棚にあるぼた餅の食べ方 
 
 今回は私がよく記事やエッセイで“日本で成功した遊び”として紹介するミニ四駆のお話から入ってみます。私はミニ四駆についても“買い手”と“売り手”の双方を経験してきています。私がおもちゃ屋としてミニ四駆を遊び、また売っていた当時、ミニ四駆はそれこそかつての遊戯王OCGなど足元にも及ばない程の絶頂期にありました。小さなおもちゃ屋がちょっとした大会を開いても会場に入り切れない程の参加者が集まり、全国大会の予選ですら泣く泣く抽選で参加希望者の半分以上を足切りせざるを得ない程でした。
 この手の大会で1000人規模の参加者を収容できる施設を探すのは大変なのですが、何しろ参加希望者はその3倍とかそれ以上いた訳です。 (^^; 取りあえず確保できた会場に参加者全員詰め込んで参加費取ろうなんて発想は、それこそゲームそのものや企業へのイメージダウンになるから良識あるメーカーはやらないと思うのですが。あとミニ四駆の世界には“確実に予選参加の抽選に当たる裏技”という暗黙のルールがあったのですが、この辺は大人の事情なので今回は割愛します。 (^^; (ただこの手法はTCGにも応用が利く部分もあるので、後日日誌ででも触れましょうかね。)
 私はミニ四駆レーサーであると同時に素人モデラーでもありました。ですからミニ四駆では走る速さと同じ位見た目の格好良さを重視していました。そういう人間にとってミニ四駆はモデラーとしての入門キットとも見えた訳で、私自身「このミニ四駆人口の相当部分がこのままプラモデルやRCカーに定着してくれるといいなあ。」という期待を持っていました。ところが現実はそんな甘い物ではありませんでした。結局彼らが遊んでいたのは“ミニ四駆”であり、決して車の形をしたプラモデルでもなければプロポを使わないRCカー(!?)でもなかったのです。ミニ四駆のブームが過ぎ去るやいなや、彼らはたちまち別の流行を追い求めて旅立っていきました。そりゃあもう「お前らクールやなあ!」と言いたくなる位の変わり身の速さでしたが。 (^^; 

 で、ここから Magic の話になります。どうもWoCは「今、日本でデュエル・マスターズを遊んでいる子供達は、そのうち決して少なくない割合が Magic に流れてくるであろう。」という説明を Magic 販売店向けにしているようです。しかし私に言わせるとそんなの単なる幻想というかまやかしに過ぎないです。彼らは別に意識としてTCGを遊んでいる訳ではなく、あまつさえ Magic の廉価版を遊んでいる訳でもありません。言うまでもなくデュエル・マスターズを遊んでいるのです。言い方を変えると“彼らはデュエル・マスターズでなければダメ”なのです。だって現在 Magic を遊んでいる人達だって、その多くが他のTCGを勧められても「いや、俺は Magic でなきゃ嫌なんだ。」と答えるはずですし、実際そう答える人は多いですよね。それと理屈は同じですよ。大人がそこまで1つのゲームに固執して別のゲームの存在を見ていないのに、子供にはデュエル・マスターズから Magic への安直な鞍替えを期待する。そんなのどう考えたって無理でしょう。あなたが Magic 以外のTCGに興味を示さないのと同じで、子供だって今はデュエル・マスターズ以外のTCGなんか見えちゃいないのです。もしそれを実現する手段があるとしたら、それはただ1つ“ Magic を遊戯王OCGやデュエル・マスターズに匹敵するブームにする”事で、子供達の関心を Magic に向かせるしかないのです。

 あと前から何度か触れていますが、日本の子供達はそのほとんどが“お小遣い”という形で使えるお金を制限されて生活しています。しかしそんな彼らが何度か思い切り自分の好きな買い物ができる機会に恵まれる事があります。例えば親と一緒に出掛けた買い物などがそうです。そういう時に子供達が親からゲームを買うお金を引き出すには、果たしてどういう条件が必要かという事です。まず何よりも「親がそのゲームの事を知っていて、そのゲームに安心してお金が出せる。」という事が必須条件になります。ミニ四駆や国産TCGがマンガやアニメでその知名度を上げるのはそういう効果もあるのです。そして「値段が手頃である。(親がその商品の購入を納得できる。)」というのも重要になります。そうなると1パックが150円のデュエル・マスターズと400円オーバーの Magic を比べて、果たしてどちらが有利かなんてのは話が見えているのです。ちなみにそういう点でミニ四駆という商品はまさに優等生の筆頭のような存在でした。つまりここにミニ四駆やデュエル・マスターズが勝ち組になり、それに対して Magic がそうなれなかった“差”が存在するのです。

