| ガンプラのお話 | ||
多分ここに来られる多くの方に“ガンプラ”という言葉を改めてご説明する必要はないかと思います。ガンプラとはガンダム関連のプラモデルを指す総称で、今やホビー界ではすっかり定着した用語、あるいは文化と言ってもいいだろうと思います。おもちゃ屋にとっては大きな収入源(あるいは集客源)でしょうし、ホビーファンの多くが今も楽しんでいるジャンルのはずです。では、ガンプラはこの問題をどうやって解決し、そして20年以上売れ続ける商材であり続けたのでしょうか。ガンダムの歴史はかれこれ25年を越えているのですが、ガンプラの歴史も20年を越える文字通りの超ロングセラーとなっています。しかしガンプラもやはり“おもちゃ”である以上、過去に発売された幾数多のおもちゃと同じ問題点を抱えていたはずです。今回はその中で、特におもちゃの寿命を決める要素となる、次に挙げる2つの“矛盾する問題”を考えてみます。
☆ 矛盾する問題:その1
“1つの商品はいずれ飽きられるし、やがて市場は飽和する。(同じ物がいつまでも売れるものではない。)”☆ 矛盾する問題:その2“新しい物のクオリティが前よりも低ければ、結果として市場は冷え込む。(新作に失望したファンが逃げ、結果として市場が維持できなくなる。)”
“コア・ユーザーは、前よりも更に高度な物や、強い刺激を新作に求める。(前と似たような物を出しても昔からのファンは買わない。)”“過度に複雑な物や刺激の強すぎる物は、未経験者やライト・ユーザーを市場から遠ざける。(ニューカマーの供給無き業界は、市場の拡大はおろか維持すら難しくなる。)”
まず“その1の矛盾”に対するガンプラの答え。それは「ガンプラはあくまで同じ物を売り続け、同時に誰の目にもクオリティのアップを実感できる新製品を開発し続ける。」という物です。実際我々はそれこそ創生期の頃のガンプラを今でも入手できますし、同時にそれとは明らかにクオリティの増した新製品も入手できるようになっています。その1つの象徴が“HG→MG→PG”というガンプラ商品の劇的な進化です。私自身はZZガンダムが好きで、それこそこのシリーズを実際に一通り自分で作っています。私はHGを作った時点で「プラモデルとしてこれ以上のクオリティは成し得ないだろう」と思っていたのですが、MGを買って組み立てた時には正直顎が外れました。 (^^; その進化は文字通り誰の目にも実感できる圧倒的な物であり、それ故我々は同じモビルスーツのガンプラをいくつも買わされ続けるのです(笑)。もし間違ってPGのZZガンダムなんて物が出たら、私はそれこそ泣きながら福澤さんを何枚か握りしめておもちゃ屋に出掛けることになるでしょう。 (^^;
「そこまでクオリティの高い新製品が出るのであれば、もう旧作を出す必要はないだろう。」・・・いや、そうじゃないんですよ。旧作のガンプラはそれこそ300円なんて値段で買える代物で、今もその値段は変わっていません。開発や金型製作のコストを既に過去の売上で回収している以上、昔のガンプラは値上げをする必要はないはずですので。例えばガンプラをお小遣いで楽しんでいる子供がいたとします。この子は当然持っている資金に制限があり、欲しいガンプラが全部買えない場面が数多くあったはずです。しかしやがてその子が社会人になってお金に余裕ができて、ある日何気なくおもちゃ屋に行ったら、自分が昔好きで作ったガンプラと同じ物がお店に積まれている。そこで「それなら今日は、あの時買えなかったこれとこれを買うぞ。」と決断する事には何の不思議もないのです。確かにおもちゃは、数ヶ月あるいは数年単位のレンジで考えると“同じ物は売れなくなる”のです。少なくともおもちゃは生活必需品ではないのですから。しかしこれを10年なんてレンジで考えると“同じ物が繰り返し売れる可能性は十分にある”のです。そしてガンプラはそれを成功させたまさに典型なのです。
次に“その2の矛盾”に対するガンプラの答え。それは「初心者から上級者まで楽しめるラインナップの充実」という物です。少し前からガンプラは接着剤無しで組み立てられる物が主流になっており、今や塗装済み可動品なんて物まで出ています。(いわゆる MS in Action!! シリーズをガンプラに含めるかどうかは諸説あるでしょうが。)これはやまけん氏が言っていた意見なのですが、要するに「我々にはきれいなガンプラが作りたくて、でも技巧がない等の理由で断念した経験があるはずだ。しかも社会人には今からそういう技巧を磨くための時間も乏しい。そこに手頃な値段できれいに完成されたガンプラが発売されて、我々が買わない理由などどこにもない。」という事です。これをTCGに例えると“トーナメントで楽々上位入賞が可能で、しかも自分が一番好きなカードを主力にした構築済みデッキを、メーカーが自ら作って売っている。”という状況なのです。これなら多くのファンが何の迷いもなく買うでしょう?
