“下げ止まり”のお話 
 
 最近日本の景気に関するニュースで、よく“下げ止まり”という言葉が使われます。景気が下げ止まれば当面はそれ以上悪くなる事はないから、その後しっかり頑張れば間違いなく景気は良くなる。だから「景気が下げ止まった!」という明確なアナウンスができれば、市場はその期待感から需要や投資が回復する。まあそんな感じでしょうか。しかし実際のところ未だに日本の景気は下げ止まっているようには見えません。そうなると心理として「この先どこまで悪くなるんだ?」とか「更に状況が悪化するのに備えなきゃ。」となる訳で、いっそう企業や消費者の心理が冷え込み更に消費が鈍る。そういう悪循環に陥る訳です。

 さて、この下げ止まりという話はそのままゲーム業界にも当てはまります。例えば私がよく取り上げる対戦家苦闘ゲーム対戦格闘ゲームですが、この業界は私に言わせるとまさに“下げ止まった”業界だという気がします。一時期の繁栄振りに比べると随分と落ちるところまで落ちちゃった気がしますが (^^; 今のところゲーム・カテゴリーとして維持できる最低限のレベルで落ち着いていると思います。ですからこの先これ以上急激に落ちる事はないのでしょうけど、しかし逆にこの先再び盛り返すとも思えません。そもそもゲーム業界に「格ゲーに再び光を!」という意識があるとは思えませんし、ゲームシステムやキャラクタを一新した完全な新作を出せる程のパワーは残ってなさそうです。あとTCG業界はどうなんでしょう。今のところはまだ下降線を辿っている最中だという感じでしょうか。果たしてTCGはこの先どの位の期間で、どの程度のレベルで下げ止まるのでしょうか。何とかTCGメーカーや販売サイドの目が黒いうちに下げ止まって頂きたいものですな(笑・・・えない)。

 日本経済にしてもゲーム業界にしてもそうなんですけど、この下げ止まった状況というのは実は“そのシステムが本来あるべき姿”あるいは“本来持っていた実力の象徴”なんじゃないか。そんな気がするのです。

 例えば格ゲーですが、そもそも格ゲーには競技システムもなければ、ましてや1つのタイトルが何年にも渡って遊ばれ続けるという土壌すらありません。しかもゲームは新作を出せば出す程システム的に矛盾や疲弊が露呈してユーザー離れが起こる。これも歴史が証明している話です。そうなると格ゲーにはもはや2つの人種しか残れない気がします。昔何かのきっかけに偶然生まれた名作を延々と遊び続けるグループと、あまり何も考えずにひたすら新作を追いかけて遊び続けるグループです。そしてゲーム市場というのはやはり新作を売って維持できる世界な訳で、つまりメーカーや販売サイドは後者のグループを相手に商売をせざるを得ないのです。しかし格ゲーの世界では、私個人の印象では今や前者の方が恐らくは多数派です。(まあそれ以上に格ゲーから離れていった人口の方が圧倒的多数派なんですが。)そうなると新作を出すといってもメーカーは全盛期のような思い切った投資はできないでしょう。それに見合う売り上げや利益は見込めませんから。それこそ昔生まれたゲームシステムや人気キャラクタ(あるいはそのアイディア)を焼き直して終わり。実際今はそんな感じですよね。

 じゃあ格ゲーにはそれ以外の道、例えばそれこそ大ブームになって以前の音ゲーのように一般の人達や女性プレイヤーまでが格ゲーを遊んでくれるような雰囲気になれる可能性はなかったのでしょうか。私個人は“無かった”と断言していいと思っています。実際そうはならなかった以上、誰1人として“あった”とは断言できないはずです。じゃあ今でも全盛期の頃と変わらない位の人達に格ゲーが遊ばれる可能性はなかったのか。これについても私個人は“なかった”と断言します。劣悪なバランスのゲームで勝利至上主義を煽り、対戦という本来格ゲーの目玉であるはずの要素が、逆に多くのゲーマーをゲーセンから遠ざけてしまった。これで格ゲーが成功できた、あるいはその成功を維持できた要素など無いでしょう。