  Magic の世界には相変わらず「 Magic にはマンガやアニメは不要だ。」という持論を唱える方がいらっしゃるようです。そういう物で Magic に幼稚なイメージを持たれるのは嫌だ。デュエルルームに子供が溢れると自分の居場所が無くなるので困る。極論すれば「うぜえ!」の一言でそういう販促を否定されるようです。そこでじゃあそういう持論を口にされる方々にお聞きしたいのですが、そういう皆さんは一体どうやって Magic の知名度を上げて日本で広めようと考えていらっしゃるでしょうか。そして何よりもそういうアイディアをご自身で実践されているのでしょうか。おもちゃ屋はあなた方に無償ボランティアをするために店を経営している訳ではありません。商品を売ってその売り上げで維持されているのです。現状のTCGの状況を見る限り、少なくとも私だったら「今や落ち目になった Magic の取り扱いなんかやめてデュエル・マスターズを前面に押し出そう。」と考えるでしょう。そういう販売店をどうやって Magic に引き留めて Magic を売ってもらうのか。そういう発想がどういう訳かWoCやHJといったメーカーサイド、そして多くのユーザーにもないんですよ。え!?、俺はカードは通販で買ってるから関係ないって。ああ、そうですか。 (^^; でもそういうあなた自身も近所の店がすべてデュエルルームを廃止したら困るんじゃないですか。そして今やそのデュエルルームは、まあ間違いなく Magic ではなくデュエル・マスターズに代表される国産TCGの売上で維持されているんですよ。

 手元にある資料を見る限り、ここ最近日本国内でのTCGの総売上の中で Magic が占める比率は数%程度と思われます。 Magic はごく一部の販売店に売上が集中しているため、一見すると未だにシェアが大きいように見えるのですが、実際にはそれ程大した事は無いみたいですよ。
 デュエル・マスターズが売れているのはデュエル・マスターズを売っているメーカーや販売店が頑張っている訳で、そこから何も頑張っていない Magic にもおこぼれが来るような事は決してありません。デュエル・マスターズの成功を Magic の成功に結び付けたいと本気で思うのであれば、やはりそうなるような努力や工夫を今からでも始めるべきでしょう。ただもし本気でそれを願うのであれば、それこそ Magic はパックの価格設定から新製品の発売頻度、更にはユーザーサポートに至るまで、あらゆる要素を見直して抜本的な改革をする必要があるでしょう。何しろ Magic は今や明らかに“少数派”あるいは“負け組”に属するゲームです。今までこれだけ売れなかった物が、ある日突然何の苦労も無しに売れるはずがないのですから。
あいせんの“本音の部分”

 引き続きミニ四駆の話になります。昔ミニ四駆が全盛期だった頃、各地方のおもちゃ屋組織はこぞってミニ四駆販売にしのぎを削っていたはずです。例えば全国大会の北陸予選を開催する場合に、タミヤは福井/石川/富山の各県の販売状況を見て、どの県で予選を開催するのが最も適切かを毎年判断していたはずです。当然自分の地元で予選が開催されればミニ四駆販売には弾みがつく訳で、それ故各地域のおもちゃ屋がアイディアを出し合って販売を工夫したり、地元のローカルイベント開催に奮闘したのです。まあちなみに実際の北陸予選は石川(金沢市)ではなく福井(福井市)で開催される事がほとんどだったはずです。先程も書いた1000人規模の大会を開くのに大きなショッピングセンターが全面協力してくれた事、そして北陸予選が滋賀県のユーザーも対象にしていたため地理的に有利だった事がその理由だったようです。

