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TCG事情 ~2002年度編~ | ||
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※ 掲示板にアップした内容を再編集しました。
日本国内のTCGシェアですが、やはり遊戯王OCGの衰退ぶりが鮮明になっています。日本国内(を含むアジア圏)での遊戯王OCGの売上は、2002年3月期決算で189億円だったものが、2003年3月期決算では135億円にまで落ち込んでいます。しかも2004年3月期決算での目標値は更に100億円を割り込む予想で、いよいよ日本国内での遊戯王OCGのシェアは衰退の一途を辿ると思われます。ちなみに日本国内での Magic の全盛期における売上は、HJからの出荷額ベースで70~80億円台と考えられます。つまり日本での遊戯王OCGはかつての Magic 全盛期並の市場規模になる。そう考えると感覚的に分かりやすいかと思います。要約すると「特定のコアな販売店に売上を集中させれば何とかなりそうだけど、日本中の書店やおもちゃ屋(コンビニ)が売って売上が分散した場合は商売としては辛い。」という感じでしょうか。しかも北米での遊戯王人気にも一息ついた感じです。2003年3月期第3四半期までの北米での遊戯王OCGの売上が200億円だったのに対し、通期ではこれが240億円に留まっています。2004年3月期決算でも北米での売上は185億円を見込んでいて、コナミ自身もブームが沈静化しつつある感触は持っているようです。欧州での売上増を加えて遊戯王OCG全体の市場規模は微減に留まる。これが来期のコナミ自身の業績予想です。(まあ北米同様に欧州で遊戯王OCGが大バケして・・・という可能性は残っていますが。)たださすがにコナミ自身も“二匹目のドジョウ”がそんなにいない事に気が付いたようで、遊戯王OCGに関して「新規ユーザーの獲得と同時に息の長い商品を目指す。」と唱っています。ちなみに Magic の全世界での市場規模ですが、恐らくはこの遊戯王OCGの実績を下回っていると思われます。(何よりもWoC自身がそう言っているらしいですので。)ですから現在は遊戯王OCGが売上において世界ナンバーワンTCGになっている可能性が高いです。
これに対して文字通り、飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びているのがデュエル・マスターズのようです。タカラは2003年3月期決算で過去最高収益を記録しており、その要因の1つにデュエル・マスターズのヒットを挙げています。ある証券会社が発表したリサーチによると、デュエル・マスターズの2003年3月期決算における販売額は当初目標の38億円を上回って40億円程度になった物と予想されるそうです。この額は Magic で言うと第6版~ネメシスの頃(2000年3月期)の代理店から見た出荷額とほぼ同じではないかと思われます。単純に言うと“日本語版第4版で日本に上陸した年の Magic の約2倍”ほどデュエル・マスターズは売れています。それだけの市場をわずか1年で作り上げたというのは、やはりマンガとアニメの力は大きいんでしょう。現在デュエル・マスターズは既に日本国内での売上が Magic を追い抜いている物と思われます。ただし遊戯王OCGにはまだ遠く及ばないようですが。
タカラの玩具部門における現在の稼ぎ頭は、まあ間違いなくベイブレードです。ところがベイブレードの人気は2002年3月期の第二四半期頃から下降線を辿っていて、2003年3月期決算での売上は100億円程度になっているようです。そしてこの低落傾向は今後も続き、今年度の売上は65億円程度が見込まれています。じゃあデュエル・マスターズはどうなのか。タカラはその売上を今年度は60億円にしようとしています。つまりタカラはベイブレードに変わる次期主力商品としてデュエル・マスターズを考えているようなのです。あとちょっとした情報通を自負する皆様は「タカラにはバウリンガルがあるだろう。」とかおっしゃると思うのですが、実は現時点でもデュエル・マスターズの売上はバウリンガルを倍近く上回っています。あれだけマスコミに取り上げられてブームになったと思われるバウリンガルよりも、実はデュエル・マスターズの方が売れているのです。
