“日本の M:tG 販売価格”を語る
第一部:我々が“ M:tG 販売値段”を語る意味

  M:tG 記事の復帰第一段は“日本の M:tG 販売価格”について私が持っている情報をフル動員して掘り下げてみます。まずはその第一部として“私がこの問題に対して持っているポリシーとその背景”について書いてみます。

● 私がこの問題を重視する理由

 元々私がこの問題を記事等で再三に渡って取り上げる理由の1つに、私がおもちゃ屋を手伝っていた時代に見た“ PlayStation(PS) ”での流通に関する問題を知っている事があります。

 PSは発売当時「SONY傘下の電気店にしか卸さない。」とされていたのですが、おもちゃ業界からの声(+3DOの失敗)を受けておもちゃ屋にも流通するようになりました。しかし実際にはおもちゃ屋がPSを扱うには正規(取扱)店契約を結ぶのに1年以上待たされ、おまけに契約を結んだら結んだで「値引きはするな」「フライング販売禁止」「中古は駄目」等と様々な制約を受けました。

 ところがPSには正規店としての契約無しで本体やソフトを販売する非正規店が現れました。しかも非正規店は値引き/フライング販売/中古買い取り&再販と何でもありで、多くの正規店から「これじゃあ正規店としてのメリットが無い。」という不満の声が上がりました。(でもこの事はほとんど話題にはなりませんでしたから、ご存知でない方も多いと思います。)私が知っているあるおもちゃ屋(正規店)はこの事態を受けて「SCEが非正規店のフライング販売や値引きをやめさせる事ができないのであればうちもやる。」とSCEに通告し、実際(常連さん向け限定ですが)フライング販売はしていました。

 どうも昔から日本のおもちゃ業界では“正規店が馬鹿を見る”という何とも不可思議な現象があるようです。その理由としてよく日本の流通事情等が上がるのですが、私に言わせるとそんな事は買う側には関係のない話です。「1円でも安い店&サービスの良い店に顧客は流れる。」そんなの当たり前の常識です。私はおもちゃ屋時代の経験から「多少の価格差は接客やサービスで埋め合わせはできる。」という持論を持っています。ですが正規店と非正規店との価格差がそういったサービスで埋め合わせる事が不可能な位大きな物であるとしたら、多分正規店という物の存在そのものに意味が無いのです。ましてや顧客が正規店で買う事に何のメリットも無い、あるいは正規店が“正規店であるが故に何か問題があった時にメーカーに文句の1つも言えない立場に置かれている”としたら、そんな流通の仕組みはやがて破綻するでしょう。それだったら正規店の仕組みそのものを廃止して自由競争に任せてしまった方が、遥かにその業界が発展する可能性を生み出すと思います。

● 消費者はわがままを言うのが仕事

 私はマナソース福井店時代に“福井で一番の M:tG 販売店”を目指していました。福井で一番安くカードを売り、そして一番のサービスを提供する、それが私の夢でした。私は自分自身がデュエリスト( M:tG 購入者)でもあるので、そういう販売店があればいいなぁ、という自分なりの理想像からそれを目指したのです。逆に言うと私は現在、定価売り&全く何のサポートもサービスもしない販売店では1パック足りともカードは買いたくありません(実際買っていませんが)。どうも私は自分が買い物をする店に対しては目が肥えてしまっているようです。

 顧客は基本的に販売店やメーカーに不満を持つのが当たり前です。いくら顧客でも何でも言えばいいという訳ではありません。ただちゃんとしたメーカーや販売店は、自ら予算を使ってまで商品(あるいはメーカーや販売店自身)に対する顧客の評価を聞こうとするのです。ですからメーカーや販売店の営業の邪魔にならない然るべき手段で発信された顧客の声は、少なくとも聞いておくに越した事はないのです。その手間を惜しんだメーカーはどうなるか、その典型的な事例が“東芝サポート問題”なのだと思います。

