アタリショック 
 
 最近“アタリショック”等という昔々のお話を思い出す機会がありました。

 流石にアタリショックなんて言葉を知らない世代も多いかと思うので、簡単に説明しておきます。1973年に米国のアタリ社(この名前は囲碁の“当たり”から来ているそうです)が初のコンシューマ機“アタリVCS”を発売し、1500万台を普及させる大ヒットとなりました。しかしこのゲーム機の販売方針には大きな問題がありました。アタリ社は自社ハードの仕様をすべて公開し、誰にでもゲームが作れるようにした訳です。これにより確かに良質なゲームも多く発売されたのですが、同時にブームに乗ってちょっと儲けよう程度の発想しか持たない粗悪なゲームも数多く出回る事となりました。しかも当時はゲームに関する情報なんてほとんど無かったため、ゲームの善し悪しは買って遊んでみなければ分からないという状態でした。どんなに良質なゲームを作っても他のゲームに比べて爆発的に売れる訳じゃない。逆に適当に作った粗悪なゲームでもそれなりに売れちゃう。こういう状況の中でアタリVCSのゲームは、日を追う毎に相対的なクオリティが下がっていったようです。また何よりもユーザーが「騙された!」という経験を重ねる事で、市場には疲労感にも似た不満が鬱積していったと思われます。

 そして、ついに“その時”はやってきました。1982年のクリスマス商戦、アタリVCSの更なる拡販を見越してメーカーは増産をし、そして問屋や小売店も大量にゲームを仕入れました。ところがそれまでの経緯でアタリVCSというゲーム機に見切りを付けていた消費者は、ついに「もうアタリVCSには期待しない」「買わない」という決断を下したのです。それまでの勢いが嘘のようにアタリのゲームは全く売れなくなり、当然業界は大パニックとなりました。しかもその後のアタリ社(正確にはその親会社らしいですが)の対応のまずさも重なって、ついに米国のTVゲーム業界は「死んだ」とすら称される低迷期を迎える事となりました。これが世に言うアタリショックです。(更に詳しい解説ができる方、是非とも会員板辺りでフォローよろしくです。 (^^; )

 当然この事例を日本のゲーム業界も理解しており、そして十分な事例研究をした上でゲームの販売をしている・・・はずです(ぉ。特にアタリショックの影響真っ直中であった1983年にファミリーコンピュータを発売した任天堂は、自社ハードで発売するゲームのクオリティに関してもかなり厳しいチェックをかけていたそうです。これがいわゆる“任天堂チェック”と言われる物です。(ただし実際には、そういう仕組みにして自社にロイヤリティを支払わせるという意味合いが大きかったようですが。あと任天堂チェックがゲームの内容にまで踏み込んでいるというのは、ある大物タイトルがこの任天堂チェックにより発売が延期された事から知られるようになったと記憶しています。)あと「そういう規制をあまりかけなかったプレイステーションが、半ばアタリショックに近い状況になった。」という説を唱える方もいらっしゃるようです。確かにPSのゲームって、特にPS2が出る間際の様子にはそれを感じさせる物がありました。ただ「一連の任天堂のやり方が気に食わないソフトハウスを自社傘下に引き込もう」という発想でPSは立ち上がった訳で、仕組み上そうなる事はある程度やむを得なかった訳ですが。

 で、私がなんでこのアタリショックの話を持ち出したのか。多分今までのエッセイを一通り読まれた方には説明の必要はないでしょう。そうです、トレーディング・カードゲームに関してこの“アタリショック”に類する大事件が起こりかねない。そういう危惧を持ったからです。いや、正確には「そういう危惧があるよね」というネタ(!?)をある方から頂いたのですが(爆)。でも思うのですが、既にTCGの世界ではアタリショック(=ゲームの質の低下といった要因によるユーザーの急激なゲーム離れ)に準ずる事は起きているのではないでしょうか。ただしこれは日本国内に限っての話ですが。

 KONAMIが平成13年度の決算を発表しました。この中では遊戯王OCGの業績に関して直接的には触れていませんが、決算の内容から「予想以上に厳しい」事だけは伺えました。遊戯王OCGを含むCP事業の売り上げが、前年度比で41%程度に落ち込んだそうです。しかもKONAMIによると「遊戯王OCGが米国でのアニメ放映でブレイクし始めている」らしいのですが、それで41%という事は要するに“日本国内での売り上げの落ち込みが相当な物になっている”という事になります。実際に最近米国の方からは、それこそ一時期のポケモンTCGみたいに「遊戯王くれ!」とカードを買おうというバイヤーからのアポが頻繁にあるようです。それでも遊戯王OCGの売り上げがこの程度と思われる。つまり「米国での売り上げアップの分を国内での売り上げの更なる落ち込みが食ってしまった」と考えられるのです。

