いかにして売り、いかにして買うか 
 
  MAGIC:the Gathering の値下げを踏まえて、改めて Magic 拡販の戦略について考えてみたいと思います。

 今まで日本の Magic には「値段が高い(コスト・パフォーマンスが悪い/輸入パックとの価格差が大きい)」「面白さが良く分からない(競技以外の遊ばれ方がされていない)」「話題性に乏しい(マスコミへの露出がない/低年齢層にアピールする要素がない)」といった問題点が指摘されてきました。これだけ問題が多い遊びが日本である程度広まったというのは、要するに“ Magic というゲームそのもののクオリティが高いことで助けられていた”のだろうと思います。ところがこれに関しても最近かなり疑問に思える状況になってきており、実際問題として Magic は少なくとも日本では今や“売れない商材”として認知されつつあるようです。その売れない最大の元凶が改善される。これは確かに日本の Magic にとって明るい材料であるとは言えると思います。しかし上にも述べたように、現在日本で Magic が売れないのは何も価格の問題だけが原因ではない訳で、今回の値下げではその1つが改善されるに過ぎないのです。しかも今回の値下げは、残念ながら日本の Magic 関係者が手放しで喜べる物にはなりませんでした。これにより日本の Magic 販売店の多くで恐らくは収支が悪化するはずで、販売店によるユーザーサポートが縮小される、あるいはいよいよ Magic 販売から撤退する販売店が更に増える可能性は十分にあります。つまり日本の Magic にとってはむしろ逆風になる危険性すら持っているのです。

 さて、では今回の値下げを日本の Magic にとっての追い風にするには、一体どうすればいいのでしょうか。

 今回の値下げで大きなメリットを得るのはHJとPH、そして今まで定価で Magic を販売していた一部販売店だろうと思います。今まで頑張って値引きをして Magic を支えてきた販売店には、もはや更に Magic を支えるだけの体力はありません。しかも値下げによって今後はますます他店との競争が激化して、特にパック売り上げの分散が予想されます。となれば、今後は“今回の値下げで恩恵を得る組織”が Magic を拡販するしかないのです。例えばDCI公認トーナメントの開催やイベントへの後援1つ取ってもそうです。今までは頑張ってイベントを開催して Magic を売ってきた販売店におんぶにだっこで、他の販売店やあまつさえHJまでがそういうやる気のある販売店のおこぼれを授かる形で商売を維持してきました。しかしその資金源となる Magic の売り上げがより多くの販売店に分散する可能性が出てきた。こうなればおのずと今まで販促をしてこなかった組織が相当部分を肩代わりするしかありません。極論すると、もし現在 Magic を取り扱っているコンビニや大手量販店がまだあるとすれば、そういう店ですら何らかの形でのユーザーサポートを始めるべきなのです。さもないと間違いなく日本の Magic は商品としてのクオリティやコスト・パフォーマンスが相対的に低下し、いよいよ衰退への流れが止まらなくなるのです。

 しかし実際問題として、そういうイベント開催やユーザーサポートのノウハウを持たない販売店が日本には多いはずです。そういうお店に今さらユーザーサポートをしろと言っても無理だ。それは間違いありません。しかしやらなきゃ恐らく日本の Magic は遠からず滅ぶのです。じゃあどうすればいいのか。そこでHJの役割が大きくなります。まずは何と言っても販売店側に「 Magic は店頭に並べるだけで儲かる商材ではない。」事を正確に伝え、その上でノウハウを持たない販売店でもユーザーサポートを可能にするシステムを構築すべきでしょう。例えばこういうやり方があります。HJに“地元で Magic イベントを開きたい有志のデータベース”と“ Magic のユーザーサポートをしたい販売店のデータベース”を構築し、HJが両者の橋渡しをするのです。有志はイベント会場や動員の確保、イベント運営や事務処理を担当し、その資金や場所の提供を販売店が行うのです。ただしそうやって開いたイベント会場で平然と安い英語版のパックやシングルカードが売買される。これでは販売店は何のためにイベントを支援するのか分かりません。また販売店の利益になりにくいフォーマットでのイベント開催も問題があると思います。それこそこの手のイベントは Standard や最新ブロックのブロック構築戦でいいと思います。とにかく Magic に関わる販売店の多くが販促に関心を持ち、同時にそれをサポートすべく動くデュエリストが大勢現れる。この事が重要なのです。

