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続・初心者が書くモノポリー論 ~ 第1章:モノポリーの面白さ ~ | ||
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今回は単刀直入に本題に入ろうと思います。これはモノポリーを一度でも遊んだことがある方全員に伺ってみたいのですが、皆さんはモノポリーというゲームにおける、ほぼ唯一の勝利条件となる“盤上の物件すべてを独占する”という行為に、果たして“面白さ”や“意義”といった物を見出されているでしょうか。これはあくまで私個人の印象ですが、この問に対する答えとして「Yes」よりも「No」を返す人の方が、少なくとも日本国内では多数派ではないかと思います。これをもっと端的に言うと「モノポリーの面白さは盤上には無いのかもしれない。」という事です。モノポリーというゲームの盤面、パーツ、あるいはルールの中に、モノポリーを全く知らない人が一目見て「これは面白そうだぞ!」と思える要素というのは、私に言わせると実はあまり無かったりするのです。そしてモノポリーがある一定の知名度を持ちながら、しかし他のゲームに比べてそれ程大勢に遊ばれているゲームではない。もっと正確に言うと“ユーザーやファンの獲得や定着に難儀している”大きな理由も多分そこにあるのです。
そして更にモノポリーには大きな問題があります。囲碁や将棋といったゲームは、遊び手自身が定跡(定石)を覚えてうまくなることで進化し、そこから面白さを見出してのめり込める要素を持っています。詰め将棋(囲碁)や定跡(定石)の研究という形でコツコツと一人でうまくなることも可能です。しかしモノポリーにはそれもありません。平たく言うと「詰めモノポリーとか交渉の素振りなんて練習方法はない。」という事です。滝に打たれながら目の前の岩に向かって「そのオレンジを出して下さい。」と10万回唱えてみたところで、それで交渉術がうまくなってモノポリーが強くなるなんて事はあり得ないのです。 (^^; しかも世の中には元々性格的に交渉とかディベートが苦手な人は数多くいらっしゃいます。普通に人と話すのが苦手な方ですら大勢いるのです。そういう人達に「モノポリーは交渉にこそ面白さがある。」と言えば、そこで返ってくる反応は「あ、そのゲームは自分には向かないですね。」でほぼ決まりなのです。
そこで「それでも多くの人達にモノポリーを遊んでもらうには・・・」という問題を考えた時に、我々モノポリー経験者には幾つかの手段が思い付きます。まず将棋で言う周り将棋や挟み将棋(囲碁で言う五目並べ)のように、本筋とは全く別の簡単なゲームをモノポリーのゲームパーツで作って遊んでもらうという方法です。しかし例えばこのゲームがもの凄く面白くて世に広まったとしても、実際世間に「私は挟み将棋は遊んだことがあるけど、本将棋は駒の動かし方すら知りません。」という方が大勢いらっしゃるように、恐らくはその簡単なゲームが世に広まって話は終わりです。 (^^; あと「すごろくや人生ゲーム的な、交渉の要素を極力排除したモノポリーを遊んでもらおう。」という発想もあるでしょう。でもそれだったら、最初からそういう発想で作られているすごろくや人生ゲームを遊んだ方が話が早いのです(笑)。わざわざモノポリーの盤を使って人生ゲームを遊ぶ理由はないですし、それではモノポリーの何がどう面白いのか、いよいよ理解されないまま事が進んでしまいます。ただしモノポリーが商品として売れて流通や消費者からの注目を浴びるという結果は作れそうなので、それを本編のモノポリー普及に役立てられれば・・・というところでしょうか。
これは前から言っている意見ですが、ゲームは面白いから遊ばれる物です。そして我々はゲームに関して無意識のうちにコスト・パフォーマンスを計算しながら遊んでいると思います。このゲームは自分が費やした時間や資金に対して、どれだけの楽しみを提供してくれているのか。そのコスト・パフォーマンスが高いゲームは取っつきが良くて長続きするでしょうし、逆は・・・という事です。世の中で売られているゲームをよく見渡してみると、やはりコスト・パフォーマンスの高いゲームは売れるし、低いゲームは売れないように仕組みができています。で、これはあくまで私個人の印象なのですが、どうもモノポリーというゲームは「特に初期段階の時間的投資に対するコスト・パフォーマンスが宜しくない。」という気がします。世の中にはこれだけ数多くのゲームが存在します。それなのに遊び始めの数時間の間に「このゲームは面白いぞ!」とユーザーに感じさせることができないゲームは、やはり“一般受けしない”と言い切ってもあながち間違いではないのではないでしょうか。加えてモノポリーには、最初に遊んだ相手が誰かという運・不運の要素まであって、しかもモノポリーは多人数ゲームであるが故に、この運・不運の要素が決して無視できない問題になっているはずです。実際に他でもそういう形で普及や販売において苦戦しているケースが山ほどあります。例えばゲームシステムが複雑化&肥大化して未経験者&初心者お断り状態になっている最近の対戦格闘ゲームもそんな感じですし、私がよく取り上げる某トレーディング・カードゲームもまさにその典型です。
