代理店交代をどう見るか 
 
  MAGIC:the Gathering の日本総代理店が、来年早々にホビージャパンからタカラに変わるようです。本件に関しては2004年12月1日頃ネット上で第一報が流れてから、かなり長い間正式なコメントが出ていません。現時点でこの件に関して信頼できる公的な発表は、日本経済新聞12月7日号に掲載された新聞記事、及び同年12月15日にホビージャパンが発表した内容のみです。(新聞記事はネット上に要約のみ掲載されています。)ただ状況を見ると“このままウィザーズ社やタカラからは公な発表がないままの可能性もある”ので、現時点で見えている話を元に私個人の意見を書いてみます。

○ 代理店交代の背景

 最近見聞きした内容を合わせて、今回の件に関して改めて時系列を整理してみました。

 ウィザーズ社とホビージャパンが代理店契約を結んだのは1995年の10月です。私が聞いている話の限りですと、この契約は3年ごとに更新されてきたそうです。そうなると1回目の更新は1998年の10月、2回目が2001年の10月、そして3回目は2004年の10月となります。ただ私個人はある信頼できる筋から「1回目の更新は1999年の夏にあった。」という話を伺っており、ここから計算すると3回目の契約更新は2005年の夏になるはずでした。しかし今回の代理店交代がホビージャパンとの契約満了を以ての措置であるとすると、やはり最初に挙げた期間に契約が更新されていたと考える方が自然かと思われます。そしてウィザーズ社とホビージャパンは3度目の契約更新をしなかった。話としてはそういうことだろうと思われます。

 次にその理由です。昨年度(平成16年3月期)の日本国内でのホビージャパンを経由した Magic の販売額は、ホビージャパンの決算資料や主要雑誌の出版部数などから試算すると、概ね5〜10億円程度と推定されます。(恐らく粗利の方は0.5〜1億円程度ではなかったかと思われます。)これは全盛期に比べると1〜2割程度に落ち込んでいると思われます。ホビージャパンがその販売不振の責任を取らされてウィザーズ社に切られた。この話をそう単純に考えるにはあまりにも疑問点が多すぎます。例えば過去に代理店が行ってきた“ホビージャパンとポストホビーによる利益の二重取り”は、そもそもウィザーズ社との契約の中で認められた内容のはずです。それで今更ながら並行輸入パックとの価格差による販売不振の責任をホビージャパンが一方的に負わされる。これは企業同士の契約としてはあまりにも非現実的です。しかもその価格差を数年間に渡って放置した問題とか、競技イベント偏重の販促によって Magic の敷居を高くした問題とか、そういう失敗の責任はむしろウィザーズ社にこそあります。そうなると今回の件は「お互いが相手への不信感を募らせた挙げ句の協議離婚」であると考えるのが自然だろうと思われます。

 私がこの件に関して、どうしてもウィザーズ社の関係者に伺ってみたい疑問点が1つあります。今回の代理店変更に関して、どうやら関係者からは「 Magic は日本国内での知名度が上がらずに苦戦していた。」という旨の発言が出たと思われます。関係者が言ってもいないことを日経新聞が記事に書くはずがないからです。しかしほんの少し前まで、ウィザーズ社の人達はその同じ口で、日本国内の問屋や販売店の人達に「日本は米国に次ぐ世界第2位の市場で、我々は日本を大事に思っている。」とか言ってませんでしたっけ?。 (^^; この2つの内容を一体ウィザーズ社の方々はどう関連付けるおつもりなのでしょうか。要するに Magic は、世界第2位の市場である日本ですら知名度が上げられずに苦戦したのです。そんな会社や商品が、代理店を変えたからといっていきなりうまく行くものなのでしょうか。それはさすがに見込みが甘い、あるいは虫が良すぎると私には思えて仕方ないのですが。

