プロモカード戦略に関する私見

 アクエリアンエイジは日本国内で製造されているTCGとしては、かつてない盛り上がりを見せつつあります。その盛り上がり(話題性)を支えている大きな柱の1つに“プロモカード”があるのですが、正直言って最近「ちょっとやり過ぎなんじゃないの?」と思われる動きが見えつつある気がします。

 ● 乱発(!?)されるプロモカード

 最近アクエリのプロモカードは、個人的な印象ですが「乱発と言われても仕方ない一歩手前の頻度で発行されている。」という感じです。ただ私個人は従来のプロモカードの発行に関しては、概ね支持する立場にいます。その主な理由としては・・・

  1. 発行されるプロモカードは市販品のパックの中に収録される(あるいはされている)カードが多い。また完全オリジナルな物については能力があまり高くない。 (^^;
  2. 雑誌に添付されているプロモカードは、それが“アクエリ人口の増加”や“話題性”に貢献していて、またアクエリを販売する書店とユーザーの距離を近づける事にも貢献している。
  3. イベント(公認大会)等で無償配布される物も少なくない。
 ・・・等があります。こういうポリシーに基づいてプロモカードが発行される限り、プロモカード発行がアクエリに対して悪影響を与えるような状況にはならないだろうと思われます。

 ところが、最近相次いで発表されたプレミアムパック発売に関して、どうもこの流れとは違う動きが見え始めています。それが“完全オリジナルでしかも特定のイベントでしか買えないカードの発行”です。私自身これに関する100%正確な情報を持っていないのですが、どうもそういった商品の発売が予定されているようです。

 ● 何が問題なのか?

 そういうプロモカード発行の何が問題なのか、これに関してはかつて M:tG で実際にあった事例を挙げるのが手っ取り早いでしょう。

 1999年の10月に M:tG のメルカディアン・マスクスというカードセット(エキスパンション)が発売になった際の話です。この時メーカーであるWoCは米国内(+カナダ位かな)向けに「BOX予約者には“セラの天使”のFoilカードを差し上げます。」というキャンペーンを実施しました。このキャンペーンは対象地域以外の購入希望者には全く門戸が開かれておらず、セラの天使の愛好者が多い日本人デュエリストの多くが「なぜ日本でやらないんだ!」という怒りの声(溜息と言った方が正確かも)を上げました。何しろセラの天使というカードは M:tG では1.2を争う世界的な人気カードで、市場に出回れば当然高値で取り引きされる事が確実でしたので。

 そしてキャンペーンの告知を見た時点で誰もが想像した事態が日本で起こります。キャンペーンの販促物として無料で配られたセラの天使のFoilは、日本国内で1〜2万円の高値で取り引きされたのです。(というか、今でもされています。)そういう事態になる事が確実な事が分かっていて、でも日本人デュエリストには何もできなかったのです。この状況を見た決して少なくない数のデュエリストが「あの企画は米国のデュエリストが日本人から金を儲けるための企画だった。」的な印象を受け、そのキャンペーンの恩恵を受けられなかった人達はWoCに対してかなりマイナスイメージを持ってしまった訳です。

 私に言わせると「今ブロッコリーがやろうとしている事はこれと同じだ。」という事です。特定のイベントに参加できる(言ってしまうと東京近郊の)マインドブレイカーだけに恩恵のあるプロモカードの発行は、間違いなくその恩恵を受けられないマインドブレイカーの不満を招きます。例えば東京から遠く離れた地方で頑張ってアクエリを買っていて、頑張って全カードのコンプリートを目指している人がこの企画を聞いたらどう考えると思いますか?。それだけで「こんな状況じゃコンプリートは無理だな。やめやめ。」と考えたって何ら不思議ではないのです。

 それともう1つ、例に上げた M:tG の企画もそうだったのですが、この企画は“販売店の存在を全く無視している”のです。( M:tG の予約キャンペーンはWoCに直接申し込む形で進められ、販売店には何の恩恵も無かったのです。)そのプロモカードがどんなに話題になっても、それで販売店にお客さんが集まる効果は微塵も期待できません。そんなTCGを販売店が喜んで売るだろうか?、という事です。ブロッコリーは初心者講習会や一連のイベント開催で販売店とそれなりに濃密な関係を築きつつあります。今回の企画はその関係をも壊しかねないのです。まあ以上の内容には“最悪の場合”という注釈が付くのですが。

 ● じゃあ、どうすればいいのか?

 ブロッコリーとしては自社が主催/協賛するイベントの動員を増やしたいのは当然の話で、そのためにプロモカードを活用するのはある意味最善の選択肢でしょう。ただそういうプロモカードの売り方には間違いなく弊害もある訳で、これを少しでも解消する工夫は是非して頂きたいと思うのです。

 1つの案として書きますが、そういったプロモカードの通信販売をするだけで、かなり問題は改善されます。ただそのプロモカードというかプレミアムパックを発売する主目的が“イベントへの動員”である以上、その方面へも配慮した工夫はされるべきです。例えば・・・

  1. イベント会場で¥500で売っていた物を通信販売では¥1000(送料別)程度で売る。
  2. 通信販売での発売時期をイベントから1ヶ月程度後に設定する。
  3. 購入者をあらかじめ“会員制”にして、イベントの案内や事後報告も送る。
  4. 申し込みや商品の受け取りを販売店の店頭でもできるようにする。
 ・・・といった内容になるかな。こうすればイベント会場から遠く離れた人に取って“そのイベントとの距離が近くなる”でしょう。自分がそこに行けない事から生まれる疎外感みたいな物もかなり改善されるはずです。また販売店もプロモカードを自店にお客さんを呼び込む重要アイテムにできるので、色んな人達に取ってメリットのある仕組みになると思うのですが。

 ● どうせやるなら・・・

 最近某社の食中毒事件を受けて別の牛乳メーカーが牛乳瓶に消毒薬をかけすぎ、それが残留して飲んだ方に被害が出たという事例がありました。私は基本的にアクエリに関するブロッコリーのやり方(販促)を支持していますが、でも「どうせやってくれるなら、それが最大効率でアクエリの推進に好影響を与えるように頑張って欲しい。」とも考えています。そういう観点から見た時に、今回の件は「一言言っておかんといけないのでは?」という気になりました。 (^^;

 正直言って私自身、今東京で開催されるイベントに参加するような余裕はありません。一応カード購入を頼める知り合いはいるのですが、その方にしても既に周囲の大勢の方から購入を依頼されて大変な目に遭いつつあります(笑)。万が一そういった事例の積み重ねが“アクエリ離れ”に結びついてしまったとしたら、こんな淋しい事はないじゃないですか。ブロッコリーの関係者の方々がここをご覧になっているかどうか分かりませんが (^^; もし何かのきっかけでこの記事が目に留まったら、ちょっとご検討下さればと思っています。 m(__)m

 あとこの機会にちょっと書いておきますが、雑誌の付録として配布されるプロモカードは一部のアクエリ販売店(書籍を扱っていないおもちゃ屋など)には全く恩恵が無かったりします。自店でイベントを開催しているならまだしも、そうでない販売店に取って一連のプロモカードによる販促は何らのメリットも与えていません。これではやる気のある販売店とそうでない販売店との格差が広がってしまうでしょう。ただ所詮やる気のない販売店ってTCGの拡販というか市場拡大には何の貢献もしなかったりするのですが(笑)。その辺は M:tG で散々色々な事例を見ていますので。 (^^;


   
なお、このページの内容に関する文責はすべて私 あいせん にあります。