じゃあ、それでもモノポリーを世に広めたいと思った時に、我々には一体何ができるのか、という事です。未経験者に遊ばせても、すぐには楽しさを感じてもらうことができない。そういうゲームを売り込みたいと思ったら、まずはその前段階、すなわち“遊んでもいない人達に面白そうだと思わせる”事だろうと思います。モノポリーは一時期、モノポリー協会会長である糸井重里氏がマスコミで話題にしたことで、日本国内での売上を伸ばした歴史があると伺っています。それはつまり「ああいうインテリな人が面白いと言って遊ぶゲームなんだから、きっと面白いに違いないんだろう。」という形で多くの方々の興味を引いたのだろうと思います。そういうアプローチをすべてのモノポリー関係者が心がけるべきだ。これが私個人からの提案になるかと思います。極端な話、今流行のゲームのイベントにボード持参で乱入する位の覚悟はいるよ、という事です。 (^^; そういう点では我々もまだまだ取り組みが甘いですが、しかし我々が開いたTCGイベントの参加者のうち、今や相当数がモノポリーを経験してくれています。現状のモノポリー人口の母数が少ないということは、逆に言うとそれを倍にするのもそんなに難しい話ではないということです。実際に日本における某輸入物TCGはそうやって広まった歴史を持っていますし。
あと私は実社会でも販売の仕事に従事しています。こういう仕事をしていると、例えば“他店と全く同じ商品を、他店よりも高い値段で、それでもお客さんに納得して買ってもらう。”という場面が幾度となく出てきます。我々はそれができないとご飯が食べられないのです(笑)。「そういう実生活で役立つ話術がモノポリーで磨けるぞ!」なんて事は間違っても言いません。 (^^; ただゲーム上での経験が実生活に全く役に立たないかというと、実はそうでもないのです。これは逆もまた言えます。例えばの話、モノポリー初体験の人にあからさまに有利な交渉を持ちかけ、結果としてその人をゲームに勝たせてしまう。そういう接待ゲーム的な物もモノポリーですと可能だったりします。ただし最終的にはサイコロの目次第なので、それでも100%勝てる保証はなかったりするのですが。右も左も分からない初心者を、いかにしてゲームに引きずり込んで楽しませるか。それでそのニューカマーさんに「もう1戦やりましょう。」と言わせることができたら、自分的にはこのゲームは勝ち。そういう発想が必要なのだろうと思います。
実を言うと私自身は、ここしばらくモノポリーのゲーム上での勝利からはかなり無縁な状態です。今年の北陸大会の前日祭と本戦においても、6~7ゲームやって一度も勝っていません。しかし私自身はその2日間の間、正直な話「今までの中で一番モノポリーが楽しめた時期だった。」と断言できます。いや、ひょっとすると私はそのゲーム中にモノポリーなんかやっていなくて、実はモノポリーというゲームを題材にした“雑談”で盛り上がっていただけなのかも知れません。この表現そのものには問題があるかも知れないですが、モノポリーの真の面白さって私に言わせるとその雑談の中にこそあるのです。だとすれば、我々が自身の言う「モノポリーは面白いよ。」という文言に説得力を持たせようと思ったら、何よりも我々には“モノポリーを題材にした面白い雑談ができる”というスキルが求められるのではないでしょうか。
モノポリーというゲームは、幸か不幸か基本的なゲームシステムにはほとんど手が加えられずに歴史を重ねることができています。新商品で何とか話題をつないでいる多くのゲームが、その反動でユーザーにノウハウの蓄積をさせる事ができず、結果として軍拡競争に疲れてリタイアするユーザーを続出させている。そういう不幸な状況からは無縁な立場にいます。しかし同時にモノポリーが囲碁や将棋ほどの知名度や認知を日本国内で得ていない。これもまた現実だろうと思います。そういう状況にユーザー1人1人ができることは何なのか。それは実を言うと“自分が面白い人間になる”事だったりするのです。あなたが面白い人間になれば、あなたが参加したモノポリーのゲームは絶対面白い物になるのです。そしてそういう人間に近づくために自分を磨く道具として、実はモノポリーというゲームはかなりの戦力になるだろうと私は感じています。自分達がモノポリーを楽しく遊べる人間に成長し、その様子をできるだけ多くの人達にまずは見てもらう。実際にやってみるとなかなか難しいのですが、しかしその経験は必ずや自身の成長とか実社会での活躍にも、大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。