ミニ四駆の経済学

 皆さんは“ミニ四駆”なる物をご存知でしょうか?。かつて3度に渡って小学生の間で大ブームを巻き起こし、今でもコロコロコミック等に漫画が連載されている息の長い遊びです。実はこのミニ四駆は“小学生の懐具合を実に巧みに計算した遊び”なのです。ひょっとするとこのミニ四駆がヒットした理由を探れば、そこから M:tG にも応用できる販売のノウハウが得られるかも知れません。

● 基礎講座“ミニ四駆とは?”

 という事で、まずはミニ四駆を全く知らない方への基礎講座から。

図解「これがミニ四駆だ!」
 
この図を描いている最中ずっと「ああ、この瞬間だけ紫雨さんの右腕が欲しい。」と思っていたのは内緒です(爆)。

 ミニ四駆は単3電池2本でモーター1個を回し、その動力を文字通り4輪すべてに与えて前進します。カーブは自力では曲がれないので、コーナーの壁にローラーを押し当てる事で減速せずに車体の向きを変えます。つまり1度スイッチを入れてコースに出すと、あとはマシン任せという何とも先進的なんだか前時代的なんだか分からない遊びです。 (^^; ちなみに実際のミニ四駆にはICチップなんか積んでいません(笑)。ましてや所有者の声に反応してスピードが上がるなんて仕掛けもないです(爆)。

 実はこのミニ四駆、その構造の単純さ故に作り手の技量の差が如実に現れます。実際同じパーツを使ってもその手間のかけ方次第で速いマシンとそうでないマシンが現れるのです。(例えばモーターやシャーシの慣らしに関するノウハウの有無の差。)また高額なパーツを積めば一概にマシンが速くなる訳ではなくて、あるコースでは有効だったパーツが別のコースでは単なるおもり&空気抵抗にしかなっていなかったりする事が当たり前なのです。従って作り手側にはミニ四駆そのものに対する知識+コースの特性を読む力等、様々な能力が要求されます。

 あとミニ四駆の世界で最も良く遊ばれているのが“ジャパンカップ(JC)仕様”あるいは“スーパージャパンカップ(SJC)仕様”と呼ばれている物です。この仕様では1個400円を超える高額な高回転モーター等の使用が禁止されていて、まさに作り手の技術を試す場となっています。ただ実際にはやはり“速いミニ四駆を作るための組み合わせ”という情報は盛んに流通しているのですが、ですがミニ四駆戦士の多くはそれを打ち破るべく、独自のマシン製作に勤しんでいるのです。

● ミニ四駆にかかる予算

 さて、基礎講座はこの位にして本題に入ります。

 最初に我々がミニ四駆に手を出す場合、電池代を除いて考えると予算は1000円未満で収まります。本体が600円+モーターが300円(それぞれ税別)ですから、ほとんどの小学生に手の出せる範囲です。しかもそれだけでミニ四駆を組み立ててコースで走らせるために最低限必要な物はすべて揃います。普通に遊ぶだけなら子供達は電池の事だけ心配すれば済む話なのです。

 さて、それでは大会等に出たいと思った場合はどうなるでしょう。私がかつて大会のデモンストレーション用(ちなみに大会に出られるのは小学生だけね)に作ったマシンは、総予算が5000円程度でした。レース用のマシンとなるとベアリング入りのパーツを8個程使わざるを得ないため、その分どうしても高くなるのです。(ベアリングだけで約1500円になります。)しかしこのベアリングはすべて再利用が効くので、1度買ってしまうと基本的にはもう買わなくても済みます。そのマシンを引退させて新規にマシンを作るなら、それこそ本体分の600円を出すだけで次のレース用マシンが作れてしまうのです。(うまくやればモーターも前のマシンの物が使えます。)

 ただタミヤもメーカーですから、ちゃんと自身がより大きな儲けを出す仕組みは持っています。例えば“マシンの加工をするための工具”“ミニ四駆や工具類を持ち運ぶケース”あるいは“マシンをより格好良くするための塗料”等がそれです。実際ミニ四駆って塗装に凝り始めるときりがないのよ(笑)。中にはそのためにエアブラシ等を購入する人もいますし、そこまで行かなくてもスプレー等は私も良く買いました。どうせ新しいマシンを作るなら自分のオリジナルな格好いい物にしたいし、前に作ったマシンと同じ色は嫌だったりするのです。