 あ、ついでに書いておくと「商売で成功した人達とは『顧客の言うわがまま(欲求)』をより満足させた人達だ。」という事です。以前掲示板で消費者がわがままを言う事が悪い事のように書かれた記憶があるのですが、それって商売人として言うとかなり穿ったというかネガティブな見方です。普通に考えても顧客のわがままに応えられない商売人が成功する訳がないでしょう?。

●  M:tG という“乗合バス”に求められるサービス

 私は3年ちょっと前に“ MAGIC:the Gathering ”という乗合バスを利用し始めました。当初は何の不満も無かったのですが、かなり前から「運賃が少し高いかな?」と思うようになり、それに伴い乗務員の対応の悪さ等が多少目に付くようになりました(笑)。

 今 M:tG という乗合バスは“稼げる幹線ルート”にしかその路線を設けていません。ただその方針に問題(限界)がある事は、最近の Portal 三國志の一件等から明らかになりつつあります。利用者が少ない路線を開拓する事にはリスクもあるのですが、ただ何らかの理由でドル箱路線の運行が行き詰まった時に、慌てて別路線を開拓したって遅いのです。またそういったローカル線を整備する事は、結果的にドル箱路線にも顧客を招き入れて集客アップにつながるのですが。

 それとバスを運行していれば当然“運賃に対するクレーム”が付き物です。バスを運行する側から見れば「最低限これだけは払ってもらわないと路線が存続できない。」という運賃は間違いなくあるのです。ただ同時にこういう物って「それで顧客が乗るか?」という話もあるのです(笑)。必要経費や確保すべき利益等から算出した運賃が顧客のニーズに合わない、その場合企業としては“必要経費を節減して運賃を下げる”事が第一の選択肢になるのです。それでも駄目なら運賃の値上げをする訳ですが、ただその値上げが価格維持に対する企業努力のなされた物か否かによって、それに対する顧客の受け止め方は大きく変わるでしょう。

 我々利用者はバスに乗るだけ乗って、運賃を払う寸前になって「高いから払うのは嫌だ!」と文句を付けて運賃を踏み倒す客になってはいけないのです。ですが“金を払って利用するか否かの選択権は我々にある”事も忘れてはいけないでしょう。同じルートを走っていて10円でも安いバスが別にあるのなら、そちらを使う選択も考えるべきなのです。それが結果的には業界全体のサービス向上や価格抑制につながり、長期的に見れば自分のためにも(10円高いという理由で利用が減った)その会社のためにもなるのです。まあ M:tG は公共交通機関ではないので、収益が赤字なのを誰かの援助を受けてまで存続させる必要はないのですが。 (^^;

● “適正価格”なんて物は無いけれど・・・

 最近色々な方から“日本での M:tG の価格”に関するご意見を頂きますが、はっきり言ってデュエリスト全員を納得させる事のできる適正価格なんて物はこの世には存在しないと思います。私は1パック当たり50円〜100円程度の値下げを希望しているのですが、中にはそれ以上の値下げを希望される方、あるいは「今の500円[税別]のままでいい。」とか「もっと高くてもいいのでは?。」という方だっていらっしゃるかも知れません。

 ただ“ M:tG を買う人間は常に自分が買う値段は気にしている”という事です。その方々が口にする理想の値段に根拠や信憑性があるか無いかは分かりませんが、実際デュエリストが集まればその事が話題に登る機会は多いはずです。それを「そんな意見には根拠が無いから言うな!」と言うのはあまりにもナンセンスなのです。それは例えば「八百屋の前で『ここの大根よりもあそこのスーパーの大根の方が10円安い』という話をしている奥様連中の口を塞ぐ」のと同じです。 (^^; それともそういった意見を口にする例えば私のような人間を、1人残らず“営業妨害”や“名誉棄損”で訴えますか?。そんなの不可能です。

