| 情報でゲームが売れなくなるお話 | ||
少し前から日本では“携帯電話不況”という言葉が言われています。皆が携帯電話を持つことが当たり前になる一方で、決して安いとは言えない毎月の負担を支出するために、別の出費が切り詰められて消費が鈍る。デートの約束や待ち合わせをしやすくするために携帯を買ったのに、その携帯のおかげで自由に使える資金が減ってデートの回数が減る。ある意味皮肉な結果ではありますが。 (^^; また携帯電話の普及というのは、例えば今までは会って話をしていた人達が、そのコミュニティを携帯に依存するという事にもなります。そうなると例えば待ち合わせという行為が不要になることで外食産業にお金が入らなくなる。一見するとお金の出先が変わっただけのようにも見えますが、良く見ると以前よりも出るお金の総額は減っていることがあって、そうなるとこれが特定の業界とか市場全体の不景気のきっかけになったりしかねないわけです。こういった話は、形を変えてゲームという業界にも少なからぬ影響を与えていると思われます。最近のゲームはかなり情報に依存した、あるいは情報に依存しないと遊べない物が増えています。それ故最近はTVゲームと一緒に攻略本が売れる。TCGの強いカードやデッキをネットや出版物の情報を元に判断する。実際そういう遊び方が今は当たり前になっています。私は以前から、こういう状況を“ゲーム・マニュアルの有料化”という表現をしてきました。ただ同時に、そのTVゲーム業界やTCG業界は、決してその情報提供や情報の有料化によって成功を収めているわけでもありません。一見すると我々はゲームと情報の両方にお金を使っているわけで、業界に落とされる出費は増えているはずです。ところが実際はそうなっていない。それは一体なぜなのでしょうか。
例えばTVゲームについて考えてみましょう。ある人がTVゲームと一緒に攻略本を買う。この時点でゲームメーカーには、間違いなくその両方の印税による収入が入るはずです。ところが攻略本によってそのゲームそのものの寿命はもの凄く短くなっています。本来それはゲームメーカー側の“次のゲームを買ってもらう”事を意図しての措置だったのですが、しかし実際にはそこでゲームメーカーが期待していないことが起こります。ある人にとって役目を終えたゲームが、中古屋への転売や、あるいは知人への貸し出しという形で、ゲームがメーカーに利益を与えない形での流通を始めるのです。更に攻略本と共に流通するゲームは次々とユーザーを満足させてしまい、あっと言う間にゲームを遊ぶ多くの人達の中を行き来してしまいます。しかもこういう状況になることが事前に分かっていれば、本来ならそのゲームを買っていたかもしれない人の中からも「じゃあ知り合いが遊んでから借りて遊ぼう。」とか「中古屋で安く買おう。」という発想でゲームを楽しむ人が大勢現れる。つまり結果として、ゲームの攻略情報があることでゲームの市場が縮小してしまったのです。この話はちょっと形を変えてTCGにも当てはまります。新しいカードが発売されると、ものの数週間も待てば「このカードが人気筋」「このデッキが強い」という情報が出てくる。だったらそれを待って必要なカードだけ買えばいい。実際特に競技イベントに依存したTCGにはそういう傾向が如実に見られるはずです。だから情報が乏しかった時代に比べて売れ方に勢いが無くなる。実は話は極めて単純だし、なおかつ言ってしまうと当然の結末なのです。
少なくとも昔TVゲームの市場が賑やかだった頃は、ゲームメーカーはゲーム雑誌の出版社に対して“情報の統制”を行っていました。いわゆるネタバレの掲載を抑制し、できるだけユーザーが何の先入観も持たずにゲームを楽しめるようにしていたのです。あと何よりも、そんな情報に依存しなくても楽しめるゲームが昔は主流だったはずです。ところが最近ではゲーム本体と攻略本が同時に発売され、しかも攻略本を読まないと知り得ない仕様がゲームの中に作り込まれている。つまりゲーム制作側と情報発信側との間にある種の癒着ができてしまったのです。これは一部のTCGにしても同じでしょう。だから結局はゲームの中身が短期間にネタバレする状況になってしまったのです。しかも最近のゲームはシステムが複雑化し、100%完全に情報を隔離した状態では遊べなくなっています。一見するとこういう動きは、メーカーにゲームと情報、両方からの収入をもたらすように見受けられます。しかし現実にはそれによりゲームの寿命を大幅に縮め、中古市場への需要や依存度を高めてしまった。従って本来買ってもらえるはずだったユーザーにゲームを買ってもらえなくなっていたのです。
じゃあ、どうすればいいのか。少なくともTVゲーム業界は、今や“攻略情報があまり要らないシンプルなゲーム”に市場活性化への期待をかけているようです。そういうゲームはユーザーの間口が広いし、長く遊ばれるので中古屋にも流れにくい。あと内容がシンプルなほどネタバレにも強いわけで、結果としてゲーム市場の拡大が見込める。まあはっきり言って「そんな話に今更気が付きましたか。」という感じですが (^^; でも今からでも遅くはないでしょう。じゃあTCG業界はどうなのか。どうも見ていると未だに昔からの“短期的な商売しか見ない前時代的な売り方”にしがみついている物もあるように見受けられます。例えばカードやデッキの情報は、メーカーがどれだけ抑制しようがユーザーレベルで世に出る物でしょう。でもそういう噂レベルの情報に比べてメーカーから出るオフィシャルな物の破壊力は桁違いなわけで、これをやめるだけでも情報の弊害という物はかなり抑えられるはずです。ただしこんな事は多くのTCGメーカーが既に理解しているようで、特に日本国内で大きな市場を形成した勝ち組のTCGは、この手の情報をメーカー側が自らネット上で流すような愚行はやっていないでしょう。そういう情報はパック販売やシングルカード販売に様々な弊害を与えて業界にはプラスにならない。この事が某TCGの失敗事例から分かっているからだと思われますが(笑)。