 私は以前から「日本国内で Magic は“買ってもらえない”以上に“売ってもらえない”商材になった。」という話を書いてきました。今回の件は日本の Magic が、ついにホビージャパンという代理店にまで売ってもらえない商材になってしまった。そういう見方を持ってもいいのではないかと考えています。間違いなくその元凶の一旦はホビージャパン自身にあるのですが、しかしこういう状況になってしまうと、さすがに日本国内の販売店が「頑張って Magic を売るぞ!」という雰囲気にはならないだろうと思われます。流通側の更なる士気の低下は決定的でしょうから、この状況を立て直すのは並大抵のことでは成し得ないでしょう。ただし少なくとも来年早々に発売される新商品では価格の据え置きが発表されているようですので、今後短期間での市場の改善はちょっと望めないかもしれません。

○ 新たな代理店が置かれる環境

 では、その Magic を受け入れる側のタカラは、今回の件をどう考えているのか。この部分はあくまで想像でしかないのですが、私個人はタカラが「厄介者を抱える羽目になった。」という印象を持っている位の見方で良いのではないか、と考えています。タカラは昨年度、年商1072億円、経常利益31億円の企業です。こんな企業が年商たかだか10億円足らずのゲームを、自ら手を挙げて喜々として受け入れるとはちょっと考えられません。これに対してタカラがウィザーズ社と契約して販売しているデュエル・マスターズは、昨年度の年商で100億円を超えるビッグ・ビジネスです。ただしタカラは昨年度の決算説明会で「デュエル・マスターズはウィザーズ社に支払うマージンが高額で、売上の割に利益に貢献していない。」とはっきり明言しています。この契約条件をタカラに有利にするために、その対価として半ば死に体になった Magic を引き取った。現状ではそう考えるのが自然だし、それ以外の説明はなかなか付かないでしょう。もしタカラが Magic という商材に大きな期待を持っているのであれば、それこそ今年度の中間決算の説明会辺りで、株主向けに「来年から我々は Magic を売り始めます。」という発表をしているはずです。しかし実際にはそれはなかったようです。しかもタカラが代理店業務を開始するとされる期日まで半月を切っている今この時期にすら、タカラのWebサイトなどでは何らの発表もなく、あまつさえ問屋や販売店といった流通関係に対しても十分な説明がなされていないようなのです。タカラが現状の Magic をどう見ているか、この事にある程度象徴されてしまっていると私は見ています。つまり「外的に見れば何も変わらない」のです。何も変わらないということは、現状での Magic の低迷傾向もやっぱり変わらない、あるいは変える気はない。そういうことでしょう。

 それと来年以降、日本国内の Magic のプレミアイベントはウィザーズ社が直接主催・運営するようです。そうなるとタカラという企業が Magic の流通面において、ユーザーに全く顔が見えない存在になるかもしれません。ちょうどかつてのポストホビーのように、商品を右から左に流して手数料を得る、それだけの存在になる可能性すらあるのです。ひょっとすると今後は日本語版のみを扱うような形態を取るかもしれませんし。ただし私に言わせると、それには一応正当な理由があります。一言で言うと“そんな余裕は今のタカラにない”のです。それは何よりも、日本国内の代理店を経由した Magic の売上不振によります。あとタカラ自身も今は採算が厳しい状況にありますし。販促をしたくてもそんな予算はない。だからタカラはウィザーズ社から販促の責務を負わされずに代理店業務を委託された。現時点ではそう考えても何ら不思議ではありません。その位日本の Magic は追いつめられているのです。ただ、そういう状況を作ってしまった理由の一旦は我々 Magic ユーザー側にもあるので、この件に関して我々がタカラに文句を言うのはかなり筋違いでしょう。

 じゃあタカラの今現在の意図はどこにあるのか。それを類推すると「 Magic という世界的なネームバリューを持ったゲームを扱う」という肩書きで、通期の赤字決算が決まって落ち込んでいる株価を少しでも維持したい。そんな感じなのかもしれません。だからタカラは株主が読んでいそうな日経新聞でのみこの事を発表し、一般のユーザー向けには一切発表をしない。話の筋としては通りますよね。しかもタカラは Magic の売り上げ目標を年間25億円と言っているのですが、現状を見る限りこれはかなり厳しい数字ではないかと思われます。そもそもタカラが Magic 拡販の目玉としている中高生向けの販促(恐らくマンガやアニメによる展開)も、その売り上げ目標が達成できなければ資金を捻出できないはずです。つまり資金不足から半年とか1年程度で頓挫する可能性が今は高いのです。あまつさえこの期に及んで問屋や販売店向けの説明が十分に行われていない。それでこれだけ散々ケチが付いた Magic を今まで以上に頑張って売ってもらえるわけがありません。さすがにこれに関しては「見込みが甘い、あるいは流通を舐めてるのにも程があるんじゃないの?」という感じです。

