なぜ Standard ではダメなのか? 
 
 日本というか世界的に見て、恐らく現在の Magic では Standard というフォーマットが最も遊ばれているだろうと思います。しかしこれは率直に皆さんにお聞きしたいのですが、皆さんは本当に Standard というフォーマットが心底好きで、それを Magic に取り組む上でベストな遊び方と認めた上で遊ばれているのでしょうか。少なくとも私個人は Standard は“大”が付く位嫌いですし、私の周囲のヴィンテージ・プレイヤーの中には Standard を肯定するデュエリストすら見つけるのは難しいです。フォーマットとしては敷居が高いけど、ショップ等が開く大会に出るにはこのフォーマットに対応するしかない。他のフォーマットをやろうにも周囲に賛同者がいない。 Standard のデッキを持っていれば対戦相手には困らないからそれでいい。実際にはそういう方が少なくないんじゃないでしょうか。そしてやっぱり日本の Magic は Standard への偏重状態にあって、それが大きな要因となって昔に比べて勢いが衰えた。これが多分現実なのです。あと「いや俺は無条件に Standard は好きだ。」という方でも、まあ間違いなく毎年11月にはブロック落ちという憂鬱なイベントを迎えているはずですから、その度に多少なりとも思うところはあるんじゃないでしょうか。

 ところが日本での Magic の歴史を振り返ってみると、日本の Magic はそれこそ Standard の前進である Type-II というフォーマットの普及によって1つの時代を迎えています。これは私にしても同じで、当時は私みたいな緩いデュエリストですら Type-II を喜々として遊んでいたのです。そして日本の Magic 全盛期と思われるラースサイクルやウルザサイクルの時代は、まあ間違いなく Type-II が原動力となって Magic が盛り上がっていたのです。(その頃には既に名称が Standard になっていたかも知れませんが。)じゃあその頃には普通にできていたことが、どうして最近はできていないのか。これにはちゃんと理由があると私は考えています。

 日本の Magic は、実質的には日本語版第4版によってその歴史の幕を開けたのだろうと思います。そして多くのデュエリストがその面白さにはまって Magic にのめり込み、その後発売されたクロニクルやミラージュサイクルはもちろん、日本語版第4版以前に世に出ていたアリスサイクル等のカードもたくさん売れました。そんな中で自分が持っているほぼすべての基本セット/エキスパンションが使える Type-II というフォーマットが提唱された。これで我々デュエリストがこのフォーマットに異議を唱える理由なんか無かったのです。自分が好きで買ったカードがほぼ残らず使えるし、それ以外の絶版カード購入を強要されない。しかも当時の Magic は、ある有力カードを持っていないというハンディキャップを、他のカードやアイディアで相当部分補えたのです。つまりデュエリストが Type-II を遊ぶための障害といえる物がほとんど無かったのです。だったら何も考えずに取りあえず手を出せばいい。普通はそうなるはずです。そしてそういう勢いのまま時代がラースサイクルに突入し、少年ジャンプへの紹介記事掲載もあって Magic には追い風が吹きまくった。言ってしまうとそういう感じです。

 じゃあそれと最近の Standard 推進は何が違うのか・・・というか、私に言わせるとむしろ共通点を探す方がはるかに難しい気すらします。 (^^; 何よりも最近の Magic は“まず競技(フォーマット)ありき”なのです。更にはっきり言っちゃうと、最近の Magic は“ Standard を遊ぶために買わされている”訳です。昔の Magic はゲームとしての面白さとかイラストの秀逸さで売れ、その結果デュエリスト1人が所有しているカードの量や範囲がもの凄く広かった。だから Type-II というフォーマットが世に出た時にも直ちに対応できたのです。だってやるべき事は既に持っているカードの組み合わせを考えてデッキを作るだけでしたから。ところが最近の Standard はそうじゃないのです。最近の Magic には競技以外にカード購入を促す要素がほとんどありません。つまり Standard をやれと言われてそれに従うには、まず最初にカードを買う作業から入るしかないのです。そう、私に言わせると最近の Magic を買う行為はまさに“デッキ構築のための作業”以外の何物でもありません。その上買ったカードがデッキに使える利用率が以前に比べると悪い。だからデッキ構築はもちろんカードを買うことやトレードも面白くない。だからどんどん人がやめちゃう。普通に考えてみれば当たり前なのです。