ユーザーに自社のゲームを遊んでもらうのに、彼らを情報に依存させればさせるほど、実際には彼らはその情報を集めるのに時間を使い始め、肝心のゲームを遊んでくれなくなる。これは例えばTV局がCMを流して売れたTVゲームにTVを奪われ、自身が放送する番組を見てもらえなくなるのと似ていて、ある意味皮肉な結果になっている気がします。そしてTVゲームに向き合う時間が減ったから、新しいゲームが売れなくなったり、ゲームが短期間で中古市場に出回るようになる。TCGのデッキを家でネットを見ながら作る人達が増えたので、街のデュエルルームから人がいなくなり、特定の人気カードにしか需要がなくなる。だからゲーム業界にお金が回らなくなって不景気になる。話は単純明快なのです。つまり逆に言えば、そういう情報にユーザーを依存させないようなゲームの作り方、あるいは売り方をすれば、現状のこの苦境を脱する可能性があるのです。実際そうですよね。そしてTVゲーム業界はそういう動きを既に起こしていますし、TCGの業界も今後そうなっていくでしょう。それをやらなきゃ間違いなく市場で生き残れないのですから。
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実はこの話は、ある方からTCGで起こっている“デッキの模倣”に関する意見の執筆を依頼された、その結果として出てきた物です。実際に模倣されたデッキという存在がTCGの業界にどういう影響を与えるか、上の内容と現実に起こっている話を思い返していただければ大体想像が付くでしょう。デッキの模倣というのは、ユーザーが情報に依存し切ってゲームを楽しむ、まさにその典型として生み出された行為ですので。 今更模倣されたデッキの存在、あるいはそれを利用するユーザーの是非に関しては議論してもしょうがないと思います。昔対戦格闘ゲームで攻略雑誌の記事をそのまま模倣して暴れ回ったコピーゲーマーが現れたのと同じで、それで勝てる以上はデッキを模倣する方というのは間違いなく現れるし、それを非難するのはあまり正解とは言えないからです。ただ私に言わせると「デッキを模倣して対戦に勝てた程度で満足されてしまうようなゲームは所詮駄作だし、間違いなくその後しばらくすれば売れなくなって廃れるでしょう。」という感じです。実際そうなっていますし。強いデッキを模倣してでも対戦で勝ちたい。それって結局のところ、そのTCGに対戦での勝利以外の楽しみや喜びがないからそうなっているんですよね。でも世の中の多くのTCGには、コレクションとか自分が好きなカードで工夫してデッキを作る楽しみがあるわけで、別に対戦での勝利にそれ程固執する必要はないのです。というか、普通TCGというゲームはそれが当たり前だし、そうでなければ市場で生き残れないでしょう。 ただ、あるTCGに関しては、メーカー側が競技イベントで入賞したデッキの情報を流してデッキの模倣を推奨していますし、ユーザー側も「勝てないデッキなんか紙の束だ」とばかりに強いデッキの模倣を推奨しているように見受けられます。じゃあそれでそのTCGはちゃんと売れていて、それこそ他者の追従を許さない世界屈指の市場を維持できているのか。実際は違いますよね。 (^^; ただ業界全体がそういうゲームへの取り組みを推奨している以上、デッキを模倣した個人にその是非を説いたり批判したりするのは根本的に間違っています。誰だって対戦では勝ちたいし、その手段としてデッキの模倣が有効なら多くの人がやるのです。むしろ批判されるべきは、そういう売り方や遊び方を推奨して業界を破滅に追いやろうとしているメーカーや売り手なのです。デッキの模倣程度ではなかなか勝てないバランスの取れたゲームを売る。自分でデッキのアイディアをひねり出して楽しむという遊び方を推奨し、そういうユーザーが報われるようなサービスやサポートをする。こんなTCGとしてごく基本的なことをやってこなかったのですから、そりゃあ売れなくなって当たり前なのです。 少なくとも日本のゲーマーが、攻略情報無しではゲームが遊べなくなっている。そうなるとメーカー側が何らかの形での情報を提供せざるを得ない。これは間違いなく事実なのでしょう。ただ一般に言われているように、情報にも“質”という物があります。質の悪い情報の垂れ流しは業界を滅ぼす。実際に対戦格闘ゲームの業界はそれ故滅んだのです。最近その格ゲーは一部のコアなファンによってある程度維持されているように見受けられますが、これは逆に言うと“メーカーや出版社によって質の悪い情報が提供されなくなった(あるいは業界の規模が小さくなって情報の弊害が起こりにくくなった)”故の結果と見て取ることもできそうな気がします。そんな業界に情報を提供しても金にはなりませんから。 (^^; 今後メーカー側がユーザー側にどういう情報を提供するのか。これが例えばTCGという業界の今後の成否を相当部分決めるだろうと私は思います。願わくば昔のように、私のような人間が喜々として読みふけってしまう、本当の意味でゲームを盛り上げて業界を発展させるような情報が提供される事を願ってやみません。 |