| 共通語なき世界 | ||
最近ニュースで国連がよく話題になります。国連という機関(!?)には中での会合などに使われる共通語はないのだそうです。例えば日本語でスピーチされた内容は、世界中で話される主な言語、例えば英語/中国語/フランス語といった幾つかの言語で同時通訳が流れ、聞く側は自分が理解できる言語の同時通訳を聞いてその内容を理解する。そういうシステムになっているそうです。世界的には英語が共通語であるという認識が一般的ですが、でも実際に母国語にしている人口という点では中国語の方が多いんですよね?さて現在 Magic というゲームの世界にも、実は“すべてのデュエリストが話せる共通語”が存在しない状態になっています。(それは発売から相当年数が経ったほぼすべてのTCGに言える話だと思いますが。)WoCやHJは Standard というフォーマットをその共通語にすべく、あれこれと苦心しています。ところがこの言語はそもそも“カードをたくさん売りたい”という意図に基づいて生まれた物で、実際問題として初心者が話す言語としてはかなり敷居が高いのです。また昔のカードが好きで Magic を続けているヴィンテージ・プレイヤーには当然好まれるはずもありません。そもそも Standard を話しているだけでは Magic の本当の魅力は理解できないでしょうし。とまあ、こんな感じで一事が万事、DCIが推奨している競技フォーマットは本当の意味での共通語としての機能を果たせずにいます。しかも日本の場合は更に事情が深刻で、かといって色々な地方で生まれた方言もなぜか定着しない、あるいは定着できないという状況になっています。それはHJが推進した Japan Classic というフォーマットの失敗を見ても明らかでしょう。GAMEぎゃざという全国的なメディアを駆使した普及ですらダメだった物を、個人や特定のグループがやったって多分無理なのです。
しかし日本の Magic 創生期、要するに日本語版第4版が発売された直後、我々日本のデュエリストは自然に“第4版(+クロニクル)限定構築”というフォーマットを共通言語として話していました。そういう状況はミラージュサイクルの頃までは確かにあったのです。ところがラースサイクル以降、日本の Magic では競技推進というか競技偏重が進み、それに追従するグループと離反するグループが明確に分かれ始めます。つまりこの時点で両者のグループには共通言語がなくなり始めたのです。そしてその後競技推進グループ内では特定のフォーマットや(能力的に強いと言われる)デッキに固執する傾向が強まり、それ故特定のカードに対する需要が極端に高まります。そのため最近のような1枚2000円あるいは3000円オーバーなんて超人気カードが出現し始めます。ただ競技推進グループ内の人間が同じ言語というか同じ単語でしか話をしなくなった以上、リソースとして限りがあるその同じ単語(カード)を奪い合うのは当然の流れとなります。しかもそういうカードを供給するはずの競技推進から離反したグループが、WoCやHJの失策もあって多くが競技 Magic どころか Magic そのものから離反してしまいました。そのため今のような極めて遊びにくい Magic ができあがってしまった。言ってみればそんな感じです。
例えばの話、国連で「今後国連の会合では英語を唯一の共通言語にしよう。」とか言い出したら、まあ間違いなく大騒ぎになるでしょう。それは他の言語を話す国や民族の存在を根本的に否定する事になり、最終的には国連という仕組みそのものが維持できなくなるからです。ところが Magic の世界では、どういう訳か「 Magic の世界では競技フォーマットを唯一の共通言語にしよう。」という意見が平然と掲げられ、あまつさえ多くのデュエリストがそれを支持し始めたのです。そりゃあそういう言語に愛着も親近感もない、あるいは話そうにもカード資産が乏しくて会話に入れない人達は Magic から逃げ出しますって。だから Magic は世界的に衰退し始めた。実は仕組みとしては案外単純なんですよ。
じゃあどうすればいいのか。これには大きく2つのアプローチ法があると思います。1つは“より誰にでも話しやすい共通語を作る”という方法です。実はそれに向けた実験として私が考えたのが、今イベント告知を出している“単一ブロック構築”です。自分が過去にたくさん買ったブロックや基本セットのカードが自由に使え、対戦相手のデッキの強さもおおよそ見当が付く。これなら言語の習得はそれ程苦にはならないでしょう。そしてもう1つは“共通語の多様化”という方法です。より初心者向けの物からコア・ユーザー向けの物まで様々な言語を用意し、どれか1つでも話せるデュエリストを増やす。そんな感じです。極端に言えばコレクションだって Magic という世界で使われる1つの言語なのです。ただ後者に関して言うと、現在のDCIが制定しているフォーマットには大きな不備があります。今のフォーマットには超初心者が気軽に Magic を始められるフォーマットや、半ば引退しかけたデュエリストが過去のカード資産で Magic に留まるためのフォーマットが存在しないからです。確かにカードを売る側から見ればそんなフォーマットは要らないかもしれません。しかしそうやって多くのデュエリストが Magic との縁をつなぎ続ければ、いずれ彼らの多くがコア・ユーザー化して Standard といった競技フォーマットを始めてくれる事だって十分に期待できるんですよ。
昔の Magic は販売店の店頭に置かれたコモン箱をひっくり返し、そこから拾ったカードだけで十分に始められたんです。そういう懐の広さが最近の Magic にはないんですよね。WoCもHJもデュエリストにパックを買わせる事に躍起になって競技フォーマットを押し付け、肝心要の“ Magic を始める動機付け”とか“ Magic の面白さを知ってもらう工夫”をほとんどやってこなかった。そりゃあ Magic から人がいなくなって当たり前ですって。最近日本でもMTGOの話題が大きく扱われ始めていますが、それって要するにあそこの住人は皆さん今は似たようなカード資産で、しかもそれこそ全員が共通語を話しているから盛り上がれるのだと思います。しかし2年も経つとMTGOだって今のリアル Magic と同じ問題を抱え始める訳で、今のうちに明確な打開策を打ち出してMTGOへの応用を図る事を検討した方がいいと思います。そう遠くない将来にMTGOでもブロック落ちは始まるんですよね。でも Extended のカードはMTGOには全部はない訳で、一体WoCはどうするつもりなんでしょう?
