105人でも大丈夫でした(笑) 
 
 先日、愛知県犬山市にある稲葉製作所にて“勉強会”に参加させて頂きました。

 “イナバ”といえば、もう皆様ご存知のあのCM「100人乗っても・・・」の会社です。しかしイナバが一連のTVCMと同じ位力を入れている事業、それが問屋や販売店向けの勉強会だったりします。もうかれこれ30年位続いているそうです。工場内をくまなく見学し、最新の商品知識や販売ノウハウを教え、会社の方針や将来像を熱く語り・・・そして夜は○○○○(都合により伏せ字 (^^; )。伺ったところによると、今年は3000人以上の関係者を招いて開催しているのだそうです。ちょっと考えてみてもかなりの経費ですし手間ですよね。じゃあなぜイナバがそういう勉強会を(この不景気のご時世にまで)継続しているのか。それは一言で言うと“イナバのファンを増やす”事を目的にしているのだそうです。

 今回の勉強会で改めて感じたのですが、イナバという会社は自社製品にもの凄い自信を持っているようです。前回のエッセイで“差別化”というキーワードが出ましたが、これについてイナバの専務がこんな事をおっしゃっていました。

「差別化というのは単に価格だけでなし得る物ではない。しかし差別化を図るには何か1つ他社より飛び抜けている、それも『断然違うぞ!』と言えるような物でなければならない。イナバの製品は“品質”を最大の差別化の要素と考えている。うちにはそれしかないし、でもそれには絶対の自信がある。」
 で、確かにイナバの製品をじっくり検証してみると、他社の物置や事務用品に比べて優れている部分が多いのです。しかし同時に製品が優れているだけでは物は売れない。何よりもその製品が優れている事を多くの人達に知ってもらわないといけないのです。だからイナバという名前を知ってもらうために大規模なTVCMを打ち、同時に最前線で販売に携わっている人達にイナバ製品をより知ってもらう。そういうスタンスなんです。

 例えばある家庭で物置の購入が検討されたとします。すると多くの方々の脳裏に、まず真っ先にあのTVCMが思い浮かぶと思うのです。そして販売店に行って店員に聞いてみたら、なんか笑顔で「イナバですか、あそこの物置は良いですよ。」と自信を持って勧められる。しかも製品に関する説明もやたら詳しくて丁寧。確かに他社製品に比べるとちょっと割高な気はするけど・・・そこまで勧めてくれるなら。まあ多くの場合こういう図式になるのです。実際それでイナバは業界トップのシェアを築き上げ、それを長く維持している訳ですし。

 さて・・・この後私がどういう話を書こうとしているか、もう皆様お分かりだろうと思います(笑)。

 ちょっとここでは冷静に、あと客観的な事実のみを列挙しますが、日本国内で Magic というゲームはどういう歴史を歩んできたでしょうか。並行輸入ショップが安く売っていた Magic が、代理店からの圧力で価格を吊り上げられる。これが日本での Magic の歴史の出発点だったはずです。 (^^; そしてその後の都合3度に渡る値上げ。認定トーナメントを開けという号令がかかるも、開いたところでほとんど何らのサポートも無し。それに加えてメディアでの知名度アップも不十分で、話題性の高い多くの国産TCGにシェアを抜かれる。やっとイベント開催がサポートされたと思ったらなぜか大会キットは有料で、しかも並行輸入ショップでカードを買ったユーザーに荒らされてごっそり賞品を持って行かれる。やがて無料販促物も廃止され、多くの販売店はどうやって Magic を売っていいのか途方に暮れている。・・・以上の内容の中に少しでも誇張があるでしょうか。多分ないですよね。

 少し前から私は「 Magic は“売ってもらえなくなった”から廃れたんだ。」という話をしています。だって Magic って国内の流通関係者を Magic のファンにするための施策を、まあほとんどと言うか全くと言っていい程行ってきてないじゃないですか。というか、むしろ Magic 販売店の Magic 離れを加速させるような施策しかやって来ていないのです。はっきり言いますが、こういう歴史のどこをどう見れば、販売店が Magic のファンになって頑張って売ろうという発想になれるのでしょうか。あまつさえ今 Magic はMTGOの普及でリアルカードのユーザーから直接売上をあげようとしています。今やこんなゲームを頑張って売る販売店は多分バカです(爆)。この言葉は“良い意味でのバカ”と“悪い意味でのバカ”両方を含んだ意味を持っていますが、ただ最近前者のお店はかなり減ってきている気もしますが。

 今まで私が5年近く口酸っぱく言ってきたこと、それはまさに「 Magic はイナバ物置のような売り方をするべきなんじゃないの?」という事なのです。まず何よりも Magic は“他ブランドTCGが足元にも及ばないクオリティの高さ”を追求すべきだったのです。そしてその上で自ら Magic の知名度アップのために様々なメディアに広告を打ち、そして更に問屋や販売店を Magic できっちり儲けさせ、また Magic に関する十分な知識や情報を得てもらってファンを増やす。これって今まで私が言ってきた意見そのままじゃないですか。で、実際問題としてそれをやってきたイナバは成功しているし、それをやってこなかった Magic は失敗したのです。だから前にも言ったでしょう、私が書いている意見は大局的には間違ってないって。 (^^; 