 結局のところ、今回の代理店交代は“企業を維持するための措置”という側面しか持っていないし、そしてホビージャパンを含む3社の目論見がたまたま一致して、幸か不幸か Magic はタカラにもらわれていった。これが現時点での私個人の見方です。少なくとも Magic を再度盛り上げようとか、競技や文化として定着を目指そうとか、そんな高い目線を持った措置だとはあまり考えられません。しかもウィザーズ社はかつて一度は欧米で爆発的ブームになり、しかしすぐに人気に陰りが見えた Pok?mon のサポートを、あっと言う間に縮小した経歴を持っています。これ以上 Magic の市場規模が縮小すれば、 Magic が同じ憂き目にあわないという保証はどこにもないのです。

○  Magic 販促活動の今後

 では、代理店変更によって日本の Magic の売られ方、あるいは販促に関してどういう変化があるのか。これに関しては現在、私個人は「少なくとも当面大きな前進はない」と見ています。タカラは少し前にブロッコリーを子会社化しています。しかしタカラはブロッコリーTCGの販促には口を出していないようですし、逆に何らかの支援をしているという様子も見られません。これと同じ事が Magic でも起こる。そう考えるのはそんなに突拍子もない発想ではないでしょう。あまつさえ現状においてタカラが行っているデュエル・マスターズに関する販促は、販売店やユーザーから見て決して満足のいく物ではないそうです。市場規模が100億円以上もあって、今やタカラの主力商品となっているデュエル・マスターズですら、今はそんな状況なのです。それなのに市場規模がその1/10かそれ未満しかない Magic にタカラが力を入れるわけがない。簡単に言うとそういうことです。

 ただこれに対して、現状で Magic ユーザーが持っている“タカラへの期待感”に関する意見は、それこそ現在デュエル・マスターズでも行われていない、ある意味かなりレベルの高い販促活動です。もし私がタカラの関係者だったら「だったら何よりも、当社が扱う Magic がデュエル・マスターズよりも売れるという結果を作ってくださいよ。そうしたら考えますから。」という感じでしょうね。 (^^;  Magic ユーザーがタカラからデュエル・マスターズのユーザー並かそれ以上のサポートを受けたければ、タカラにとっての Magic がデュエル・マスターズ並かそれ以上に重要な主力商品になるしかない。そんなの普通に考えれば当然でしょう。ただ今の Magic がそういう状況であるならば、少なくともホビージャパンがこんなに簡単に Magic を手放すわけがありません。つまり今はそうなっていないし、今後そうなる可能性も今のところはかなり薄い。そう判断していると考えて間違いはないかと思います。

 しかも日本国内での Magic の販売不振は、恐らくはウィザーズ社の懐をもかなり圧迫していると思われます。そうでなければこの期に及んで代理店を変えようなんて発想になるはずがないのですから。そうなると日本の Magic に関して、今後新たな販促はなかなか立ち上げられないのです。あまつさえ従来の販促が縮小される可能性すら出てきます。言い換えると「既に並行輸入に流れてしまった既存の Magic ユーザーには期待せず、新規のユーザー獲得だけを見て販促をやりましょう。」という事です。そうなれば当然販促のリソースもそういう方向に費やされることになるでしょう。そもそもそんなに大きなリソースを動かせる状況でもないわけですし。 Magic マンガ連載やアニメ放映はするけれど、それ以外の事は一切しないよ。極端に言うとそんな感じになる可能性が高いのです。

