| 企業情報の穿った読み方 | ||
2004年3月期決算において、日本の MAGIC:the Gathering 総代理店であるホビージャパンが大幅な売上減となったようです。過去の経緯から推察すると、やはりこの最大の要因は Magic の販売不振によると思われます。では我々はこの状況をどう理解し、また今後どう動けばいいのか。今回はその辺を私なりの視点で書いてみます。ただしタイトルにもあるように、この事例に関する私の見方はかなり穿っており、基本的には「ざまあみろ!」的な視点でコメントしている事を事前にお断りしておきます。 (^^;まずは何よりも、以下のデータをご覧下さい。
| 会計年度 | 売 上 額 [億円] | 経常利益 [億円] | 申告所得 [億円] | 申告所得が 売上に占める比率 [%] |
| 1997年3月期 | 48.0 | 3.80 | 4.59 | 9.56 |
| 1998年3月期 | 56.0 | 4.20 | 6.17 | 11.01 |
| 1999年3月期 | 97.0 | 7.99 | 14.43 | 14.87 |
| 2000年3月期 | 64.0 | 5.37 | 8.42 | 13.15 |
| 2001年3月期 | 79.0 | 6.29 | 10.50 | 13.29 |
| 2002年3月期 | 80.0 | 12.32 | 12.36 | 15.45 |
| 2003年3月期 | 55.0 | -0.20 | ???? | ???? |
| 2004年3月期 | 30.3 | 2.82 | 5.39 | 17.78 |
いつも同時にご紹介しているポストホビーのデータについては、今回は最新の物を手元に取得できなかったため割愛します。ただ2003年7月期決算におけるPHの売上は、その前年度からはほとんど変わっていません。つまり今回のHJの売上減は、それ以降に発売された商品、すなわちミラディンサイクルの大幅な販売不振に起因する物と推測されます。あと前回のエッセイ執筆時は不明だったHJの2003年3月期の経常利益ですが、最新のデータによると“2千万円程度の赤字”だったようです。ですから少なくとも日本国内において Magic は、ここ2年ほど特に厳しい販売不振にあえいでいると考えて良いかと思います。ただし以前から書いているように Magic は遊戯王OCGやデュエル・マスターズといった国産TCGの成功例と比べると、元々そんなに売れているわけでもないのですが。あと考察に入る前に、1つ2つお断りしておかなければいけない事があります。まず1つ、確かに昨年度のHJは一昨年度に比べて約45%近い減収になったのですが、ところが経常利益の方は一昨年度の赤字を脱却して約3億円近く上げています。もっと言うと申告所得は5億円以上あって、これは所得に占める比率として見ると過去最高だったりします。つまりHJは“そういう少ない売上から利益を上げられる体質の企業になった”という事になるだろうと思います。ですから日本国内での Magic の販売が更に落ち込んでも、それでHJという企業がどうにかなるという事態はまず起こり得ない気がします。 (^^;
あと「じゃあHJの売上に占める Magic の比率はどの位なんだ?」という問題です。これについて明確な資料があるのは1997年3月期のみで、当時の比率は約50%でした。ただHJ出版物の販売部数はそれ程大きく変動しているという印象が薄そうなので、今でも出版部門は10億円代後半〜20億円台の売上を維持していると考えてもいいかと思います。(今年の秋に社団法人・日本雑誌協会が発表している雑誌の発行部数が実際の販売部数に変わるという話があるので、そのデータが発表されると詳細な推察ができるかも知れません。)そうなると残る Magic の売上は約10億円〜15億円程度という試算が出てきます。ただし最近のHJは経営を多角化しており、その分の売上を含めると Magic の比率は更に減る可能性があります。ですから実際には数億円程度しか売り上げがない可能性すらあるのです。HJが Magic を扱い始めた初年度に Magic だけで24億円を売り上げていることを考えると、この事だけで日本の Magic は明確に「市場が大幅に縮小した」と断言しても支障はないでしょう。
さて、では本題に入ります。この売上の推移をこういうデータと付き合わせて見ると面白いかと思います。
| 年 度 | 構 築 戦 | 限 定 戦 | ヴィンテージ | 合 計 | 1999年との比較 |
| 1999年度 | 1538(1604) | 911(970) | 13(13) | 2462(2587) | −−− |
| 2000年度 | 2293(2416) | 2071(2136) | 12(19) | 4376(4571) | 177% |
| 2001年度 | 3203(3369) | 2677(2774) | 10(12) | 5890(6155) | 239% |
| 2002年度 | 3841(4640) | 2580(2847) | 8(9) | 6429(7469) | 261% |
| 2003年度 | 4688(6444) | 3354(4006) | 10(13) | 8052(10463) | 327% |
今回このエッセイを書くために、認定トーナメントの開催数を年度別に改めて取得してみました。また括弧内の数字は、認定トーナメントを“All”指定で検索して得られた数です。通常、実際に認定トーナメントとして登録が完了した物は“Rated”指定で検索します。つまりこの差というのは「認定トーナメントがどの位の数フィズったか」を示すことになると思われます。具体的にどういう理由でフィズったかまでは分かりませんが。・・・それにしても、認定トーナメントの数は意味不明な急カーブで増え続けてますね。 (^^; ただこのデータを売上と照らし合わせてみると、少なくともHJに取っては好ましい状況とは言えないだろうと思います。例えば仮にHJが認定トーナメント1件につき1000円程度の事務経費を使うとすると、現在HJは年間1千万円ほどの経費を認定トーナメント維持のために負担している計算になります。そりゃあ Magic の売上が50億円もあって数億円の粗利が得られている頃ならともかく、年間の売上が数億円でそこから原価と諸経費を差し引くと・・・なんてゲームに、それだけの負担を負うのは厳しいのではないかという気もします。実際最近になって「HJ関係者が一部プレミアイベントの開催に消極的、あるいは批判的になっている。」という話も伺っているのですが、普通に考えるとむしろ気が付くのが遅い位なんですが。 (^^;