 そして更にHJには、それこそ国産TCGが実施しているような“スコアシートのコピー送付”といったきめ細かなサポートが必要になると思います。極端な話、アクエリアンエイジの公認大会では主催者はブロッコリーから送られてきた大会キットと筆記用具のみ持参すれば大会が開けてしまうのです。キットの中に大会運営に必要な書類一式と賞品、おまけに参加賞まで入っていますから。しかも Magic の一部の大会ではこのキットが有料であるにもかかわらず、その内容が無料配布の国産TCGに及ばないという有様です。これではさすがに多くの販売店が Magic イベントを開きたがらないでしょう。今回こういう形で販売店に負担をお願いする以上、せめてユーザーサポート位は国産TCGに引けを取らない物にしないと、いよいよ販売店は Magic を見放すでしょう。

 そして更に Magic の復興に必要な物、それは何と言っても“話題性”です。遊戯王OCGやデュエル・マスターズなどは、それこそこの話題性だけでヒットしてると言っても過言ではないのです。 (^^; どうもHJは相変わらずその話題性を“競技”に依存しているようです。しかしご存じの方も多いかと思いますが、つい最近あるプレミアイベントで入賞したプレイヤーが自分のデッキを「俺1人の作品だ」と発言した旨がサイドボード・ジャパンのインタビュー記事として公開され、ご本人が「そんな事は言ってない」と否定したという事例が紹介されています。以前にもGAMEぎゃざ辺りでは、大きな大会で優勝したデッキにその優勝者の名前を勝手に付けて、さもそのプレイヤーのオリジナルであるかのように見せかけるという悪行(笑)が横行していました。ただ今となってはそんな上辺だけの競技 Magic 推進、もっと言ってしまうと偽りの権威やオリジナリティを振りかざすやり方は既に破綻しているのです。実際問題として日本で競技 Magic (その賞金)で飯を食ってる人間なんて1人たりともいないはずです。10年経って実現しない事がこの先数年で実現するでしょうか。あまつさえ肝心の Magic は今や見るも無惨に下り坂を転げ落ちている有様で、これでは競技 Magic の大成など到底期待できません。

 ではなぜ Magic はマンガやアニメによる話題獲得に走らないのか。それはどうも“一部の競技プレイヤーに不評だから”という事のような気がします。それも「 Magic を小中学生が中心に遊ぶという軽いイメージの遊びにしたくない。」とか「マンガやアニメのキャラクタが話題になって競技プレイヤーへの関心が薄れるのが嫌だ。」その辺が本音なのではないでしょうか。しかし例えば Magic における萌え否定派の方々もそうなのですが、そういうアイディアを自分の主観だけで半ば一方的に否定しておいて、肝心の対案が全くと言っていいほど示されないのです。マンガはダメ。アニメもダメ。萌えもダメ。じゃあどうやって Magic を売るのかと聞くと、具体的な提案やアイディアは言わない、というか持っていない。現状の競技 Magic が今程度維持されるならそれでいい。そういう方々が日本の Magic において大きな発言権や決定権を持っている。言ってしまうとそういう事です。実際問題としてそれで日本の Magic は維持すらできなかったのですが、それでも相変わらず一部競技推進派の思想は変わらない。さすがにちょっとおかしいという気がします。競技推進で Magic が大ヒットする、あるいはせめて以前の全盛期の勢いが維持されるなら、別に今さら Magic にマンガや萌えは不要でしょう。でもそうならないから選択肢の1つとして考えざるを得ない。私が言ってきたのはそういう事なんですよ。少なくともラースサイクルの頃の Magic 全盛期は、少年マンガ雑誌に載った紹介記事がその大きな原動力になっている訳ですし。

 WoCやHJが Magic の守備範囲や話題性を高めて、より多くの人達に Magic を知ってもらい買ってもらう。そして Magic に手を出したデュエリストを販売店や常連グループができる範囲で面倒を見る。そういうシステムが日本中で確立しない限り、少なくとも日本での Magic 復刻はあり得ないと思います。粗利が少なくなった Magic で販売店が潤う方法はもはや薄利多売しかなく、日本国内での Magic 流通量を今よりも大幅に増やさない限り、日本国内の Magic 流通はいよいよ崩壊するのです。そしてそのためには Magic が取り得るあらゆる手段を講じ、しかもその手段同士が対立することなく1つの目的に向かって組織的に機能する仕組みを作るしかない。その位本気で流通を考えなければ Magic という遊びは世界的にも維持できない。これが私個人の見方です。

あいせんの“本音の部分”