 ただし、もしウィザーズ社やタカラが今後 Magic への未経験者獲得に本腰を入れるとしたら、当然“その代わりに削減される予算”が出てくるはずです。それが具体的に何になるのか、私の口から申し上げるまでもないでしょう。また別の可能性として“ウィザーズ社とタカラが販促に関して完全な分業をする”という道もあります。ウィザーズ社はひたすら競技イベントを開き、タカラはどこかの人気雑誌に漫画を連載しアニメを放映する。そんな感じです。ただそうなると、今までにもあったような「 Magic を始めたばかりの初心者がいきなり認定トーナメントに叩き込まれる」という状況が更に悪化する可能性もあります。販売店が開くイベントへの支援が今まで以上になくなれば、当然 Magic イベントを開こうなんて草の根レベルでの動きは更に廃れるはずですので。初心者が最初に経験する Magic イベントがグランプリ予選といったプレミアイベントというのは、さすがに Magic の世界の歪さを象徴しています。そうなると年商25億円どころか、日本の Magic はそれこそ存続そのものが危うくなるでしょう。物事には何かに付け“加減”という物が大事なのですが、果たしてウィザーズ社とタカラのタッグがこの日本の Magic にとってのちょうど良い加減を見つけられるのでしょうか。

○ 競技 Magic の今後

 では、日本の競技 Magic イベントはどうなるのか。これに関しては「ほとんど何も変わらないと見せかけて、期間をかけて実質的な縮小を目指す。」というのが私個人の見方です。どうも Magic の認定ジャッジ向けには、既に「今後、日本国内の Magic のプレミアイベントはウィザーズ社が主催する。」という旨のアナウンスが出ているようです。つまりタカラはその辺のイベントには全く関与しない、そういうことでしょう。現状の日本の Magic には競技イベントという名前の販促企画しか存在しないわけで、それにタカラが関与しないということは、実はイコール“タカラは現状の Magic の販促には一切関わらない”と考えても不思議ではないのです。そうなると代理店変更によって、競技 Magic に支出される資金やマンパワーは増えない、あるいはむしろ減るわけで、少なくとも今後競技 Magic イベントが拡大する可能性はその時点で限りなくゼロになります。

 しかも、現在既に「Finalsが今年で最後になる。」という主旨の情報が出ているようです。この事だけを取ってみても、日本の競技 Magic にとっては大きな後退、あるいは敗北と言ってもいいかもしれません。とにかくそういう状況になってしまっているのです。しかも今回の件で、来年以降に日本選手権の規模が縮小されても仕方ないような雰囲気すらも出来上がりつつあります。だってメーカー側ははっきりと「日本の Magic は苦戦している」と認め、それを公にコメントしたのですから。もしそういう状況を改善して、元通りあるいは今以上の競技イベントを維持したいのであれば、何はともあれ“タカラからパックを買う”という事を今すぐにでも始めるべきでしょう。もしそれで日本の Magic の市場規模が大きく伸びれば、改めて競技イベントにタカラがスポンサー提供してくれるような状況も生まれるかもしれません。

○ 残されたホビージャパンの今後

 さて、では残されたホビージャパン(その出版物)はどうなるのか。実は“意外と今後には期待が持てる”というのが私個人の見方です。

 今回の件でGAMEぎゃざやマナバーンといった雑誌は、 Magic という世界におけるオフィシャル性を完全に失います。(元々明文化された形でのオフィシャル性はなかったはずなのですが (^^; それが誰の目にも明らかになるわけです。)そうなると形としては、個人のライターがインターネットよりも遙かに遅い情報を記事にして雑誌に掲載する、そういう内容になります。認定トーナメントやプレミアイベントに関する告知やレポートなども掲載されない可能性があるし、時々あったプロモカードのプレゼントなども無くなるか機会が減りそう。そうなると“純粋に内容が面白くなければ買ってもらえない”わけです。それで実際に雑誌の内容を面白くできるかどうかは別問題として、少なくともそうならなければ多くの人達が路頭に迷うわけで (^^;;; さすがに何らかの動きが起こるものと想像されます。

 また特にGAMEぎゃざに掲載されるショップの広告が大きく変わるでしょう。以前のような並行輸入ショップの締め出しなんて事をやってる余裕は全くなくなるはずです。またホビージャパン自身が Magic のパックを扱わなくなることで、広告内でのパック価格に関する記載の制限(特に値引き表示の禁止)をする必要が無くなります。そうなると広告内で販売店同士の価格競争が起こることが予想され、うまく行けばそれだけでもかなり有意義な広告が読めることが期待できます。