 そしてこういう状況は Magic という世界に様々な弊害を引き起こしています。コレクターの絶滅しかり、並行輸入パックへの依存度の向上しかり、シングルカードの高騰しかりです。フレッシュパックを買う事が楽しくない。カード購入がデッキ構築のための作業でしかなくなっている。それ故トレードが沈滞化する。1円でも安いフレッシュパックにデュエリストが殺到する。できれば買ってハズレのカードを掴まされるフレッシュパックなんか買いたくない。だからこうなっちゃっているのです。ではそういう現状をWoCはどう対策しようとしているのかというと、要するに限定戦というフォーマットを遊ばせて、あまつさえそれでより多くのパック購入を促進しようとしているようです。でも遊んだ後のカードの大部分が紙屑(お蔵入り)決定じゃあ、さすがに誰も怖くて限定戦なんか遊べませんよ。しかもやってる事は結局競技フォーマットの押し付けな訳で、これで息が詰まらない方が普通はどうかしているとすら私には思えます。そもそもこれでは Magic が売れなくなった、人気が落ちた根本的理由が全く解決されていないのです。自分達が限定戦でもしないと満足に遊べないカードセットを出しておいて、それで「 Magic は今限定戦が旬だ!」とか言ってフレッシュパックを買わせようとする。さすがに「寝言は寝ながら言え!」とか言いたくなりますが。

 最近の Standard を面白いと評価する競技プレイヤーは少なからずいる。そういう事実は私も理解しています。しかし今の Magic はその面白さを実感できるレベルまで至れない人が多いのです。競技プレイヤーは最新カードセットのまとめ買いが半ば日常化しているので、一般のデュエリストが日々感じているそういう実感を感じにくいのです。それは Magic の競技イベントが盛んな都市部のデュエリストが、そういうイベントにほとんど恵まれない田舎のデュエリストの苦労を知らないのと似ているでしょうか。しかも最近のレギオンの販売不振を見ても明らかなように、今の Magic は一般のデュエリストには極めて購買意欲が沸きにくい魅力に乏しい遊びなのです。それを「 Magic は競技プレイヤーになって Standard を遊び尽くしてこそ面白さが分かる。(だからお前らも俺達並にカードを買ってから議論に参加しろ。)」とか言われても困るのです。何よりも今の Magic がそこまでしないと楽しさを理解できないからこそ、今や大勢のデュエリストが Magic を離反しているのです。そんなクソゲーに誰も投資なんてしたくないからです。

 それと Magic プレイヤーの多くが国産TCGのクオリティに否定的な見方をしています。しかし実際問題として国産TCGはそれなりに売れているし、こんなご時世でもデュエル・マスターズとかガンダムウォーといったヒットゲームが生まれています。(少なくとも日本の多くのTCGショップを支えているのは、間違っても Magic ではなく国産TCGです。今や Magic は国産TCGの売り上げで維持されているデュエルルームに居候している無駄飯食いにすらなっている。そういう自覚がそろそろデュエリストには必要でしょう。)じゃあ Magic と国産TCGとの違いは何なのか。少なくとも国産TCGは最近の Magic と違って“純粋にカードを買いたくなる動機付け”ができているのです。 Magic プレイヤーの多くが嫌う“萌え”といった要素ですら、国産TCGではある意味で根強いファンを獲得する原動力になっているのです。そして間違いなく昔の Magic にもそれはできていました。ところが最近の Magic にはそれすらないのです。だからカードを買う事への動機付けが極めて乏しい。だから競技を見ている人間は買うけど他の人は買わない。そういうファン層の極めて狭いゲームになっているのです。でも Magic プレイヤーの多くが「萌えなイラストのカードゲームなんか遊びたくない。」と言うのと同様に、多くの Magic プレイヤーは「他の人達に見せて『このカードゲームはイラストがきれいですね。』と誉められもしないゲームなんか遊びたくない。」と考えています。それで Magic が競技イベントの推進だけで昔の勢いを取り戻せるのか。まあ無理でしょう。じゃあ、どうすればいいのか。これについては今さら机上の空論を展開したところで疲れるだけなので、ここ(=本編)では特に書かないでおきます。 (^^; 

あいせんの“本音の部分”

 では Standard というフォーマットをどうすればいいのか。今回の“本音”はそれに関する私なりの提案を書いてみます。

 最近の Magic が窒息状態にある状況をよく見てみると、私個人は幾つかの大きな問題があると感じています。その1つが「最新のカードに市場が必要以上に反応しすぎる。」という問題、もう1つが「初心者が自分のカード資産でじっくり Magic に取り組む機会が無くなっている。」という問題です。