 去年の8月にKONAMIは「遊戯王OCGの2001年度の売り上げは、2000年度に比べて4割程度に落ち込む。」という業績予想を発表しています。(今回の決算でKONAMIはその予想を訂正していませんから、実際その位だったのでしょう。)でも米国で遊戯王OCGが売れているのに全体として遊戯王OCGの販売数量がその予想通りだったとすると、つまり日本国内での2001年度の販売実績は2000年度に比べて3割あるいはそれ未満である可能性すらあります。あまつさえKONAMIの発表を見る限り、既にKONAMIは日本のTCG市場に見切りを付けていて、今後は欧米市場向けに遊戯王OCGを売っていこうという発想しか持っていなさそうです。しかも遊戯王OCGは掛け率が高いため、米国のバイヤー等が「売ってくれ」と打診してきても、あまり安い値段では出せない(出すとすれば誰かが泣くしかない)という問題も抱えています。ですからポケモンTCGのように、米国でのブームが日本国内の業者を救済してくれるかどうか、やや懐疑的な見方もできます。

確かに日本でも遊戯王OCGは“新製品に限っては”売れているそうです。しかしそれはイコール「新規プレイヤーが増えていない」事を示しているとも考えられます。TCGに新規プレイヤーが参入する場合はある程度昔のカードまでさかのぼって揃える必要があります。その昔のカードが売れていない。遊戯王OCGに新規プレイヤーが数多く参入し続けているのであれば、本来はそういう売れ方になるはずがないのです。あ、ちなみに“最新のカードセットしか売れない”という状況は、私が伺っている限り Magic も他人事ではないようなのですが。 (^^;;;

 遊戯王OCGがなぜ売れなくなったのかについては以前にも私なりの分析を書いていますが、その後そっち方面に詳しい方から (^^; 別の要因を指摘するご意見を頂きました。それによると遊戯王OCGでは“プレミアカードの再販”が頻繁に行われてきたそうです。何かの付録とか賞品として発行された超プレミアカードまでが、ある日別のパックでコモンカード同然に再録されるのです。これを私個人に当てはめてみると「 Homelands でU1扱いだった Aysen Crusader(HL) が、ある日突然『今度の基本セットにコモンとして再録します。あ、イラストはもちろんオリジナルのままね。』とやられる。」という感じです。はっきり言いましょう、これをやられたら私でも Magic やめますよ(爆)。というか、これではコレクターは遊戯王OCGに定着しないしできないです。しかも噂によると、今年の夏辺りにも同様の商品が発売予定なんだそうですが。

 少し前から遊戯王OCGでもゲームシステム上の問題点を改善しようとする動きが起きているそうで、実際それにより最近の遊戯王OCGはかなり良い感じのゲームになっているそうです。でもそういう改善が売り上げアップに結び付いていないし、しかもTCGで大きな需要が見込める“コレクション”の市場を自ら崩壊させてしまっている。これでは遊戯王OCGで“プチ・アタリショック”と言えるような現象が起きても不思議じゃないでしょう。 (^^; しかもTCG市場に占める遊戯王OCGの比率は半分かそれ以上。となれば、その波紋がTCG市場全体に広がる危険すらある。今や“TCG市場全体が危機に瀕している”と言ってもあながち間違いではないのです。更に前のエッセイで書いたように、そういう経緯から日本国内ではTCGという遊び全体にケチが付いたというか、既存のゲームや新製品に対する期待感みたいな物がほとんど無くなりつつあります。(嘘だと思うなら、いわゆる“おもちゃ屋”と呼ばれる店でTCGがどの位の重みを置いて売られているか、近くの店を回って見てみるといいと思います。)そんな中で相変わらず新しいタイトルのTCGがどんどん出てきていて、でもどれを取っても“ポスト遊戯王OCG”になり得そうなパワーを感じない。これだけの状況を見て、それでも皆さんは「いやTCGは大丈夫だ」「自分が遊んでいるこのTCGは問題ない」と言い切れるでしょうか?。現に遊戯王OCGの販売不振はそのままTCG販売店の売り上げを直撃しています。それで販売店が閉店に追い込まれたりデュエルルームやイベント等のサービスを縮小したら、あなた自身がTCGを楽しむための“場”を失う事になるのです。

 じゃあ、どうすればいいのか。そして自分には何ができるのか。それは皆さん自身で考えてみて下さい。こういう事を他人から押し付けられるのは気分の良い物ではありませんし、結局は“なるようにしかならない”のですから(爆)。ちなみにそういう意味で言うと、特許という網を被せられてしまった米国のTCGはある意味幸せだったのかも知れない。そんな気さえします。ひょっとしてWoCはここまで考えた上でTCGの特許を取得したのでしょうか。