 本当思うのですが、今からでも遅くないから Magic は他の成功事例に学んで、売り方あるいは企業の方針といった根本的な部分から見直し変わるべきでしょう。今や日本国内だけで売られるデュエル・マスターズが、全世界で展開している Magic とほぼ同額を売り上げ会社を支える屋台骨になっている。これが間違いなくWoCの現状のはずです。(ちなみに流通数量で言うと、今やデュエル・マスターズは Magic の倍以上売れているんですよ。)さすがにこの期に及んで反省の姿勢を示さないとなると、いよいよ Magic は売り手/買い手双方のファンを失って空中分解する宿命しか持ち合わせていないと私は思うのですが。まあユーザーや販売店が完全に Magic を見放す前に、まずWoCの親会社である Hasbro が黙っちゃいない気もしますが。 (^^; あそこにはそんな不採算部門を抱えておけるような余力はないはずですし、実際かつてそれで Pok?mon のサポートを切った実績もありますので(笑・・・えない)。

あいせんの“本音の部分”

 これも前から書いている話ですが、未だに Magic の世界には“ Magic 優性論”なる物が存在するようです。ただ現実にはこれって国会で少数派の野党が唱える政策と同じで、実際に世の中を動かす力にはほとんどなっていません。今や世界的には遊戯王OCGこそ The King of TCG であるし、日本国内に限って言えばデュエル・マスターズがその座に着きつつある。これが紛れもない事実なのです。

  Magic 信者が唱える Magic 優性論になぜ説得力が乏しいのか。その理由は実に簡単でして“実際には Magic に他TCGと差別化できるだけの明確な売りがない”という事です。再び本編で取り上げたイナバ物置の例を挙げますが、イナバ物置と他社物置を比較すると、イナバ物置の優れた点というのは実に数多く列挙する事ができます。これだけ明確に品質の差別化をしてくれていると、売り側にも本当に迷いがないんですよ。その差別化の要素の半分とか1/3程もお客さんに伝えれば、まあ間違いなく多くのお客さんは「なるほど、確かにイナバはいいなあ。」と思ってくれますので。じゃあ今現在それでも Magic の優位を唱える皆様は、それだけ説得力のある“他TCGに比べて Magic の優れた点”を挙げる事ができますでしょうか。恐らく無理なんじゃないかと思います。現状を見るとそれだけの売りが今の Magic にあるとはちょっと思えませんし、何よりもそういう持論を唱える人の多くが、そもそも Magic 以外のTCGを全く遊ばずに、ただ闇雲に主観で Magic の優位性を唱えているだけなんじゃないですか。

 工業製品に比べてゲームといった嗜好品は、個人の好みの問題が大きい分だけ差別化が難しいとも言えます。ただそういう部分を遊戯王OCGやデュエル・マスターズは話題性や知名度という点で十二分にカバーしています。でも Magic ってそれもないんですよ。あと私個人が Magic のカードイラストを問題視する大きな理由もここにあります。かつて Magic はカードイラストの秀逸さや独創性が大きな売りになっており、それで多くのコレクターを獲得できていました。ところがそういう魅力すら今の Magic には感じられないのです。この際なので言っちゃいますが、こんなゲームを一体誰が買うのか、私個人は甚だ疑問だったりするのです。昔私は自身で Magic を売っていました。でも今、私は Magic 販売店の店員にはなりたくありません。こんな売りも魅力も感じられないゲーム、どうやって売ればいいのか皆目見当が付きません。

 結局のところ、ゲームが売れる大きな要因って“ブランド”“知名度”“話題性”辺りになるかと思います。あと“継続性”といった要素も重要で、実際それ故日本の幾つかのゲームタイトルは継続的に売れているはずです。 Magic はあと少しで世界的なブランドを築き上げられるところだったものを、もう一押しの努力なり工夫が足りなくて八合目辺りから一気に転げ落ちてしまったのです。少年ジャンプへのマンガ連載の話が流れて、代わりに登場したカードゲームにシェアや人気で大きく溝を開けられてしまっている。この事が何よりもそれを象徴しているでしょう。確かに Magic には他のゲームにない“品質”があるのかも知れません。でもそれは誰の目にも明らかな、それこそ「断然違うぞ!」と言い切れるだけの内容ではなかったのです。しかもその差別化のポイントを十分な手間暇をかけて大々的にPRしなければ、結局誰もその事には気が付かず Magic は見向きもされないのですよ。私がここで言ってきた話は、普通一般の企業から見れば極めて当然の事ですし、その提案も企業としては普通に検討されて当然の内容だったはずです。だから逆にそういう当たり前のことをやらずにサボってきたメーカーや商品は販売不振でこの世から消える。これもまた当然の時代の流れになるのでしょうが。

 実は今回書いた内容を、かなり簡潔&明確に示している文献があります。稲葉製作所の創業者である稲葉庄市氏が書かれた“社長記”がそれなのですが、興味のある方は一度ご覧になってみて下さい。さすがは超一流の企業人、その文才たるや私など到底足元にも及びません。 (^^; 

http://www.inaba-ss.co.jp/company/gaiyo/seishin.html

   

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