 「最新のカードに市場が必要以上に反応しすぎる。」というのは、例えば最近のフレッシュパック販売やシングルカード市場の動向を見てみれば分かりやすいかと思います。競技で使われるカードセットは売れてそうじゃないカードセットは売れない。あるカードがプレミアイベントで大暴れした瞬間に価格が高騰し、逆にある人気カードに対する強力なアンチデッキが登場した途端に価格が暴落する。これで販売店が Magic を安心して売るなんてできないでしょう。本来 Magic は最新カードセットが競技に直結させる事で話題性を高め、売り上げアップを図ろうとしてきました。しかしそれが今やむしろ Magic の売り上げをダウンすらさせているのです。実際だからレギオンは売れなかったのです。というか、私に言わせると本来TCGなんて商品はフレッシュパックの売り上げがメインであるべきで、シングルカードを扱わないと店が維持できないなんて状況は異常なのです。

 「初心者が自分のカード資産でじっくり Magic に取り組む機会が無くなっている。」というのは、今さら説明する必要はないですよね。自分でデッキを考えなくても、1ヶ月も待てば最新カードセットを使った強力なデッキが天から振ってくる。こんな状況でそれでも自分でデッキを作ろうなんて奇特な方は普通いないはずです。でもそうなると競技で注目されなかったカードには本気で用途が無くなってしまいますし、またレギオンのようなカードセットの売れ行きが鈍る大きな要因にもなります。それと強いカードが判明するまでカード購入を待とう。そうなるとその次に待っている結論は「強いカードが判明した。じゃあシングルで買えばいいや。」なのです。実際だから Magic のフレッシュパックは売り上げが落ちているはずなのです。

 私に言わせると、最近 Magic が世界的に売れなくなっている、その最大の元凶こそがまさに“ Standard 偏重”なんですよ。しかし今までのシステムを存続して最新のカードセットが常に Standard で使える限り、この弊害が解消される事は永久にあり得ません。つまりこのまま Magic はじり貧となって間違いなく終焉を迎えます。じゃあ、どうすればいいのか。その結論は今まで書いた内容の中に既に出ています。そうです、最新カードセットを相当期間 Standard では使えないようにしてしまうのです。最新の基本セットやエキスパンションについては、それ用のフォーマットを作って楽しんでもらえばいい訳です。とにかく全盛期のような“買う事が楽しい Magic ”を復刻させた上で、新製品を例えば1年間 Standard では使わせずにじっくり楽しんでもらうのです。そして1つのブロックが出揃ってじっくり楽しまれ研究された、そこで始めて Standard に組み入れるのです。

 一見するとこのアイディアはかなり無謀なようにも見えますが、でも少なくとも1つのブロックの寿命(=ブロックが Standard 落ちまでの期間)は2年から3年に伸びるんですよ(笑)。それはイコール“1つのカードセットが持つ商品として賞味期限も延びる”という事にもなります。実を言うと売る側に取っても決して悪い話じゃないはずなんです。確かに新製品の発売直後の爆発的な売り上げは得られないかも知れません。しかし逆に発売から1年経って Standard に取り入れられた途端に今まで注目されなかったカードが再評価され、その話題性からフレッシュパックの売り上げに再び火が付く事だってあり得るでしょう。何よりもカードセット発売からしばらくの間、満足な研究結果や最強カード(デッキ)のデータが出てこない訳で、多くのデュエリストはカードを自分で買って自分で研究するようになるはずです。従来の Magic にそういう気運があれば、レギオンに見られたような著しい販売不振は起こらなかっただろうと思います。

 実を言うと私のこの意見は何も突拍子もない話ではなくて、今まで言ってきた“古き良き Magic の復刻”の一環でしかないのです。私は別に過去に実績も経験もない空理空論を言っている訳ではなく、過去に Magic がそれなりに1つの時代を築き上げる事ができた勝因を分析し、それを現在の勢いが衰えた Magic に応用したらどうかと言っているだけです。だって Magic が純粋に遊んで面白ゲームだった頃は、あのヘタレエキスパンションの代表格である Homelands ですら売れたのです(爆)。 Magic は今のまま競技イベントを存続して滅びの道を歩むのか、それとも昔皆が熱狂して遊び倒した Magic を復刻するのか、そういう究極の2択を迫られています。そして多分WoCは前者の道を選ぶのでしょう。だから巻き添えになりたくない多くのデュエリストが独自フォーマットや絶版カードに活路を見出そうとしている。もはやニューカマーの Magic 参入は期待できないから Magic を離れていった古参デュエリストの復活を図らざるを得ない。要はそういう事なのです。そういう昔のような賑やかな Magic の復刻に Standard というフォーマットは何らの貢献もしないでしょうし、皆さんも多くは既に Standard には何にも期待してないんじゃないですか?

   

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