 1つのゲームが爆発的に売れるのには理由があるように、一時期売れていたゲームが売れなくなるのにもやはりちゃんとした理由があるのです。私も以前は格ゲーに没頭していましたが、その頃ですら「ああ、こんなゲームには初心者は入り込めないから、いずれこのゲーム・カテゴリーは廃れるな。」という意識はありました。ですから私はその事を幾度となく発言してきましたし、その格ゲーでの経験を踏まえて Magic に関するコラムやエッセイを書いてきた訳です。最近私が書いた一連のお話(= Magic 衰退論)が次々と現実になっていますが、それはそんなに不思議な事ではありません。だって Magic がそれこそ格ゲーが失敗した状況を忠実にトレースしている以上、格ゲーと同じ運命を辿る事は普通誰にだって予想できるのです(笑)。しかし格ゲーの失敗を嘲笑し批判する方々が、なぜか「いやTCG(あるいはその中の一部個別ブランド)は大丈夫だ!」と言い切ってしまう。あとTCGの現状を憂い批判される方が、なぜか「いや格ゲーは別に失敗事例なんかじゃない。」とか言ってしまう。それも現実だったりします。その事自体が悪い事だとは言いませんが、それだけ眼鏡が曇っていると現状認識や世の流れがさすがに正確に見えないのではないでしょうか。いや、好きなゲームを擁護したいという気持ちは分かりますけどね。 (^^; 私自身、自分がかけてる眼鏡がすっきりクリアな透明だなんて間違っても思っちゃいませんし(爆)。

 遊戯王OCGに代表される日本のTCG業界は未だその勢いを失い続けています。じゃあこの後どの程度のレベルで下げ止まるのか。現状ではそれは誰にも予想できないでしょう。じゃあ我々個人に何かできる事はないのか。それはちゃんとあります。ただ勘違いして欲しくないのですが、自分が好きなゲームを手放しで賞賛し買い続ける。それは決してそのゲームのためにはならない、という事です。実際 Magic だってそういう盲目的な購入層や一部プレイヤーのおかげで制作者側が道を踏み外した訳です。どんなにカードのバランスが悪くても、競技で使える最強と目されるカードが入っていればパックが売れちゃう。カードイラストに手抜きを始めた事に批判が出たら、途端に「 Magic は競技で売ってる物。イラストの話題など不要。ヲタクは Magic から去れ!」とかいう強引な擁護意見で押し切っちゃう。だから多くの人達が Magic を去っていった。当たり前ですよね。本来あるゲームのファンがやるべきは、良い物は良いと賞賛して買い人にも勧める。悪い物は悪いと言って購入を控えてその旨製作サイドにフィードバックする。そういう消費者としてごくごく当たり前の事なのです。それは結果としてゲームをある一定以上の高いレベルの商品に高め、その業界の底上げを図る。つまりその業界が万が一下降線に陥っても、あまり大きなダメージを受ける事無く下げ止まるのです。そしてユーザーがそういう賢い育て方をしないゲームは間違いなく滅びるのです。実際過去にそうやって多くのゲームが滅んでいきました。それと同じ過ちをTCGも繰り返そうとしている。これは紛れもない事実なのです。

あいせんの“本音の部分”

 じゃあなぜユーザーは1つのゲームに盲目的になってしまうのか。それはあるユーザーが1つのゲームに傾倒してのめり込んでしまい、他のゲームの事を見なくなってしまうからではないか。私はそういう印象を持っています。例えば Magic はその典型例でしょう。普通にTCGタイトルのユーザーサポートを比べれば、 Magic のそれが他に比べて明らかに劣っている事は明確です。しかしデュエリストの多くは「 Magic はゲームが秀逸だから必要ない。(他のTCGは Magic よりも劣るからサポートをしているだけだ。)」「もう Magic は安定期に入った。」等と言って擁護しようとする。そういう様子が随分と見られましたよね。じゃあその皆さんの論理でいけば Magic は今さら値下げなんかする必要はないはずだし、DCI公認トーナメント以外のユーザーサポートも必要ないはずです。でも実際には Magic はその売り上げを落とし、その劣性を遅ればせながらユーザーサポートの充実や値下げで挽回しようとしている。それはすなわち少なくとも当時皆さんが言われたご意見が正しくなかった、そういう事なんですよ。しかし皆さんが例えば Magic と同時にミニ四駆とかアクエリアンエイジといったユーザーサポートの優れたゲームを遊んでいたら、まあ間違いなくご意見は変わっていたと思います。少なくとも「なんで他の遊びはこれだけのサービスをしているのに Magic はしないんだろう?」という疑問は持たれたと思うのです。本編で“眼鏡の色”の話をしましたが、少なくとも自分がかけてる眼鏡の色が透明じゃない事には自分で気が付くべきなのです。