そしてそれと同時に、ガンプラには今でも“作る楽しみ”が満載です。創生期のガンプラを買って造形や塗装を工夫してきれいに仕上げる。そういう楽しみ方が今でもなされているはずです。塗装が苦手なら、ちょっと奮発してクオリティの高いモデルを買えば大丈夫です。ストーリーの場面を再現する。自分オリジナルのモデルを造る。とにかくきれいに仕上げる。いろいろな楽しみ方があります。しかもガンダムには未だにアニメやTVゲームによって話題が提供され続けていますから、同じプラモデルを作るにしても他のジャンルに比べて感情移入しやすいのです。そういう楽しみ方が、自分の予算や都合に合わせて楽しめる。これなら趣味として末永く楽しめるでしょう。
ここに挙げた“ガンプラが成功した理由”をよく吟味してみると、例えばTCGの世界では不可能であると言われてきた事が実現されているのが分かります。「同じカードセットは何年も売れ続ける物ではない」「新作を出さないとTCGの売上は維持できない」これはガンプラの事例を見る限り明らかに間違いです。私に言わせると、それはTCGメーカーが自社製品を短いレンジでしか見ていない証拠です。確かにお客さんをお店に招くという意味で、新作の話題は必要になるでしょう。しかしその新作に“旧作に比べて誰の目にも明らかなクオリティのアップ”が見られなければ、逆にその新作がお客さんをゲームから遠ざけてしまう。これは過去にあった幾つかのTCGの事例を見ても明らかです。そしてファンというのは昔の商品にも思い入れがあって、やり方次第ではいくらでも商売として維持できるのです。やはりTCGといった他の業界は、こういう真の成功事例を学んで本気で生まれ変わる努力を今からでも始めるべきでしょう。私に言わせると、実は“ガンプラほど楽して儲けている業界は他にはそんなにない”と思います(笑)。楽して成功しているおもちゃがある一方で、苦心惨憺あれこれやって失敗している業界がある。そんなのバカらしいと思いませんか?