| ※ | ちょっとご指摘があったので“国連の公用語”について補足を。 国連における公用語は、英語/フランス語/スペイン語/中国語/ロシア語/アラビア語の計6言語です。国連総会を始めとする国際機関の主要な会議ではこれらの6カ国語の同時通訳が行われ、条約/勧告/調査報告などの文書のうち主要なものはこの公用語に翻訳されます。また国連などの国際機関の職員、すなわち国際公務員としての資質として、公用語のうち最低2カ国語に堪能であることが求められます。 ただ現在日本は国連に対して米国に次いで世界第2位の資金提供を行っています。また日本とドイツの常任理事国入りが議論されており、今後この公用語のシステムが大きく変わる可能性もあります。少なくとも上記の6カ国語を世界の共通語と考える認識は、多少時代遅れになりつつあると思います。 ・・・とまあ、こんな内容は改めて書くまでもなく常識の範囲でしょうけどね。 |
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私は自称“日本で一番多くのフォーマットで Magic のイベントを開いてきたイベント・コーディネイターの1人”なんですが、やはり実感としてDCIが制定した競技フォーマット以外の Magic 普及は難しいです。実際問題として私個人は今ではもうすっかり匙を投げてます(笑)。 冗談抜きの話、最近のデュエリストの多くがどこかの大きな大会で上位に入ったデッキ、そしてそこで使われたカード以外は見ちゃいないんでしょう。だからそもそも使おうという発想すら起こらない。これではどんなフォーマットのイベントを開いても、結局のところ“どこかで見たことがあるデッキの粗悪なコピー”しか出てこない訳です。ただそれでイベントに来てくれればまだましで、実際には「このデッキにはあのカードが重要パーツだから、それが使えないあんなフォーマットの大会には出ない。」になっちゃうのでしょう。前にも書いていますが、そういう現状を打破するにはもはや“競技フォーマットの大会並あるはそれ以上の特典を参加者に与える”位しか方法はありません。つまり私のような個人主催者には到底無理なのです。 ただどうも見ていると、最近のデュエリストの多くに“負けるのが嫌でイベントに来ない”という傾向も見られるのです。福井の Type-I のイベントなんかその典型例です。あそこにはパワーナインを満載した強いデッキを持った人達が大勢来る。そんな中では自分は勝負できない。最初から負けると分かっている大会なら行かない。そういう事のようです。でもはっきり言いますが、パワーナインを含めた絶版カードがどの位恐ろしいのか、そしてどうすれば対策できるのかは“実際に何度か戦ってみなければ分からない”と思うのですが。そして同じ理由で多くのデュエリストが Extended にすら踏み出せないでいるとしたら、皆さんは買ったカードを2年で使い捨てるというWoCの方針を頭から受け入れた事になります。それで一方で「日本の Magic は高いから並行輸入で買ってもいいよね。」とか言ってるとしたら、そんなデュエリストは目の前に正座させて半日説教しますよ(笑)。自分で Magic というゲームの可能性の芽を摘んでおいて、それを周囲の環境のせいにするのはわがまま以外の何物でもないでしょう。 私が自分の主催イベントを休止した最大の理由、それは“人が来ない”からです。会場に来たらとにかく参加費払ってイベントに出てくれなんて、私は参加者に1度として言った事はないはずです。取りあえずギャラリーとしてヴィンテージなりローカル・フォーマットのイベントの様子を見てみて、面白そうだったら次回以降の参加を検討する。それでよかったのです。しかし最近はそのギャラリーすらいない有様で、さすがに私個人は開いた口が塞がらなくなりました。ただ福井の Magic は実を言うと、今最大の危機を迎えていたりします。既に福井の大学サークルには Magic サークルとして機能している組織はないと思われ、更には例の高校生選手権で活躍した3人組を中心とする高校生グループが、大学進学を機に大量に福井からいなくなりそうなんですよね。しかもいつもお世話になっている Magic 販売店は、これとは別の事情で Magic の規模を縮小せざるを得なくなっていますし。私自身も福井での後進育成に失敗した責任は多少なりとも感じているのですが、こればかりは個人でやってる事なので限界があるのも事実です。まあそれ故“より初心者が遊びやすいフォーマットの普及”をWoCなりHJに是が非でもお願いしたいところなのですが。 最近色んな地域から「デュエルスペースがなくなった。」「行きつけの店が閉店(あるいは Magic から撤退)した。」「開催イベントが参加者不足でフィズった。」なんて話が聞こえてきます。こういう危機感をWoCやHJは持っているんでしょうか。もし日本の Magic の現実をちゃんと見ているのであれば、少なくとも今までのような Standard 一辺倒の競技推進には何らかの歯止めがかかって然るべきだと私は思います。競技の世界に入る前のデュエリストにどれだけ Magic で楽しく有意義な経験をさせるか。それが Magic の今後を左右すると言って間違いないと私は思っています。ただこれだけ競技指向で勝ち狙いで情報依存症じゃあ・・・という感じです。楽しくないゲームに人は投資なんかしちゃくれませんよ。 |