 そして販売する側は“そういう意見はある程度多くの人達から聞くべきだ”と思います。(実際聞いてどうするかは別問題ですが。)少なくとも M:tG 以前にその手の商品を代理店が販売した実績はないと私は伺っています。(間違っていたらごめんなさい。)それなのに M:tG を扱い始めた際に何のマーケティング・リサーチもした気配がない、それが私には不思議なのです。実際そういうリサーチをして代理店がその結果を尊重しているならば、少なくとも今日本でフレッシュパックが税別500円で売られる事はあり得ないと思うのですが。

● 償われない“勧告”

 今まで書いた範囲の話ですと、それでも「こんなの消費者の我が儘だ。」という感想を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。ただ M:tG (特に代理店)にはこれ以外に販売価格に関して真剣に検討するべき“前歴”があります。それが平成9年10月に出された公正取引委員会からの勧告と警告です。

 この勧告では“小売価格の維持のために並行輸入業者に圧力をかけた”事と“小売業者に対して販売価格を拘束した”事の2点が認定されています。しかもこの行為は平成7年11月頃から行われており、これは4E日本語版の発売(平成8年4月頃)の実に5ヶ月も前からです。つまり代理店は代理店契約により M:tG に参入したのとほぼ同時に、ろくなマーケティング・リサーチをする事無く自分達に都合のいい販売価格を販売店に強要したと考えられるのです。しかもそれを代理店が参入する以前から代理店の販売価格よりも安く M:tG を販売していた並行輸入店にまで押し付けた訳で、そんな状況で「日本の M:tG は適正な値段で売られている。」なんて誰が言い切れるのでしょうか?。

 そしてその勧告を受けた代理店は数ヶ月後に自社雑誌の目立たない場所(なぜかポストホビーの広告の下半分)に謝罪広告を1度出したものの、それ以外の“償い”を一切していません。しかもその後日本の M:tG は値下げされる事もなく、あまつさえ1パックが460円から480円そして更に500円に値上げされ、その過程で通達という形ではあれ「今後英語版を日本語版と同一価格で売れ!(実質的な値上げをしろ)」とまで言っているのです。こんな状況で“代理店はあの勧告を反省し善処している”なんて誰が思いますか?。少なくとも私個人は代理店があの一件に対して反省の念を持っているとは微塵も感じないのですが。

 ただこれは過去に書いた記事の繰り返しになりますが「だから値下げしろ!」そうじゃないのです。何度も書いていますが私は「(1パック500円に固執するなら)それでも我々が納得して代理店経由で M:tG を買いたくなるような雰囲気を日本に作って下さい。」「安い並行輸入の英語版に負けない商品価値を持った日本語版を世に送り出して下さい。」そう言っているのです。普通そういうのはメーカーに取っては“努力目標”になるのでしょうが、でも私は代理店に取ってこれは“義務”だと思っています。言い方がきついかも知れませんが「代理店は我々日本のデュエリストに対して犯した罪をまだ償っていない。」それが私の主張なのです。実際日本のデュエリストの中に「あの代理店が M:tG を売っていなければ、今頃日本の M:tG はもっと盛んになっていただろうに。」という声が少なからずあるという事実を代理店の方々はご存知なのでしょうか?。

● 第一部・総括

 少なくとも私が色々な人達から聞いている範囲では「日本の M:tG の販売価格は妥当だ。」あるいは「 M:tG のコスト・パフォーマンスは良い。」という意見はほとんど聞かれません。しかもそんな中で国産TCGは確実にレベルアップし、その市場は確実に広がりつつあります。

 私としては一度代理店に大規模なマーケティング・リサーチをされる事をお勧めします。「なぜ今の日本の M:tG には元気がないのか?」そして「どうすれば元気が出るのか?」その答えを求める事はそんなに難しくはないと私は思うのですが。今まであなた達があえて聞こうとしなかった“日本のデュエリスト達の生の声”に、そろそろ耳を傾ける姿勢を見せてもいいのではないですかね。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。