Magic については最新のデータがないので推測の域を出ないのですが・・・。全世界の中での日本の Magic 市場が占めるシェアですが、私個人は“10%~18.5%の間”と推定しています。10%という数字はDCI公認のレーティングに登録されている日本人プレイヤーの比率から求めた数字で、18.5%というのは過去にHJが単独で(!?)発表した「日本の Magic 人口は130万人だ」という数字に基づいています。当時WoCは全世界での Magic 人口を700万人と発表しており、日本の数字はここから市場規模で単純計算したのではないか、と思われるからです。
では現在日本の Magic 市場はどの程度の規模なのか。全世界での Magic の市場規模を仮に300億円と仮定すると、その10%~18.5%程度という事で“約30億円~56億円程度(WoCからの出荷額ベース)”と推定されます。しかもこの数字は単純に人口比率から求めた数字なので、何気に並行輸入による売上をある程度加味した物になっています。つまりHJ経由の売上はこの何分の一か、という事になります。HJが Magic を取り扱い始めた初年度(1996年度)に Magic であげた売上が約23億円(この数字は公取委からの勧告に明記されています)なので、HJ経由の Magic の売上はその初年度並かそれ未満に落ち込んでいる可能性すらあります。ただし実際には私が得ている情報( Magic と遊戯王OCGの勢いの差といった話)から推察すると、どうも私には Magic が全世界で300億円市場を維持できているとは到底思えません。
そうなると言うまでもなく Magic は日本国内でも遊戯王OCGに負けている訳ですが、あとHJからの出荷分で見るとデュエル・マスターズにも既に溝を開けられている可能性が高いと思われます。それとブロッコリーは売上の約3割がTCG関連の売上なんだそうで、2002年2月期決算ではTCGだけで約30億円の売上があったと推定されます。ですから Magic は今や名目上、ブロッコリーブランドTCGの総売上にも負けている可能性があるのです。ただし残念な事に最近アクエリの方も一時期の勢いがなくなりつつあるようですので。 (^^; (2003年2月期決算でのブロッコリーの総売上は約82億円ですから、単純計算するとTCG部門の売上は約24~25億円となります。ただしTCG部門の比重はむしろ上がっているんじゃないかと思われるのですが。)
一部にはこういう状況を「不景気のせいだ。」と説明したり、あとそもそも「いや日本の Magic はそれなりに維持されている。立派な成功事例だ。」と評する方も少なからずいらっしゃいます。ただ Magic は今や日本国内では、間違いなく“ヒット商品のカテゴリーから外れたその他諸々のTCG”という分類に入りつつある商品です。アクエリやモンコレと比べてもその優位性をアピールする論拠は消滅しつつあります。競技イベントにしてもプレミアイベントが有料の(=半ば商品化している) Magic と、基本的には無料の国産TCGとでは比較のしようがないです。あと“面白さ&奥の深さは世界No.1”というひいき目の評価ではユーザーは増えないし動かない。実際そうですよね。現に Magic プレイヤーが色々と酷評している遊戯王OCGの方が今や世界的に見ても Magic より売れている。日本にはデュエル・マスターズという新たなヒット商品が現に生まれている。そしてその反面 Magic は確実にその売上を減らしつつあって、並行輸入の安いパックの影響もあって販売店がどんどん Magic から手を引きつつある。これが現実のようですから。
