のエリート”と“それを使わされて満足している底辺のデュエリスト”のみになるのです。

● 日本では“攻略本”は売れるのです

 ただどうも最近の人達は、あらかじめ誰かが敷いた快適な舗装道路の上を走るだけで「俺は M:tG を極めた!」という満足感に簡単に浸れるようです。実際私が書いているような疑問を問題提起するHPって今は数少ないですから。何度か書いていますが、これってちょうど“攻略本を頼りにRPGをクリアして悦に入っている子供”のようなものです。そのプレイヤー自身はそのゲームを“遊ばされている”のに、さも自分自身の手ですべて成し遂げたような満足感に浸っているのです。あまつさえそれを他人に自慢する人までいるのですから、その自慢を聞かされる方はたまった物ではありません(笑)。

 またこれも以前の記事に書きましたが、最近のデュエリストの多くが“デュエリストとして必要な成長過程を踏んでいない”のです。だから自分でデッキが作れない、だから情報に頼るのです。でも実際問題として今 M:tG の世界では、代理店の雑誌を読むだけでほとんどすべてのデュエリストがいきなり“かめはめ波”を撃てるようになるのです(笑)。それを今更「まずは基礎体力作り、それができたらチョップの練習だ!」とか言ったって、多分だれも賛同してはくれないでしょう。 (^^;

● では、どうすればいいのか?

 これは以前から折りある毎に提案していますが、私個人は「トーナメント・プレイヤーと M:tG 初心者が同じフォーマットを遊ばないようにすればいい。」と考えています。トーナメント・プレイヤーが考えたデッキやコンボがそのままでは初心者同士で遊ばれるフォーマットでは使えない、そうなれば嫌でも皆さん自分でデッキを考えなければいけなくなる訳ですから。

 極端な話ですが、本当の超初心者が自分のデッキにトレイリアのアカデミーを4枚入れていたところで大きな問題は起きないのです(笑)。多分何かの偶発事故で土地1枚タップしただけで場にリバイアサンが召喚される位で話が済むでしょう。 (^^; そういった“このカードはなぜ強いのか?”が分かっていないプレイヤーまでが、今はバリバリのトーナメント・プレイヤーの影響を受けて使えるカードを制限されているのです。これはやはり変だと私は思うのです。そしてこの事が結果的には M:tG という物の選択の幅を狭くしている(脇道をどんどん減らしている)と私は考えています。

 あとやはり“DCI公認大会以外のフォーマットの推進”をそろそろ考えたいです。それも JAPAN CLASSIC のような半オフィシャル的な形式張った物ではなく、それこそ“何でもあり”的な物がね。これだけ使えるカードが増えたのだから“アンティカード以外は制限無し”なんてフォーマットが遊ばれたって何ら不思議はないはずなのです。実際福井ではある大学の学園祭で毎年この企画が実施され、かなり好評なのです。このフォーマットがその地域で普及すれば、例えば今 Standard プレイヤーには何の価値もない禁止カードが再利用され、カードの購入意欲を高める効果もあると思われるのですが。

● 道無き荒野に道を創る

 私が見ていると、やはり日本人は保守的で独創性に乏しく、特に未開拓分野に手を出していこうという意欲に欠ける民族だという気がします。私に言わせるとそういう民族に M:tG は合わないのです(笑)。 M:tG なんて物は本来は誰かの敷いたレールの上を走るための物ではなく、自分でどういう形でレールを敷くかを楽しむ物だと思うのです。そうする事でデュエルでもトレードでも他の人達より優位に立つ事ができ、本当の意味で楽しめるのだと私は信じています。ただ日本人ってその他人に敷かれたレールを走ることが快適だと、それで満足しちゃうのです。「雑誌のデッキをコピーしたら地元の公認大会で5連勝できた!」それで満足して先に進まないデュエリストって、日本には少なくないのではないかと私は感じています。

 あと私が今回書いた話って、実は Standard という物から一歩外に踏み出してみるとあっさり解決する問題だったりもします。別にいきなり Type-I をやれとは言いません。例えば Limited でもいいのです。とにかく最近の Standard における情報過多(それによる弊害)はかなり深刻な気がしますから、その影響を受けない&無理なく続けられる M:tG の遊び方を見つけていくべきでしょう。そういう意味で今度のネメシスのプレリリースパーティは、案外自分に取っての“新しい M:tG の面白さ”を発見できる機会になるかも知れません。「そんな事言われても、もう予約は締め切られてるし。」と言わずに、取りあえず会場に足を運んで観戦してみるだけでも何か新しい発見があるかも知れませんよ。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。