しかもこのデータを見ると、最近の認定トーナメントがかなり乱造・乱発状態ではないかと思われる節があります。何しろ認定トーナメント全体の23%以上が、何らかの理由でフィズっていると思われる状況ですので。アリーナリーグやFNMで認定トーナメントの数は増えているが、実際には参加者不足で認定にならなかったイベントが多々ある。このデータはそういう巷での噂話を図らずも裏付ける形になっていると思われます。あと開催された認定トーナメント1件当たりの参加者も、昔に比べて減っているという話があちこちで聞かれます。そうなると件数的には3倍以上でも、果たして実際に獲得できている動員が増えているのか、ちょっと疑ってみる必要があるでしょう。
ここで1つ言えることは、私がそれこそ大昔から口を酸っぱくして言ってきた「競技 Magic 推進は Magic の拡販には結び付かない」という仮説が、このデータによって客観的に証明されたということです。これに関しては申し訳ないですが、もうどなたの反論も言い訳も私は聞く耳を持ちません。だってこれだけはっきりデータで証明されているのですから。本来競技 Magic とは“ Magic を楽しんで遊んでいる人達によって支えられている選択肢の1つ”だったはずです。それがいつからか“ Magic を支える大きな柱”になり、更にどういう訳か“ Magic 最大の売り”になり、そして今では“ Magic にとってほぼ唯一のセールスポイント”になってしまいました。ただ競技 Magic の敷居の高さというのは皆様既にご存知の通りでして、そんな物に気軽に手を出す、あるいは出せる人がそんなに大勢現れるはずもなかったのです。また一部の国産TCGが“萌え”で売り込み、そういう状況を多くの Magic プレイヤーが嫌った。でも Magic にはその“萌え”や、それに代わる売りすら無くなっていて、そもそも世間の興味や関心を引けなくなってしまっていた。まあ実態はそんなところだろうと思います。
あと少なくとも私個人が伺っている範囲では、競技プレイヤーの間でミラディンサイクルというのは非常に評価が高いカードセットではないかと思います。 Standard 構築フォーマットにおける依存度も高いはずですよね。しかし実際にはユーザーに買ってもらえていなかった。この競技プレイヤーとTCG市場との認識のズレみたいな物が、今日における Magic の衰退局面、あるいは Magic が“そもそも現状を衰退と呼べるほどヒットした歴史を持てなかった”大きな要因だという気がします。現在行われている基本セットの人気投票にしても、カードの内容を決めている側と実際に買う側の意識のズレは間違いなくあるでしょう。だって競技プレイヤーは今更基本セットなんて買わないのでしょうから。そういう“何でもかんでも競技プレイヤーの言うことを聞いて仕組みを決める”という Magic の体質が、それ以外の嗜好を持ったプレイヤーの Magic 離れを招いてしまった。これが現時点での私個人の見解です。
ちょっと更に言いたいこともあるのですが、それはもう少しWoC関係者の出方を待ってからにします。ただですねえ・・・こんな状況でそれでも来年以降、やっぱり日本選手権の賞金総額は維持されちゃったりするのでしょうか。そうなると私なんかは「なんだ、HJの売上が苦しくなればなるほど Magic のサポートは良くなるじゃないか。だったらHJ経由のパックなんか1つも売れない状況にすれば、プレミアイベントの無料化とか販促用パックのばら蒔きすら実現するかもよ。」とか思っちゃうのですが。 (^^; 現在のような右肩下がりの低迷状態に対して何も対策を講じなければ、間違いなく日本の Magic は10周年を迎えることなく市場から姿を消すことになるでしょう。WoCは神河物語や世界選手権の日本開催などで日本市場のテコ入れを画策してはいるようですが、さすがにこれだけユーザーが離れてしまったゲームにそれで人を呼び戻せるのか、私個人はかなり懐疑的な見方をしています。7年かかってできなかったことが、ここ1〜2年で急にできるとは普通は思えないですから。まあそれこそ人身刷新して一から出直す覚悟で事に当たれば話は別かも知れませんが。
資料検索時にメールが届かなかったポストホビーに関する資料が、今日になって届きましたのでご紹介しておきます。PHの業績もここ2年は大きく落ち込んでいます。そうなると両社の業績不振の主要因は、やはり両社が共通して取り扱っている Magic にあると考えて間違いないかと思われます。
| 会計年度 | 売 上 額 [億円] | 経常利益 [億円] | 申告所得 [億円] | 申告所得が 売上に占める比率 [%] |
| 1997年7月期 | 38.5 | 3.00 | 6.45 | 16.75 |
| 1998年7月期 | 52.0 | 4.00 | 7.59 | 14.59 |
| 1999年7月期 | 67.0 | 5.00 | 12.89 | 19.23 |
| 2000年7月期 | 72.8 | 8.00 | 12.08 | 16.59 |
| 2001年7月期 | 77.3 | 8.10 | 18.45 | 23.86 |
| 2002年7月期 | 51.8 | 1.32 | 1.45 | 2.79 |
| 2003年7月期 | 50.0 | ??? | ??? | ??? |