 ですから総括すると、ミニ四駆にかかる予算は“初期投資が1000円〜n万円”&“毎月の維持費が0円〜2000円程度?”になるでしょうか。実はこの価格設定は小学生達を相手に商売をする事を考え抜いた絶妙な物なのです。高額な初期投資は誕生日やお年玉等でまとめて出して、あとは毎月のお小遣いの範囲でパーツを買い足したり電池を買えば、それで何の不自由もなく遊べるのです。

● 小学生に売れるからくり

 小学生はTVゲーム等で「初期投資は多少大きくても維持費がそれ程かからない遊びに慣れている。」と言えます。ファミコンやゲームボーイ本体はそれなりに高額でも、1度買ってしまえばあとは毎月のお小遣いの範囲で維持ができる、そういう遊びを彼らは好むのです。ちなみに最近の次世代ゲーム機が小学生達にあまり受けが良くないのは、ひとえに“維持費にその内容が伴っていないから”だと思われます。彼らはこういう面においてはシビアですから。

 ミニ四駆においても全く同じ事が言えます。初期投資は本体や工具類等を含めるとそれなりにかかるけど、それを揃えて始めてしまえばあとは毎月のお小遣いで維持できる。しかも1度買った物は壊れたりしない限り何度でも利用できる。だから彼らは安心してミニ四駆にのめり込めるのです。これがある日「はい、来月からベアリング入りのパーツは使用禁止ね。」とか言ったらパニックになりますよ(笑)。何よりも彼らにはそれに耐え得るだけの経済力がないですから。

● さて、では M:tG は・・・

 もう書くまでもないでしょう。小学生達に年に数回に渡って万単位のお金を要求し、しかも買ったカードが確実に2年で使用不可になる M:tG という遊びが、彼らの中で定着する訳がないのです。ましてや使えるカードが月単位で変わったり、デュエルルームでそれなりの戦績を収めようと思っただけでそれこそ膨大な出費を要求されるのでは尚更の事です。ミニ四駆は“予算を節約しても手間暇かければそれをカバーできる”のですが、最近の M:tG はそれを許してはくれませんし。これでは結局金持ちの小学生だけが残り、大抵の小学生は M:tG には定着しないでしょう。

 元々私は「 M:tG は小中学生向けの遊びじゃないし、彼らに勧めるべきでもない。」という持論を持っています。ですが最近日本ではその辺をターゲットにした販促が盛んで、結果的に M:tG という物を良く知らない小学生が始めてしまうケースが少なくありません。私が「某代理店の販促は、向かっているベクトルが間違っている。」と言っている理由の1つがここにあります。どう考えたって日本で小学生の間に M:tG を流行らせるのは不可能なのです。本気でそれをやりたいのであれば、それこそ販売価格を遊戯王並に引き下げるしかないのですがねぇ(笑)。

● では、どうすればいいのか?

 今更小学生に M:tG を勧めるか否かの是非を解いても話が始まらないので (^^; ここでは取りあえず勧める事を前提で話を進めます。

 小学生を M:tG に定着させ普及させる最善の策、それは何と言っても“小学生の毎月の負担を少しでも軽減する”事に尽きます。例えばコモンカードの無料配布(不要になった方から回収して再配布する)だけでも、小学生から見た M:tG の遊びやすさは随分と変わってきます。また新製品のエキスパンションを社会人の真似してBOX買いするような真似をさせない事でしょう(笑)。逆に言えば“慌てて買わなくてもちゃんと M:tG が楽しめる環境”をその場に作る事です。実はこれに関しては Limited を(趣旨をきちんと説明して)普及させるのが案外有効な手段だと思われます。実際この発想を実現するのがいかに大変か、私は身に染みて知っていますが。

 ただやはり、私個人は「小学生に M:tG は早すぎるんじゃないの?」という持論は捨てられません。掲示板でも話題になりましたが、やはりトレードや自己管理がしっかりできない人が M:tG を始めても、他人に迷惑をかけるか他人に迷惑をかけられる存在になってしまいます。盗難騒ぎのあったイベントなんて途中の過程がどうであれ興ざめしちゃいますし、その地域の M:tG そのものに対する風評を悪くしてしまいます。 M:tG がミニ四駆みたいに親子で打ち込める趣味にまで昇華してくれるといいのですが、果たしてそんな夢のような時代はいつになったら来るのやら・・・(溜息)。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。