 ただですねえ・・・根本的な話として「そんなオフィシャル性を失って、あまつさえ代理店資格も失った出版社の雑誌に、どこのショップが広告を載せるのか?」という問題があります。 (^^; ここでもやはり日本国内の Magic 市場の縮小が影響すると予想されるのです。そうなると逆に、意外と早く Magic 関連記事の縮小とか、あるいは Magic コンテンツからの完全撤退が決定される可能性も否定できません。しかも世に出ている代理店交代に関するコメントを見る限り、ホビージャパンの Magic 撤退を惜しむ声ってほとんど無いんですよ(爆)。そうなると今までの愚行というか悪行のしっぺ返しで、ホビージャパンが想像もしていなかった窮地に立たされる可能性も否定できません。これは私に言わせると明らかに“自業自得”なんですが (^^; まあそうならないように陰ながらお祈りしております(嫌すぎ)。

○ 我々にできることは何か

 では、そんな中で我々個人のデュエリストには何ができるのか。ちょっと悲観的な意見になるかと思うのですが、はっきり言うと「そんなにない」というのが正直なところです。 (^^; メーカー側がここに来て公に宣言せざるを得ないくらい、日本では Magic の知名度が上がっていない。あるいは手を出した人達の中からも客離れが進んでいる様子が見受けられる。これはそのまま Magic イベントの動員などにも影響します。実際に現在まで Magic イベントを長年維持している組織ですら、ここ最近は参加者動員の減少を肌で感じているはずです。こういう状況で、今現在全く Magic イベントが動いていない地域で、誰かがイベントを立ち上げた。恐らく「あまりの参加者の少なさに絶句する」という状況に陥るだろうと思います。言い換えると会場費や賞品の相当分を自己負担せざるを得ないわけです。はっきり言いますが、そんな個人の自己犠牲を前提としたイベントは長くは続かないのです。 Magic の売り上げが落ち込んでいる以上、販売店の支援も得られにくいでしょうし。

 しかも日本の Magic には、はっきり言って新たな販促を立ち上げるような余力などもう残っていません。本来ならタカラは Magic を流通させる、あるいは認定トーナメントを維持するための新たな社内組織を立ち上げる必要があるはずなのですが、現状の Magic にはその経費を自前で捻出する余力さえ残っていないと思われるからです。それだけ Magic は売れなくなっていて、だから代理店が変わり流通に関して抜本的な改革が可能になっても Magic はパックの値下げができない状況なのです。言い換えると“変えたくてもやりようがない”わけです。あと何よりも、今まで「高い」という理由でホビージャパン経由のパックを買わなかった人間が、代理店がタカラに変わっただけで(パックの価格は維持されたままの)国内のパックを買うようになったり、あと Magic をやめた人が戻ってきてパックを買い始めるわけでもないでしょう。ですからその逆の「タカラが代理店になったからといって、販促や宣伝が急に良くなったりもしない。」という事も言えるし、ユーザーはそれに文句を言う筋合いはないのです。

 要するに話は「卵が先か、鶏が先か。」という問題です。タカラが満足な販促をしてくれるのであれば、俺だってタカラから Magic を買ってやる。確かにタカラが Magic に売上や利益を依存しているのであれば、そういう意見やアプローチは一定の成果を挙げるかもしれません。しかし今は違います。どう考えても「このまま売上が上がらなければ、 Magic はタカラの中の不採算部門、あるいは日陰者としての扱いを受けてその役目を終える。」という事です。別にタカラはこのまま日本の Magic が消えて無くなろうが、デュエル・マスターズの売上や市場さえ維持できれば全く困らないのですから。 (^^; しかもタカラはあれだけの過去に実績を持つ巨大企業なので、当然次の新商品などいくつも開発しているに違いありません。ひょっとすると Magic はおろかデュエル・マスターズですら、今は“次の新商品が出るまでのつなぎ”と認識されている可能性がある。つまりどこをどう考えても状況は悪くなっているのです。(これについては“本音”で更に詳しく述べます。)

