DCI公認大会を巡る“温度差”の話
第一部:大都市圏と地方都市の温度差

 少し前から ぎゃざる 等での活動を通じて「同じデュエリスト同士でも、DCI公認大会への取り組み等に随分と“温度差”があるものだなぁ。」と感じる事例が幾つかありました。今回はその“温度差”の背景となっている物のうち“地域格差”を取り上げ、それに対する私見を述べていきます。

●  M:tG 検定

 先日1月5日に福井で開催したイベントで、京都から来て頂いているまささんから“ M:tG 検定”がサブイベントとして提案され実行されました。これは元々去年の年末に FutureBee 京都さんで実施されたイベントなのだそうで、いわば M:tG に関する雑学知識を問う小テストといえる物です。そしてその実施結果というか反響に関して、京都と福井で実に好対照な結果が出たのです。

 このテストには「プロツアーの上位入賞者」や「その人数」等を問う問題が幾つか出題されていました。京都の方ではこの問題が好評で満点を取られる方までいらっしゃったそうです。ところがこの部分に関する問題は福井では非常に不評だったのです。福井の参加者中、最高得点を取られたダメ老師さんまでが「『なぜ僕がこの答えを知らなきゃいけないのか?』という問題が1/3以上あってムカついた。」とまで言い出す始末です(笑)。私個人もその手の問題に関しては全く無関心でしたので、正直言って自分が(その部門で)0点である事に全く何の感想も持てませんでした。そして少なくとも福井の参加者の中に「これはデュエリストとして是非知っておくべき常識だ。」という感想を話された方はほとんどいなかったのです。

●  M:tG とはそれ程の物なのか?

 以前にも書きましたが、私は以前将棋をやっていました。(厳密に言うと今でも現役なのですが。)自分でアマチュア有段者を目指していた頃はプロ棋士の名前を自然に覚えていましたし、特に自分が日頃取っている戦術の先例となるプロの書かれた本は随分読んだ物です。また将棋界のビッグ・タイトルの動向は気になっていましたし、ですから羽生名人が7冠を独占した時は随分と興奮した物です。

 ところが私は M:tG にはそういう意識を全くと言っていい程持てないのです。そしてそれは少なくとも福井の中堅以上のデュエリストの中では極めて一般的な意見なのです。世界選手権での動向はおろか、日本国内での選手権ですら興味のない人がほとんどです。ただ“そこでどんなデッキが使われたか?”に関しては多少の情報収集はしているようです。何せこれに限ってはその後“デッキの流行”あるいは“トレードの人気筋”等の様々な形で直接自分に跳ね返ってくる事ですので。

 どうも他の地域では M:tG の公認大会(特に名のあるプロツアー)で上位に入る事が非常に尊い事のように受け取られている気がします。確かにそういう地域ならランキング上位入賞者の名前は自然と覚えるでしょうし、またプロツアーや国内の選手権の結果等にも大いに興味が湧くのでしょう。ただ我々福井のデュエリストの多くがその手の話題にはてんで興味が無い状態で、よその地域でその手の話題が盛り上がる事がある意味不思議でしょうがないのです。

 私は月刊GAMEぎゃざ等に取り上げられるその手の“公認大会へのモティベイションが高い地域”と福井との間に、もの凄く大きな“ M:tG に対する温度差”を感じています。福井のデュエリストは決して M:tG そのものへの意欲が低い訳ではありません。ですが少なくともここ1〜2年はその M:tG への意欲がDCI公認大会(でのランキング上位入賞)に向いている人が極めて少ない状態が続いています。

 ちなみに補足しておくと、福井というのは M:tG に関してはかなり異様な地域です。以前掲示板でも話題になりましたが、多分人口10万人当たりのパワーナインの保有率という点では日本でもトップクラスかと思われます(笑)。また M:tG イベントの開催頻度が Standard と Type-I でほとんど変わらなかったりします。 (^^; まあその異様さの片鱗は、最近私が Yahoo! オークションに出品している絶版カードの値段を見て頂けるとご理解頂けるかと思いますが。

● “競技”を支えるために必要な人口

 私個人はDCI公認大会(あるいは一連のプロツアー)に対して大都市圏と地方で温度差が発生するのは当然の事だろうと思っています。将棋等は地方都市にも然るべき連盟の出先機関があり、プレー人口の拡大や競技としての啓蒙に様々な施策が取られています。ですが日本では基本的にそういった活動は(DCIJの本部がある東京以外では)個人や非営利のグループに頼り切っているのが実状です。この状況は将棋辺りと比べると非常にお寒い限りです。

 これは以前のファミ通に載っていた話なのですが、将棋界は“1200万人のプレイヤー”の中に“30万人の有段者”がいて、その中から“200人のプロ”が存在するのだそうです。(数字については多少うろ覚えですが。)ですから例えば福井から M:tG のプロを1人輩出しようと思うと、単純計算ですが6万人のプレイヤーと1500人の有段者が必要になるのです。この6万人という数字は福井県の全人口の7%を越えており、実質的にはかなり難しいのです。しかも将棋はあれだけ競技としてのシステムや地位が確立していてその程度ですから・・・。

