続・初心者が書くモノポリー論
~ 第2章:モノポリーの交渉 ~
 
 
 今回は、モノポリーの“交渉”について書いてみます。

 「モノポリーの交渉は複雑怪奇で意味不明である。」これは多分モノポリーをそれなりに経験された方、特に中・上級者とのゲーム経験がある人ですと如実に感じていらっしゃるだろうと思います。定価が$200である同じ物件が、ある時は普通に$250で売られ、ある時は$400+αで引き取られ、またある時は$100足らずで買い叩かれる(笑)。あるゲームでは超人気だった物件が、次のゲームでは競売にかけられ誰かが渋々買っていく。実際モノポリーの世界ではこんなのは当たり前の話なのですが、多くの方々には理解しにくい世界だろうと思います。はっきり言いますが私も未だに理解できていません(ぉ。この部分がある意味でモノポリーの“ダイナミックさ”であり“最大の魅力”な訳ですが、逆にそれがモノポリーの“敷居の高さ”であり“(ユーザー増を妨げる)最大のネック”とも思われます。 (^^; 

 ただ、最近私個人は「そもそもモノポリーの世界に“相場”なんて物は存在しない。」という結論に至っています。これはモノポリー上級者の方にも同様のご意見を唱える方がいらっしゃるようですし、実はこう考えるとモノポリーの交渉ってかなりスッキリと見て取ることができたりします。例えば誰かがオレンジの物件を2つ揃え、同時に別の物件を幾つか持っていたとします。その物件の中に自分が欲しい物があって、幸いなことに残る1つのオレンジを持っている。そこでどうするかというと、こういう交渉が行われるのです。

「自分はその物件が欲しい。君にオレンジを経営させてあげるから残りをよこしなさい。」
「じゃあ自分はオレンジを経営します。ただし自分はそれなりの資産を持っているので、家を9軒建てられない状態でスタートするのは嫌です。」
「9軒はちょっと多すぎる。せめて8軒にしてくれ。」
「そういう君だって別の色の経営を始められるじゃないか。しかも家だってそこそこ建つ。その位の要望は聞いてくれ。」
「分かった。」
「じゃあ君のオレンジの物件をもらい、家9軒分のお金を自分の手元に残す。後は全部渡します。」
 ・・・どうでしょう。この交渉で「この人が過去にオレンジをいくらで買ったか?」なんて話は見ちゃいないのです。当然このお話には幾つもの付帯的情報が存在します。お互いの所持金が今いくらで物件は何を持っているのか。お互いの駒がどこにあって、今後当面の間にどういう危険が予想されるのか。あと相手から過去に自分がいくら巻き上げられたか等など(笑)。ただそういう要素が幾つもあるとは言え、最終的に見ているのは「その交渉によって自分はどういう姿になりたいのか。また相手をどういう姿にしたいのか。」だけなんですよ。で、恐らくモノポリーにおいて交渉が下手な人というのは、多分「相手をどういう姿にしたいのか」というビジョンが無いか、あるいは自分が絶対的に有利になる状況しか頭に思い描かない人なんじゃないかと思います。ちなみに最近私はどうしているかというと、基本的には「相手をどういう姿にしたいのか。」から話を始めることにしています。例えば交渉で相手の物件を手に入れて自分がどこかの経営を始めるにしても、まずは「そんな物件1つ抱えていてもしょうがないので、この物件と交換して他の人との交渉の材料を手に入れませんか?」という形で話に入ることにしています。私はその物件が欲しいのだから、交渉の結果として相手が得をしても別に構わないのです。またそういう交渉を成立させた時に起こる、周囲からの「おいおい、そんな交渉普通やるかね。」といった反応を聞くのも私個人は結構好きだったりします。この辺はかつての「その牛姉よこせ~!」的なトレードと、やってる事は何1つ変わらなかったりするのですが。 (^^; 