ただ日本でトップに君臨する遊戯王OCGとデュエル・マスターズですが、その日本国内での売上を合計しても今や200億円に遠く及びません。全盛期には800億円規模と言われたTCG市場は、今や300億円を割って200億円台にまで落ち込んでいる可能性があります。ただその他のTCGブランドがいよいよ苦戦状態にあると思われる中で、コナミの息がかかったTCGはかなり健闘しているというか、その少なくなった売上をいよいよ集約しつつあるという感じです。やはり日本ではマンガやアニメで知名度が稼げるブランドは強いのでしょう。あと資料は公開されていないのですが、最近バンダイのガンダムウォーも売上が好調なんだそうです。どうやら昨今のTCG販売店はこの3つのタイトルによって維持されている感が強いです。このお話はTCG販売店にとってはまさに死活問題かもしれません。コナミは今年度の遊戯王OCGの国内(正確にはアジア向けですが)での売上を「100億円を切るかも。」と言っています。つまり昨年度に比べて更に40億円かそれ以上の落ち込みが予想されるのです。ところがそれに代わるデュエル・マスターズの売上が20億円しか増えないとしたら、まあ間違いなく日本のTCG業界は今以上の規模縮小が決定的となります。今ですらTCGの市場規模は全盛期の1/3あるいは1/4です。これで販売店が維持されている事の方が実は奇跡なんじゃないでしょうか。ちなみにハドソンの決算によると FutureBee を中心とするTCG部門は1億8400万円の売上に対して1600万円の赤字決算です。ハドソン自身もこの部門の“業容の縮小(と収益性の改善)”を決算資料の中で唱っていて、いよいよ来るべき時が・・・という感じです。卸売業にまで手を出している企業がこの有様ですから、やはり販売店がTCGを主たる商品として飯を食っていくのは、いよいよ厳しくなったと思わざるを得ないでしょう。
じゃあ、こういう状況をどのTCGタイトルが打開するのか。言い換えるとどのTCGが日本のTCG市場の救世主になり得るのか。恐らく多くの方がこれについて“デュエル・マスターズ”と答えるだろうと思います。遊戯王OCGを含めた国産TCGの大部分が、今や日本での市場拡大ではなく単なる維持を目論んでいると思われる。 Magic にしても10周年という節目のお祭りを販促に活かせておらず、あまつさえ新製品の不評でユーザー離れに拍車をかけている。そうなると少なくともメーカーが拡販と市場拡大を声高に宣言しているデュエル・マスターズに期待がかかるのは当然だろうと思います。でもそれで多くのTCGプレイヤーは本当に満足なのでしょうか。やっぱり皆さん自分が遊んでいるTCGがナンバーワンになって欲しいですよね。それこそ自分がそのTCGを遊んでいる事を周囲の人達に堂々とアピールできるようになりたいだろうし、ましてやそれが強い、あるいはうまい、あるいはそのカードを数多く持っている事を堂々と自慢できるようになりたいはずなんです。TCGというゲームのマイナーからの脱却、もっと言うとヲタクが遊ぶゲームというイメージの払拭ができない限り、やはりTCGが本格的なブームになる事はあり得ないのではないでしょうか。
1つのゲームがブームになる、それはすなわち“裾野が広がる”事を意味しています。 Magic は中途半端な競技指向で市場拡大を目論んで結局果たせませんでした。そしてマンガやアニメという強力な武器を持った遊戯王OCGですらその目論見はうまく行かなかったのです。そういった先人が何をどう失敗したのか。そしてどうすればそういう失敗を繰り返さずに済むのか。それをそろそろメーカーもユーザーも真剣に考え、そして自分なりの打開策を実行すべき時期が来た。いや、正確に言うと既にかなり手遅れ感&行き詰まり感大爆発なんですが (^^; それでも何もしないよりはましでしょう。少なくとも国産TCGの主力メーカーは揃って“自社ブランドTCGをロングセラーに”を目標に動き始めるようです。それでなおかつ Magic やその他のTCGが今まで通りのやり方を続けるようだと、いよいよTCGは勝ち組と負け組との落差が決定的になるでしょう。それこそあなたが好きなTCGブランドがどこの販売店にも扱ってもらえない、あるいはイベントの1つも開いてもらえない、そんな事態が訪れるかもしれないのです。
ブロッコリーの決算資料に商品ジャンル別の売上が掲載されていたのですが、それによるとブロッコリーの売上や利益に対するトレーディングカードの比率は、平成15年2月期は前年度よりも少なくなっているそうです。ブロッコリーのメーカーとしての生産実績(約25億円)のうち、トレカが占める率は22%足らず(約5.3億円)で、これは前年度比の48%程度しかありません。また仕入実績(約39億円)に占めるトレカの比率も12%足らずです。別にブロッコリーはTCGへの売上依存をやめた訳ではないようなのですが、販売不振という形で結果としてその依存度が減る形になっています。やはりSagaII発売によるユーザー離れはかなり深刻だったようです。