 別に私は1つのゲームにのめり込む事を悪いとは言いません。しかし Magic には Magic の世界特有の常識があって、 Magic しか遊んでいないとそれが当たり前というか、唯一絶対の常識になってしまうのです。よく「新聞は1種類だけ読むと思想が偏る。」とか言われますが、それと考え方は同じです。1パック500円のTCGを小中学生向けに売るというのは、一般的な子供向けの遊びの相場から言うとかなり割高だと思います。でも Magic しか知らないとそれが当たり前だと思っちゃうのです。あと Magic はプレミアイベントで高額の参加費を取りますが、私が知る限り他の国産TCGではメーカーがプレミアイベントにて参加費名目でお金を取るという事例すら思い当たりません。(限定品の販売という形で売り上げを出すケースはありましたが。まあ実際には全くない訳じゃないんでしょうけど。)じゃあそれでイベントでの表彰の内容が Magic に遠く及ばないのか。そんな事はないようです。そういう当たり前の比較検討をして、そして Magic の販売サイドに「お前らは高いパックを売ってるんだから、せめて国産TCGに匹敵するかそれを越えるユーザーサポートをしろよ。」という要求を出す。そういうユーザーとして当たり前の事をしてこなかったから、今 Magic は衰退局面に入って下げ止まらない状況に陥ってしまったのです。はっきり言いますが、日本の Magic がダメになってしまったのには、メーカーや販売サイドを甘やかしてしまったユーザーの責任も大きいのですよ。少なくとも日本の Magic サイトは、この期に及んで未だ競技に対する賛美の声で埋め尽くされてますからね。

 先日あるサイトに“TCGのユーザーサポートの比較”という話題が出ていました。これは販売店さんが書かれた内容なのですが、実は販売店って意外と冷静にそういう分析をしているのです。そして自分達にとってよりメリットのあるサポートをし、そしてその商品を頑張って売る。そんなの販売店としては当たり前の行動なのです。かつて1つのブームを築いた格ゲーが音ゲーに取って代わられた。これは要するにゲーセンの関係者が“音ゲーの方が格ゲーより稼げる”という判断をしたからそうなったのです。そして今やTCGもそうなりつつあります。ある特定のブランドのTCGが店頭から消える。あるいはTCGそのものが店舗アイテムから外れる。そういう選択をする販売店は確実に増えているのです。昔みたいにはTCGが売れなくなってますから。あるTCGブランドを生き残らせたいと思ったら、そもそも“お店に売ってもらえる商品”にしなければいけないのです。そして少なくとも Magic はそういう選択から外される商品になっていて、だから一時期販売されていたコンビニの店頭から消えた。そもそも販売店に売ってもらえないのだから売れないのは当たり前。話は簡単でしょう?

 ユーザーがメーカーや販売サイドに対して出す要望というのは、要するに「俺はこういう商品なら買うぞ(買わんぞ)!」という意思表示なのです。どうも特に Magic 辺りにはそういう要望を口にする事がタブー視すらされている雰囲気を感じます。でもそういう要望が販売に反映されない業界は遠からず滅ぶ。それは歴史が証明しているでしょう。今世の多くの企業は自社製品を売るために必死に努力しています。しかし多くはその努力も報われずに販売不振に陥っている。これが現実なのです。それなのに未だに過去の栄光にしがみつき、昔の発想のままの販促しかしない。そんな販促は今ややってないに等しいし、そんなゲームが売れる訳がないのです。だから今TVゲーム業界などは全体が低迷期に陥っている、そんな気もします。本当にそのゲームを売るべき対象は誰なのか。どうすればその対象層がゲームに飛びついてくれるのか。それをすべてのゲームが真剣に考えるべき時期が来ているのです。今日本はこれだけの不景気ですが、それでもしっかり売り上げを伸ばしている商品はあるのです。むしろ不景気だからこそ割安感をアピールしたりコスト・パフォーマンスを高めたりして、多くのライバル商品の中から自社商品を選んでもらう。そういう発想をしないと今は売れる物も売れない。これが現実なのですよ。

   

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