 これを私が書いてしまうのは問題があるかも知れないのですが、実を言うと私個人は、それこそ第1章に書いた「モノポリーというゲームにおいて、盤上の物件すべてを独占するという行為に、それ程面白さや意義を見出せない一般人。」の1人だったりするのです。 (^^; その理由は簡単で、結局のところモノポリーの勝敗って、最終的には“サイコロの出目次第”だったりするからです。そういう意味において私個人には、モノポリーよりは対戦格闘ゲームにおける対戦での勝利の方が、ゲームでの勝利という価値的には高かったりします。1戦の時間が決定的に短い割には充足感があるし、その中に自分の腕で勝ったという優越感が得られる試合も少なくないからです。あ、そういう点ではTCGも今は個人的に勝利の価値はかなり低いです。私みたいな温めの遊び方しかしないユーザーですと、結局はカードの引きという運でかなりの部分が左右されちゃいますので。勝った喜びを味わうのに必要な事前投資が多すぎるのも問題かな。1つのゲームに1時間とかそれ以上の時間を使うのに、そこで得られる成果が“勝ったというフラグを立てた喜び”しかない。そんなゲームはやはりクソゲーだと断言して構わないでしょう。ただ私自身はモノポリーをクソゲーだとは思っていない。もっと正確に言うと“自らの言動でモノポリーをクソゲーにはしたくない”ので、できるだけ1つのゲームの中に多くの面白さや意義を盛り込みたい訳です。

 そう考えると、私個人のモノポリーへの取り組みというのは、いわゆる“競技モノポリー”と言われる世界でのアプローチとは自然と異質な物になります。私が交渉の際に何よりも重視するのは、その交渉によってどれだけそのゲームが盛り上がるかなのです。ですからそのゲームが盛り上がる方向性に進んでくれるのであれば、別に私は交渉した相手が大きく得をする交渉でも構わないし、結果としてそれで交渉相手がゲームに勝ってしまっても問題ないのです。ただし、それ故逆に「この相手とは絶対に交渉はしない。」というケースも時々起こります。そしてそれで私が勝機を逸してゲームに負けてしまっても、私は別にそれで構わないのです。ここのコンテンツを熟読されている方はお分かりでしょうが、私は“嫌なものは嫌”とはっきり分かる行動を取る人間ですので。そういう点において私の言動はかなり露骨です(笑)。

 これはほぼすべての他人数型ゲームに言えるだろうと思うのですが、ゲームの中に自分の事だけしか考えられないプレイヤーが1人でも関わると、そのゲームを面白くするとか盛り上げるというのはかなり難しくなります。ましてやモノポリーのように、プレイヤー個人の発想や思想が交渉という形で直接的にゲームに反映されるケースでは、まあはっきり言ってゲームは全く進まないか、何かの事故によって自力で物件を揃えてしまったプレイヤーの独走を誰も止められないのです。ただ例えば実生活におけるお店とお客さん、あるいは企業同士のやり取りを見てもそうですが、そういうケースにおいて常にどちらか一方が得をしている事例など多分ほとんど無いのです。そして“情けは人のためならず”という言葉があるように、相手に得をさせることは結果として自分にも良いことがある場合が多いのです。そういう実社会の常識みたいな物を疑似体験できるという点で、モノポリーの交渉というのは結構面白い物だったりします。自分だけが儲けようなんて商売や交渉をする個人や組織は、結局のところ満足に儲けを出せずに市場から姿を消す運命しか持ち合わせていないのですよ。

 これは一部のモノポリー関係者の間で出た意見なのですが、要約すると「モノポリー未経験者や初心者にモノポリーでの交渉の楽しさを教えるには、実際に交渉をまとめてその人に物件を経営させ、そこを別の誰かが踏んづけて大金を置いていく、そういう経験を実際にさせるしかない。」という事です。これについては私個人も同意見です。ただそこで忘れてはいけないのは、その交渉をそれこそプロセスの部分から面白い物にする事は可能だし、我々のようにモノポリーを人に勧めたいと欲する経験者は常にそれを心がけるべきだろうと思います。対戦相手も人間であり、そのゲームを楽しむためにそこに来ている。こんなごく基本的なお話を分かっていないゲームの世界が世の中にはあまりにも多いですし、そしてそういうゲームはやっぱり売れないのです。一度ご自身の交渉が相手にどういう印象を与えているか、それを第三者的な視点で冷静に分析してみるといいかも知れません。少なくとも自分と相手が逆の立場になった時に「こんな条件飲めるか!」とか「こんな高飛車な態度で人に物を頼むかね?」等と思われる交渉をやっている限り、あなたの周りでモノポリー仲間が増えたり、ましてやあなたが実社会で大きな信用を得ることは決してないでしょう。

   

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