 そうなると我々ユーザーや販売店に取り得る選択肢は大きく2つになります。1つはタカラからは全くカードを買わずに安い英語版を活用し、自分達で Magic を広める。もう1つはタカラから大いにカードを買い、同時にサポートの充実を要求していく。この2つです。ただし前にも書いたように、今後は代理店が市場に対して競技偏重といった余計な介入をしない事が期待できるので、そういう点においては両方の選択肢とも以前よりはやりやすくなるかと思います。タカラがホビージャパンほど Magic の売上や価格維持、あるいは競技推進に固執しないであろう、この事が日本の Magic に良い影響を与えることを切に期待するところです。

○ 関連情報

 本編の最後に、今後日本の Magic の方向性を更に大きく左右するであろう、デュエル・マスターズに関する最新動向を。

 まず日本国内でのデュエル・マスターズの売れ行きですが、今年度の中間決算でタカラは「昨年度並み」という見方をしているようです。2005年3月期・上半期のデュエル・マスターズは、売上が約46億円となっています。(昨年度同期は約41億円。)これに対して今年度通期の見込みは約109億円と、昨年度の110億円とほぼ同額を見込んでいます。つまり現時点で既に“下半期は昨年度よりも多少勢いが落ちるであろう”という予想をしている、という事になります。ただ前の章にも書いたとおり、デュエル・マスターズは売上額の割にタカラに利益はもたらしていないようで、しかも今年度のタカラは通期での赤字決算を既に表明しています。そうなるとタカラが現状のウィザーズ社との契約内容を何らかの形で変えたいと思っているのは間違いなく、今後更にこれに関する動きが起こってくる可能性もあります。

 次にデュエル・マスターズの米国進出について。実はタカラが出した今年度の中間決算資料には、デュエル・マスターズの海外での売上に関しては全く記載がありません。これに関して私の方で少し調べてみた結果、2つの可能性があることが分かりました。1つは「米国でのデュエル・マスターズの売上は100%ウィザーズ社に入っていて、タカラには全くその取り分がない。」という事。もう1つは「米国でのデュエル・マスターズは既に半ば死に体で、メーカーにとって満足な売上を生み出していない。」という事です。デュエル・マスターズの米国展開は今年の3月辺りだったらしいのですが、なんでもブーム化どころか既にゲームそのものが終わりかけているらしいです。 (^^; その理由としては「アニメの失敗」「ポケモンのピカチュウのようなゲーム人気を引っ張るキラーキャラクタの欠如」「遊戯王OCGの模倣品であるという風評」などが考えられるようです。3つ目に至っては誤解を受けている部分も相当ありそうですが。 (^^; ただこうなると今後の挽回もちょっと期待できないかな・・・という感じでしょうか。

 しかも日本国内のデュエル・マスターズに関しても、現在初版〜第4版までの絶版が発表されているそうです。つまり昔のカードセットはもう作らないということです。公式サイトには「カードセットは2年で生産終了・・・」という、なんとも色んなトラウマを呼び起こしそうな文言が書かれております。 (^^; そうなると今後デュエル・マスターズでも Magic の Standard 落ちのような措置が取られる可能性もあり、これがデュエル・マスターズからのユーザー離れの1つのきっかけになることが危惧されます。まさかウィザーズ社が Magic の失敗を繰り返すとは思えないのですが、ただウィザーズ社が Magic を“成功事例”と勘違いしている可能性はかなりあって (^^; そうなると「あ〜あ、やっちゃった。」になる可能性はそれなりにあります。

 遊戯王OCGが日本国内でピークを迎えてから、誰の目にも明らかな不振に陥るまでには、約5年程度の期間を要しています。この傾向は実は Magic でも同じだったりします。そうなると日本のデュエル・マスターズは、今後あと2年ほどは今程度に商売として成り立つかもしれない。 (^^; 現時点ではそう予想されます。ただもしデュエル・マスターズが今の1〜2割なんて売れ行きに落ち込むようなことになると、間違いなくウィザーズ社とタカラが組んで販売する Magic にも影響が出てくるでしょう。今は Magic の不振をデュエル・マスターズが補い、日本の Magic イベントはなんとか維持されています。しかしそれもあと2〜3年で破綻が来る可能性が高い。今はそう考えておいて間違いないです。つまり日本の競技 Magic イベントを維持あるいは拡大したいと思うのであれば、あと2年で誰の目にも明らかな、文字通り Magic が競技イベントを含めて自活できるという結果を生み出す必要があります。しかし現実の Magic は確実に市場が右肩下がり。こうなるとむしろ逆に「然るべき事態に備えて心と懐の準備をしておいた方がいい。 (^^; 」という事にすらなるかもしれません。