 あと私は「世界中の M:tG のプレイヤーは約1000万人程度だ。」という話を小学館の本で拝見しました。その何割が日本にいるかは分かりませんが、例えば100万人いたとしても、そこからプロと名乗れるデュエリストを輩出する事はなかなか難しいだろうと思います。計算上は日本国内から16〜17人位は現れてもおかしくはない訳ですが、その人数で国内でのプロツアーという物が果たして成立するのかどうか。 (^^; あとこれだけの数がプロ化すると、間違いなくそれに見合うスポンサーが必要になるだろうし。

※ 上記のデータですが、計算ミスがあったので一部訂正しています。(2000.01.23)

 そう考えると、福井のデュエリスト達が言っている「日本の M:tG って(現状は)競技として極めるような物ではないのでは?」という意見は、現状を見る限り当たらずしも遠からずだという気がします。我々は別に競技 M:tG を推進している地域や組織の事をとやかく言う気はありませんし、実際言ってもいません。ただ最近のいわゆる“福井式”の M:tG の遊び方は、少なくとも日本国内の中小都市での M:tG の遊び方としてはそれなりに有意義かつ現実的なのではないかという気がします。

● 所詮は“草の根レベル”なのです

 実は私自身は競技 M:tG の発展に期待を持っている人間だったりします。競技が盛り上がるという事は間違いなくそれを支える人口そのものが増えているという事ですし、また社会的認知度等も間違いなく今より高い物になるだろうと思うからです。

 ただ現状の日本の M:tG がそのまま競技として盛り上がる事は、私個人はほとんど期待できないだろうと思っています。例えば各地で開かれている選手権の予選にしても、今は「全参加者がカンパを集めて、トップの選手に交通費として渡して東京に送り出している。」という感じじゃないですか?(笑)。実際問題として競技として盛り上げるには間違いなく“スポンサー”という物が必要になるはずなのですが、今日本の M:tG にはそれすらありません。参加者から集めた参加費で会場費や賞品を何とか賄い、足りない分は主催者が身銭を切る。これじゃあ我々が開いている草の根レベルのイベントとやってる事が変わらないもの。 (^^;;;

 あとやはり“参加者のモティベイション”という問題もあるかと思います。参加者がどういう意気込みでその大会に臨み、何を目的に来て何を得て帰るか。そこまですべてがイベントの成果なのです。そりゃ参加賞に(将来値上がり確実な)フォイルカードをばら蒔けば間違いなく人は集まるでしょう。でもそんな物目当てに何万人の人間が集まったところで、本当の意味での“競技 M:tG ”は成熟しないのではないでしょうか?。それは去年の横浜の世界選手権での事例が図らずも証明しました。

● 競技を盛り上げる“前提”

 最近“月刊GAMEぎゃざでのDCI公認大会の取り上げ方が少し変わってきた”という印象を私は持っています。一時期の RPG Magazine の内容って「DCI公認大会とは最高の“競技 M:tG ”の場だ!」とか書いておいて、同時に実例として取り上げられるのは渋谷の某センターでの内輪ネタとかでしたので(笑)。そういう意味で最近の記事が「DCI公認大会を開いてみよう!」「参加してみよう!」的な内容に多くの誌面を割いているのは、私個人は非常に歓迎しているところなのです。

 ただやはりこの手のイベントを全国的に盛り上げてスポンサーの付いてくれるメジャーな物にするには“全国津々浦々での定期的な開催”と“全国的な組織の整備”が必要なのではないでしょうか?。流石にHJやDCIJには手に負えないレベルの話になるだろうと私個人は思っているのですが (^^; ただ本当の意味で競技 M:tG を M:tG の大きな柱として定着させるには、やはりそこまでやるべきなのです。そのためには M:tG という物を日本で今以上のビッグ・ビジネスに成長させないといけない訳ですが。

 それと私個人は、今日本の一部のデュエリストの中にある「 M:tG は競技 M:tG をやってこその物だ!」という発想、あるいはトーナメント指向のデッキ(デュエリスト)を珍重してファンデッキ指向のデュエリストを蔑む風潮を改めるべきだとも思います。競技だけではその世界の人口が増えない事は歴史が証明しています。競技としてその道を極めようという人間を1人育てようと思ったら、間違いなくその何倍もの人間がそれを支える必要があるのです。「あなたが競技 M:tG を楽しめるのは、あなたの周囲にいる多くの競技に参加しないデュエリストのおかげだ。」そういう発想が必要なのです。

● 地方の実状に合った運営+α

 現在のように M:tG のイベント運営が地方の有志に頼っている実状では、それぞれの組織や個人が各地の実状に沿ったイベント運営をせざるを得ないと思います。実際福井ではDCI公認大会そのものへのニーズは高いものの、そこにランキングやポイントを意識して参加する方は極めて少数ですので、我々はその実状に沿ったイベントを開催している訳です。ですからその流れの一貫として、例えば“その地域独自のランキング”を発表される組織もあるようですし。

 我々は今“競技 M:tG ”という物への取り組みを休止している訳ですが、だからと言って我々は福井の M:tG のレベルが低いとは思っていません。到底競技 M:tG など語れるレベルにない地域が、ただ格好良いからとかといった理由で競技 M:tG 気取りのイベントを開催し続ける事の方が、私から見ると遙かに低レベルというか間抜けだとすら思えます。こういう物は“自分達のレベルの程度を知る”事が第一歩であり、その上で“やれる事をしながらステップアップを目指す”という姿勢が大事なのではないかと私個人は考えています。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。