 さて、多分こういう意見を読むと多くの方々が「そうは言うけど、実際問題として個人にできる事なんてたかが知れてる。」とおっしゃるだろうと思うんです。それについては私個人も同意見です。1人の個人にできる事なんてたかが知れてます。ましてや自分のWebサイトやイベントで Magic の知名度を上げようとか拡販しようなんて無理なのです。そしてだからこそこういう意見も言えます。個人にできる事なんて大したことはない。ましてや自分1人の頑張りで競技 Magic が維持できるなんてあり得ない。だったら自分自身の Magic との関わり方についても見つめ直していいんじゃないか。そういう事です。

 最近ある日記サイトに、現状の競技 Magic について疑問を呈するメッセージが公開されました。今の日本の Magic は1人の競技プレイヤーに飯を食わせる事すらできていない。ましてやそのプレイヤーが引退した後は Magic とは全く無関係の仕事を探すしかなく、その時に Magic での経験なんて恐らくほとんど役に立たない。そういう現実をちゃんと見て目を覚まし、自分自身の身の振り方を本気で考えてもいいんじゃないか。主旨としてはそういう内容になるでしょうか。しかもこういうメッセージが今や公認ジャッジ経験者の口から発信される。これが現実なのです。でも実際そうですよね。ちょっと聞いてみたいのですが、今現在競技 Magic の最前線で活躍されている方々って、果たして自分自身の5年後あるいは10年後の人生設計をどうお考えでしょうか。そもそも Magic の競技イベントが Magic の売り上げによって維持されている以上、この先5年あるいは10年と競技イベントが維持される保証はどこにもないのです。ましてや20年後あるいはその先はどうするんですか。多分今のままだと Magic そのものがこの世から消えて無くなってますよ。

 HJ辺りが雑誌で煽る文句は、はっきり言って競技プレイヤーの将来とか生活なんて事には一切責任を取ってません。そもそも責任を取る必要はない訳ですし。しかしそういう煽り文句に乗せられて自分の人生を左右され、それで結果に責任を取らされるのは誰でもない自分自身です。しかもその10代後半〜20代前半の間に蓄積した負の遺産を、それこそあなたは死ぬまで背負い続ける事になるかも知れません。「じゃあ今頑張って Magic で一生暮らしていけるだけの蓄財をしてしまえばいい。」そう言う人もいるかも知れません。でもそれって現状の競技 Magic のシステムで可能なんでしょうか。ちょっと計算してみれば無理だと気が付きますよね。じゃああなたがそれでも自分の人生をすり減らし、それこそ時間やお金、それどころか人間関係すら犠牲にしてマジックに取り組むのはなぜなんですか。物欲ですか。名誉欲ですか。それとも何となく成り行きですか。多分これに対する回答で最も多いのが「それ位 Magic は面白いんだ。」だと思います。ただこの際なのではっきり言いますが、そこまでしないと楽しめないゲームはまあ間違いなく駄作です。あと根本的な話としてそういう競技プレイヤーよりも、月に千円程度のお小遣いを使って仲間内で Magic を遊んでる子供達の方が、多分 Magic を遙かに楽しめると思います。それこそ彼らはパック1つを買う、カード1枚をトレードする事が楽しくてしょうがないんじゃないかな。

 最近私は時々「 Magic をどこに着地させるか?」という話をします。これは Magic 販売店だけでなく、特に Magic に多額の資金どころか人生まで投資してしまったデュエリストにも言える話なのです。もしあなたが今後更に競技 Magic を盛り上げて、それこそ賞金だけで飯が食えるような環境を作るという明確な志をお持ちなら、どうぞその夢の実現に向かって邁進して下さい。ただ現実は想像を絶する位に厳しい。それは間違いありません。実際に日本国内での Magic の売り上げがこれ以上落ち込めば、間違いなくWoCも日本選手権の賞金減額や日本国内でのプレミアイベント開催数の削減を考えるはずです。そういう競技 Magic 衰退の流れを押し戻し、あまつさえイベント数や賞金総額の増額を勝ち取る。あなたが競技プレイヤーを名乗りつつ、そこまでの覚悟がないのであれば、ちょっとこの辺で立ち止まって自分の今後を考えてみてもいいかも知れませんよ。あ、ただし誤解して欲しくないのですが、私は“それでも競技 Magic の大成を志して邁進する競技プレイヤー”が大勢現れて、その目標が達成される事を期待しているのです。そしてそれは多くの Magic ファンも同じなのではないでしょうか。

   

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