最近ちょっと思うのですが、この際 Magic も自らの市場規模とか売上の推移といった情報をオープンにすべきなんじゃないでしょうか。 私が色々な形で得ている情報を総合すると、それこそ Magic の市場規模は全盛期に比べて随分な落ち込み振りです。ただそれを我々が実感できる例えば“日本選手権の賞金総額”なんて話は、今年は Magic 10周年ということもあって減額されませんでした。私に言わせるとそれこそ日本選手権の賞金総額は、日本での Magic 全盛期が5万ドルとすれば3万ドル程度にまで落とされても文句は言えない気がします。しかし実際には今年は減額されなかった。そうなると多くの日本人デュエリストが楽観主義に陥ると思うのです。「ああなんだ、今まで通り並行輸入ショップでカードを買っても日本の Magic イベントは維持されるんだ。だったら今後もそっちで買えばいいや。」ってね。でもそれじゃあまずいからWoCはフライング販売を規制したり、代理店経由の Magic を値下げしたんですよね。つまり私に言わせるとやってる事が支離滅裂なのです。 私個人は「このまま行けば間違いなく来年には日本選手権の賞金総額は減額される。」と予想しています。それは何よりもそういう措置が妥当だろうと思うからです。じゃあ来年になって実際に賞金を減額するとして、一体WoCは何を根拠に減額を発表するのでしょうか。だって今までだって日本のデュエリストは多くが並行輸入の英語版を買い続けて、それでもWoCはバカみたいに5万ドルなんて賞金を日本人に払ってきたんですよ。 (^^; それをデュエリスト(特に競技指向が強いプレイヤー)は良かれと思って続けただけなのに、なぜかある日突然「お前らもうちょっと代理店から Magic 買えや。罰として賞金を減額するから今後は改心するように。」と言ったって誰も納得しないでしょう。デュエリストにだって言い分はあります。「だったら最初からそう言えよ。」「それなら買ってもらえるような値段でHJが売れるように流通を改めるのが先だろう。」「日本での販売価格でパックなんか買ったらそれこそ欧米のプレイヤーに勝てない。そもそも Magic に競技を導入したのはお前らなんだから、我々が欧米のプレイヤーと対等に渡り合える環境をまず作るべきではないか?」そう言われてWoCは何か言い返せるのでしょうか。 だったらWoCやHJは、それこそHJ経由で流通している Magic の具体的な数量や額を公表すべきでしょう。それで全盛期よりも大きく落ち込んでいる。あるいは市場そのものはそれなりに維持されているけどHJ経由の流通量が著しく減っている。それを提示した上で「日本選手権の賞金はHJ経由の売上で賄われている。今後更にHJ経由の売上が落ち込んだらさすがに今までのような賞金は出せないぞ。」と説明すれば、まあ余程の偏屈屋かへそ曲がりでない限り納得するでしょう。その上で Magic が1パック420円(あるいはそれ未満)といった値下げで日本市場の回復を図れば、まあ多くのユーザーは着いてきますって。だって何だかんだ言って日本の Magic は競技イベントで維持されている訳で、それが無くなるのは困る人が多いんですから。 企業が自社の情報をオープンにするのは、自社の内情を知ってもらう事で投資をしやすくするためです。今デュエリストの多くは、果たして現状の Magic に投資を続けるのが良いのか悪いのか悩んでいるのです。そういう不安を払拭するためには、何よりも「今 Magic はこういう状況だ。それを我々はこう改善しようとしている。ですからユーザー諸君も大いに協力してくれ。」という情報を出す事だろうと思います。ただ私個人は果たして Magic がそういう形でユーザーに公言できるビジョンを持っているのか、それすら疑問視しているのですが。リアルカードとオンラインにユーザーを分散し、コレクターはおろか競技プレイヤーにまでそっぽを向かれる新製品を出し、そして売上が減った販売店に対して相変わらず何らの支援策も打ち出さない。これで Magic にやる気があるとは普通誰も思わないと思いますけどね。 |