The FIVE COLOR STORY

 ここはドミナリアのとある洞窟。なにやらドラゴン達が集まって会議を開いていた。

「どうやら再び俺達の時代がやって来たらしいぞ!」

 話の口火を切ったのはアルカデス・サボスだった。

「ああ、そういう事だ。」

 クロミウムもうれしそうに話に続いた。

「なんでも俺達のうち誰か2体が場にいるだけで勝てるようになったらしい。」
「そんな、いつから M:tG は遊○王になったんだ?」

 黒き剣のダッコンがポツリと呟いた。

「お前、最近顔を見ないと思ったら、そんな物を遊んでやがったのか!」

 それにパラディア=モルスが食ってかかる。

「まあまあ落ち着けよ。確かに最近俺達には出番が少なかった。だからダッコンが遊○王にうつつを抜かしていたのも分からん事はない。でもこれからは違う。これから俺達は引っ張りだこだ。何しろ2体いるだけで勝てるんだ、皆が俺達を使わないはずがないだろう?」
「まあ、一番人気のエースは間違いなく俺だがな。」

 自信タップリに口を開いたのはニコル・ボーラスだった。

「俺様が殴れば相手は手札が吹っ飛んで気絶寸前だ。そこで『いぇ〜い、合同勝利だぜい!』とやれば、決まらないはずはないからな。」

 他のドラゴン達は反論したかったが、流石にこれには同意せざるを得なかった。

「で、俺とペアを組んでもいいって奴は誰なんだ?」

 ニコルが話を続ける。

「ああ、それだ。お前は (2)(U)(U)(B)(B)(R)(R) だから、2つ同じ色がある奴は組めない。そうするとクロミウムはアウトで・・・」
「じょ・・・冗談じゃねえ!」

 クロミウムが怒って声を粗げた。

「せっかくのチャンスなんだ、俺にも出番をくれよ!」
「そうは言っても、少なくともニコルとの組み合わせは無理だ。そういう意味では暴虐の覇王アスマディも同じだが。」
「まあ俺はニコルと同じで今までにもそこそこ出番があったからな。これからもマイペースでやっていくさ。」

 流石は覇王、落ち着いている。


 そんなこんなでドラゴン達がワイワイやっていると・・・

「おや、こんな所でご老体の皆様が井戸端会議ですか?」

 後ろから声が聞こえた。振り向きざまにアスマディが静かに問いかける。

「誰かね、初めて会うにしては口の聴き方を知らん奴だな。」

 見るとどうやら新参者のようだ。

「お初にお目にかかります。わたくし粛正するものクローシスと申します。」
「我々に何の用かね?。見ると君もドラゴンのようだが、まさか我々の仲間に入りたいという訳でもあるまい。」
「とんでもございません。私は忠告に参ったのです。『あなた方の出番など無い』とね。」
「なんだと、コラ!」

 相変わらずクロミウムは血の気が多い。

「まあまあ落ち着いて。私がそう言った理由は、私の能力を見て頂ければ分かります。」

 言われて全員がクローシスの能力を見る。次の瞬間・・・

「はあっ!」

 青くなったのは他でもない、さっきまで自信タップリに息巻いていたニコルだった。いや、元々ニコルは青いのだが、その瞬間はその青さが際立って見えた。

「これでお分かりでしょう。あなた方の出番など既にないのです。」

 長老(!?)達は途端に無口になってしまった。

「外には私の仲間であるデアリガズやドロマー達も待っております。この機会に皆さんにお引き合わせしましょう。ささ、皆様こちらへ。」

 5体のエルダードラゴンレジェンド達は渋々洞窟から外に出ようとした。その時である・・・

「うぎゃあ!!!」
「なんだこいつら・・・うわぁ!!!」

 何やらただならぬ叫び声。

「な、何事だ!?」

 クローシスが慌てて外に飛び出すと、そこにはデアリガズやドロマー達の無惨な屍が・・・。

「だ、誰だ!」
「お〜っほっほっほ。こういうお話に私をお招き下さらないからこうなるのですよ。」

 後から出て来たドラゴン達を合わせ、6体のドラゴンは声のする方を見て、そして驚愕した。

「す・・・スリヴァーの女王!!!」
「おっほっほ。ドラゴンというからどんなにお強いのかと下僕達を戦わせてみれば、なんと無様な事でしょう!」
「そりゃスリヴァー100体に囲まれてタコ殴りにされれば、誰だって負けるって。」

 この時クロミウムは冷静だった。

「皆様なんと不毛なお話をなさっているのでしょう。これからの主役はこの私ですわ。何しろ私1人いれば5色などたちどころに揃ってしまうのですもの。お〜っほっほっほっほっほ。」

 さしものドラゴン達も、反論の余地がなかった。

「さあ、ついでに皆様も下僕達の糧にして差し上げますわ!」

 スリヴァーの女王が下僕達に命令を出そうとしたその瞬間、突如現れたクリーチャーにスリヴァーの下僕数体が一気になぎ払われた!

「ちょっと待て!」
「わ、私に逆らうとは・・・一体何者?」

 そこに現れた1体のクリーチャー、その名を全員が同時に叫んだ。

「い・・・ 1996 World Champion !?」
「はっはっはっは・・・、強さア〜ンド希少価値度で見れば、君達など私の足下にも及ばんね!」
「・・・っていうか、お前世界に1体しかいねえだろう!」

 どうやらクロミウムは突っ込み属性のようだ。

「そんな・・・お前はトロフィーの中に塗り込められて封印されていたはずでしょう!?」
「何をそんな昔の話をしているんだ。そんなトロフィーなど貰った奴がとうの昔にシャッターして、俺様は今こうして暴れ回っているのさ!」

 これは意外な真打ちの登場だ。しかし当然これには女王が黙っちゃいない。

「ならばこの場で紙屑にして差し上げますわ。」
「やれる物ならやってみるんだな!」

 女王とチャンピオンの壮絶なバトルである。さしものドラゴン達もただ黙って見ているしかなかった。


 その時である。1匹の極楽鳥がその場を通りかかった。

「やあやあ、皆さん。相変わらず賑やかですね。」

 しかしその極楽鳥、いつもと様子が違う。それを見た女王とチャンピオンの手が止まった。

「こ・・・この鳥5色に染まってるわ!」
「そんな・・・極楽鳥は緑と決まっているはずなのに。」

 極楽鳥はニッコリ笑って言った。

「ああ、これ?。さっき魔道師が“虹の色”をかけて5色にしてくれたんだ!」


・・・その後、ドラゴン達の会議は“おでんパーティー”に変更された。


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。