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最近TCGの業界では「 Magic が一時期の不振から多少持ち直している。」というご意見が聞かれるようです。私自身はこの心証に関して、それを肯定する情報と否定する情報の両方を持っています。じゃあ Magic はなぜ持ち直したと言われるのか。インターネット上などで色々と情報を集めた結論として、私はそれには大きく2つの理由があると推測しています。 1つは“ Magic のセカンドTCG化”という現象です。遊戯王OCGやデュエル・マスターズを遊んできたプレイヤー達が、次にと言うかついでに遊ぶTCGとして Magic を選んでいる。簡単に言うとそういう事です。ただこの現象は、必ずしも Magic パック売上の劇的な回復にはつながっていないようにも見受けられます。彼らの多くはお店がシングルカード用に開封したパックから出たコモンカードの山からカードを吟味し、既存のフォーマットに拘ることなく Magic を楽しんでいるようです。ひょっとするとフレッシュパックをほとんど買わずに Magic を楽しんでいるプレイヤーも相当数いらっしゃるかも知れません。言い換えると“コモンカードの山というカードプールがあるから彼らは Magic を楽しめる”という事になるでしょう。しかし残念な事に、今の Magic には“そういうプレイヤーにパックを買ってもらう動機付け”ができていません。かつてWoCが北米や欧州で Pok?mon やハリーポッターTCGのプロモーションに失敗した、まさにそれと同じ事が日本で起こっている訳です。従ってこれによって Magic の売上が持ち直しているかどうかは、私個人は少し懐疑的な見方をしています。 もう1つはズバリ“ Magic の麻雀化”です。もっと平たく言うと「カードや現金を賭けて遊ぶ Magic が普及した。」という事です。個人的には最近の Magic の持ち直しは、実はこの要素の方が影響として大きい気がしています。賭け Magic はマネドラ(マネードラフトの略)とも言われ、文字通り毎回フレッシュパックを使って遊ぶ物だからです。プレイヤーがお店でパックを買って、デュエルルームで賭け Magic に興じる。そういう様子は少し前からあちこちの個人サイトで日記などに紹介されています。今やプレミアイベントの会場にも、それ目当てで出掛ける方は少なくないんですよね。つまり Magic の世界では“それが当たり前になってしまった”のです。まあこれならある一定の&安定した売上は常に期待できるでしょう。だって日本国内には、それこそもの凄い数のパチンコ屋と、それを上回る数の雀荘があって、両者がちゃんと経営を維持しているんですよね。私が前から言っている“博打は胴元が一番儲かる”というまさにあれです。 (^^; ただどうでしょう。もし最近の Magic が賭事を1つの起爆剤としてその勢いを取り戻したとしたら、そんなゲームがこのまま若年齢層のプレイヤーにも遊ばれ、広く普及・浸透できるのでしょうか。それは小中学生に「麻雀って面白いから遊んでみない?」と言っているのと何ら変わりません。今や多くの業界関係者がそういう状況を黙認しつつあるように私には見受けられるのですが、そんな状況がこの先ずっと維持できるとは私には思えません。いずれはこの2つのどちらかに決別する、あるいはさせられる場面が間違いなく来るでしょう。若年齢層に遊んでもらうために賭博の要素を払拭するのか、それとも大人に賭事として遊んでもらうためにお子様お断りにするのか、いずれかの選択を迫られるはずです。一番まずいのは、両者の売上確保を期待してどっちつかずのまま行ってしまう事です。そうなるといずれ、日本国内で開催される大きなイベントが、どこかの麻雀大会と同じ理由で公安当局から開催に待ったをかけられる危険性もあります。PTAに睨まれるのも時間の問題でしょう。そうなると間違いなく Magic は“子供にも大人にも逃げられる”のです。 子供にも大人にも遊んでもらえる趣味。それはやりようによっては実現可能な物なのです。ところがどうも Magic といった多くの趣味はあまりにも目先の売上に目が向きすぎていて、作り手や売り手に中・長期的なビジョンがほとんど無い気がします。いや、ガンプラというおもちゃに最初からそういうビジョンやコンセプトがあった訳でもないのでしょうが (^^; 少なくともガンプラは“趣味・文化としての成熟と定着”に心血を注ぎ、そして一定の成果を挙げてきただろうと思います。しかも日本国内では今や、そのいわばガンダム・ビジネスに乗ったガンダム・ウォーがTCG業界でも一大勢力になりつつあるようです。なんで Magic は格ゲーなんて明らかな失敗事例を後追いし、こういう本当に模倣すべき成功事例に目を向けないのでしょうか。これじゃあせっかく手に入れたコンテンツの魅力を殺してしまうのは当たり前でしょう。 |