あいせんの“本音の部分”

 ある方から「今回のホビージャパン撤退の件で、あいせんさんから出る“勝利宣言”を楽しみに待ってます。」というご連絡を頂きました。 (^^; ただ私個人はその手の勝利宣言を出す気は全くありません。むしろ逆で、個人的には「“敗北宣言”すらあるかもしれない。」と考えています。

 私自身も日本での代理店交代待望論を口にしていた時期がありました。ただそれはいわば“日本のプロ野球界のトップ選手がMLBに飛び出していく”ような状況を想定しての事でした。日本の Magic はこれだけ人気があって売れている。だったらより Magic を真面目に売ってくれる大きな企業が、破格の待遇で Magic を受け入れてくれる可能性がある。そうなればあんなやる気の感じられない出版社にしがみつく必要は無いじゃないか。これが私の持論でした。ところが今は・・・という事です。これじゃあ引退を間近に控えた、どこぞのプロ野球選手みたいじゃないですか。 (^^;;; とにかく自分は現役生活を続けたい。だからどこでもいいからお願いだから俺を使ってくれ。まさにそんな感じでしょう。これじゃあ移籍先での条件が今よりも悪くなることは必至なわけで、さすがに将来の期待感とか展望がないのです。

 少なくとも数年間の間、ホビージャパンに取って Magic は間違いなく“自社の売上の多くを占める主力商品”だったはずです。そういう状況なら販売不振が自社の経営に与えるダメージは大きく、ユーザーの声に敏感に反応して何かをしてくれることが期待できたのです。これが“普通の企業ならば”という事ですが(笑)。まあこの際「それをホビージャパンに期待してもダメだろう。」という突っ込みは無しにしましょうや。 (^^; 実際に日本での Magic 不振が決定的になってからは、あのホビージャパンですらそれなりに必死になって色々な販促企画を立ち上げていたでしょう。ただその時には既に Magic の売り上げが決定的なレベルに落ち込んでいて、ホビージャパンが何かしたくても回せる予算が無くなっていたのです。そこまで追いつめられるまで事態の深刻さに気が付かなかった。これが私には残念で仕方ないですが。

 じゃあ今後はどうなのか。タカラにとって Magic は自社内の1部門に過ぎません。しかも売上の相当部分を稼ぎ出すエリート部門でもなく、むしろ入社早々から色々なトラブルを抱えた問題児なのです。そうなるとタカラの関係者が「1〜2年やってみて、ダメだったらやめちゃえばいいや。」という発想しか持っていない、そういう可能性すらあるのです。これで我々ユーザーがタカラに何か意見を言っても、多分「それだったら、まず君らが自社の Magic を買うことから始めてよ。」の一言で一蹴されてしまうでしょう。つまり“今まで以上に状況を変える事が難しくなった”のです。あまつさえこのまま行けば、タカラとは競技イベントなどを介したユーザーとのパイプも構築できなさそうですし。

 今現在見えている状況を総合的に判断すると、私個人は「日本人ユーザーは、 Magic を“絶対に入れてはいけなかった領域”にまで追い込んでしまった。」と考えています。ちょうどハドソンが FutureBee を不採算部門として整理・縮小しようとしている、まさにそういう状況に Magic そのものが追い込まれてしまったのです。この状況を以て“勝利宣言”を出す人間がいたら、そりゃあ単なるバカですよ。 (^^; ただし世の中には、そういう不採算部門から奮起して大飛躍を遂げた方々も大勢います。要は日本の Magic にそれだけの偉業を成し得る覇気が残っているのか否か。実は日本の Magic がその真価を問われるのって、むしろこれからなんじゃないだろうか。私個人は今でもそう信じていますし、それが実現するように自分ができることをやっていこうとも考えています。

   

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