 あとそういう意味において、タミヤというメーカーは市場を良く分かっていた気がします。ミニ四駆レーサーがそのままプラモデルやRCカーのユーザーに移行してくれるなんて事はあり得ない。だからそういう期待感を販売店に持たせるような宣伝も一切しなかったのです。そしてタミヤは「ミニ四駆の公認大会に出られるのは小学生まで。」という形でミニ四駆からの卒業を促し、言ってしまうと「後はおもちゃ屋さんの努力次第です。頑張ってね。」という形で市場の自主性に任せたのですよ。当然おもちゃ屋だって一度付いてくれた常連さんを手放すのは嫌な訳で、手を変え品を変え他の商品にも関心を持ってもらえるように努力したはずです。タミヤが子供達をミニ四駆に固執させるような余計な販促をしなかったおかげで、おもちゃ屋側は自分が好きな形での販促が取りやすかったのです。

 それに対して Magic の販促、特にグランプリといったプレミアイベントって・・・何か今では“地元開催がむしろ Magic 販売にとって不利益を招く”事態にすらなっていますよね。地方の認定ジャッジが自分のお膝元へのイベント誘致に動いているという話は聞くのですが、地方の販売店が組織立ってグランプリの誘致に動いているなんて話を私は聞いた事がありません。そりゃあそうでしょう、来たところで地元のお店にはほとんどメリットは無さそうですし、下手するとその後シングルカードが売れなくなって自分の店が大打撃を被りかねないのですから。本当思うんですけど、今の Magic のイベントって一体誰のための物なのでしょうか。高額な参加費設定などを見ると、本当の意味でユーザーのための物かどうかも怪しいですし。(ちなみにミニ四駆のイベントは“参加費無料”が大原則です。メーカー自身が販売店にもそういう指導をしていて、その代わりイベント開催時には問屋を介して様々なサポートをしていました。)

 しかもWoCはほとんど何の根拠も実績もないユーザー移行説を販売店に説き、それで傾きかけた Magic 販売を何とか維持させようとしている。でもその一方ではMTGOを提供してデュエリストの資金をそちらに流れさせようとしている。本当さすがに販売店をバカにするにも程がある気がしますよ。前から何度か書いているのですが、実は Magic は“売れなくなった”のではなく“売ってもらえなくなった”故に衰退した面がかなり大きいと思われるのです。例えば一時期実現したコンビニ販売があっという間になくなったのがその典型例です。確かに Magic は並行輸入分を含めるとそれなりに売れているのかも知れません。しかし並行輸入分の Magic は下手すると日本国内の流通に全く利益を落とさない可能性すらあります。それで「 Magic は売れてるんだから販売店はもっと気合い入れて販促せいや!」と言われても無理でしょう。 (^^; おもちゃ屋に言わせれば「そんなにイベントやって欲しいなら、あんたがその Magic を買った店にこそ頼んだらどうだ?」とか言いたくなりますって。

 はっきり言いますが、日本国内での“ Magic の売れて無さ度”は、恐らく皆さんの想像を遙かに越える位深刻だったりします。今まで散々日本の Magic をこき下ろしてきた私が、そのデータを見て「えっ、こんなに少なかったの?」と驚嘆した位なんですから間違いありません。 (^^; しかもその Magic の売り上げは、更に去年後半から今年にかけて目を覆うばかりの落ち込み振りです。そんないわば“落ち目のゲーム”が強い、うまい、あるいはそのゲームに関する知識が豊富な事がどれだけの自慢になるんですかね。私は別にそういう取り組みそのものを否定している訳ではありません。ただ昔から一貫して「どうせなら Magic をそれこそ世界屈指のゲームタイトルに育てて、その上で自分の強さやうまさを堂々と自慢して下さい。」と言っているだけです。だって今は「 Magic の日本選手権で優勝すると2万ドルもらえる。」とか言って、やっと世間の関心を少しばかり引けているだけでしょう。でもかつて日本にはそれこそ「地元のミニ四駆大会で優勝した。(賞品はささやかだったけど。)」というだけで、クラスや学校でヒーローになれた時代が間違いなくあったのですよ。 Magic がそういう覇気や話題性のある人気ゲームになれば、別にWoCが少なくなった売上から賞金を捻出して、青息吐息で競技イベントを存続する必要もなくなるのですがねえ。

   

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