あいせんの“本音の部分”

  MAGIC:the Gathering のユーザーサポートに関して、更に大きな動きがあったようなのですが、その中で一瞬「DCIジャパンという組織が無くなったのではないか?」とも思われる動きがありました。 (^^;

 少し前から Magic の日本総代理店であるホビージャパンの中に“トーナメント運営事務局”という部署ができました。最初は何をする部署なのか良く分からなかったのですが、最近それが明らかになりました。要するに日本国内のDCI公認トーナメントの申請/事後報告を受け付ける部署。そうです、かつてDCIJが行っていた業務をそっくりそのまま引き継いだ部署だったのです。しかもこの部署はこれから公認トーナメントを開こうとする個人やショップのサポート、あるいは例の学園祭サポート企画の受付窓口にもなっています。

 しかも渋谷にあるトーナメントセンターが、その名称を“マジック:ザ・ギャザリングトーナメントセンター”に変更しました。これにより表向き我々デュエリストがDCIJという組織を意識できる事象は全く無くなってしまいました。某所の情報によると「それでもDCIJという組織は存在している」らしいのですが、そうなると果たしてここが今後どういう仕事をするのかちょっと注目されるところです(笑)。だって日本でのプレミアイベントの主催はWoCかHJですし。ひょっとすると今後デュエル・マスターズでDCI公認トーナメントが開催されるような状況になったら、タカラもDCIJにお金や人を出して・・・なんて事になるのでしょうか。

 さて、では我々デュエリストは今回の事をどう捉えれば良いのでしょうか。

 私は個人的に「今回の措置はデュエリストに取っても歓迎される事なのでは?」と考えています。今までHJは「公認トーナメントの申請はDCIJへお願いします。しかしDCIJは公認トーナメントの公正さを維持するために、賞品の提供といった事は行っていません。もし希望があればHJにお願いします。」と言ってきました。私はこれを前から「結局HJは賞品を出すのが嫌で、それを言い逃れるためにそういう複雑怪奇な仕組みにしているだけだ。」と言ってきました。そういう見方を否定するデュエリストは少なからずいらっしゃる、そうですよね?。でも今回の組織改編で、それが実際どうだったのか決着が付くんじゃないでしょうか。HJには本当に公認トーナメント推進への志があるのか、それともやっぱりドケチなだけだったのか(笑)。この際だからはっきりさせよう、私はそう考えています。

 ただ取りあえず私としては、自分からHJに「賞品出して下さいよ」等と言う気はありません。それは「他の大部分の(しかも Magic よりも市場規模がずっと小さい)国産TCGが、何も言わなくてもメーカー公認大会には自発的に賞品を出しているから。」です。そういう日本では当然の事をHJが相変わらずしない、あるいはできないとしたら、そろそろいい加減に我々もそういう企業に見切りを付けるべきなのです。「やっぱりHJはそういう会社だった。そういう企業に自分達が楽しんでいる遊びの未来を託す事はできない。」そういう見切りを付けてしまえば、我々がその後本当にやるべき事が見えてきます。だって今まで我々日本のデュエリストって、HJの強欲さとか怠慢さに何度泣かされてきましたっけ?(爆)。本当思いますが日本のデュエリストって我慢強いというか寛容というか・・・。 (^^; これが欧米のトーナメント・プレイヤーだったら、それこそ「○○○○!」とか言ってブチ切れていると思うのですが。 (^^;;;

 ただ少なくとも販売店の方は、生活がかかっている分デュエリスト程甘くはないようです(笑・・・えない (^^; )。福井市で最も古くから Magic を扱っている書店が、最近になって英語版 Magic を税込み¥400で売り始めました。(私はこの前久しぶりに買いに行って気が付いたのですが。しかもこのお店は図書券で Magic が買えてお釣りまで出してくれる (^^; かなり良い感じのお店になっています。)この値段は代理店経由の仕入れルートではほとんど実現できないと思われ、多分この店も並行輸入の英語版を導入したものと想像されます。これで福井市内の主な Magic 販売店は、ほぼすべて英語版は並行輸入の物を主力商品としていると思われます。こんな田舎のお店にすら支持されない“日本総代理店”に、私個人はもはや僅かばかりの存在意義も見出せなくなりました。何よりもこんな明らかにイレギュラーな(=流通が正常に機能していない)状態のまま、日本の Magic が今後更に大きな成果を挙げられるとは、私には到底考えられないのですが。

   

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