TCGの存在意義 
 
 少し前から新作TCGの話題を取り上げていますが、なんと今度はあのデジキューブまでがTCG発売を発表するに至りました。 (^^; しかも題材となるのは知る人ぞ知る大作RPG“Ultima”です。私個人はUltimaの世界に関してほとんど知識が無いのですが、でもUOの遊ばれ方なんかを見ていると、Ultimaファンの多さやその拘りといった物は相当期待できるだろうという気はします。ただしそれがTCGの拡販にそのまま結びつくかどうかは別問題のようですが(笑)。というか、私個人はホビージャパンと同じ位デジキューブは嫌いな会社なのですが(爆)。

 ただこうなると私には1つの疑問が浮かんできます。それは「世の企業はTCGというゲームの現状をどう認識しているのだろうか?」という事です。今の様子を見ていると、どうしても私はその状況が、かつてのたまごっちブームの時と重なって見えてしまうのです。たまごっちブームを作ったゲーム、それは言うまでもなく“たまごっち”です。そしてそのブームに少しでもあやかろうと、世にはもの凄い数の“パチモン (^^; ”が出回りました。当時本物のたまごっちが極めて入手困難だった事もあり、そういった紛い物ゲームもかなりの勢いで売れたのです。

 しかし“その時”は意外にあっけなく訪れました。特にたまごっちブームを生み出す原動力となった女子高生や子供が早々にたまごっちに飽きてしまい、これに合わせてブームは急速に終焉に向かいました。するとパチモンも一気に需要が無くなり、本当にパッタリと売れなくなってしまったのです。前にも書いていますが、バンダイはたまごっちブームで得た利益とほぼ同額の負債を、その後2年間に渡ってたまごっちのために負担する羽目になっています。ブーム終焉の見極めを誤って量産を続けた事がその理由です。ですから紛い物を作っていた多くのメーカーも、多かれ少なかれ同様の損失を被っているのではないかと想像されます。

 かつてのたまごっちブームが短命だった理由の1つに「その後発売されたすべてのゲームが“携帯型育成ゲーム”というゲーム・カテゴリーを発展させる戦力にならなかった。」という事があります。要するに企業側には「このブームに乗ってうちもちょっと儲けさせてもらおう。」という発想しか無くて、それこそ「このゲームでたまごっちの牙城を突き崩してやるぜ!」とか「うちはこのゲームで10年は飯を食ってやる!」という覇気のあるゲームが出なかったのです。だからユーザーはあっと言う間に携帯型育成ゲームに飽きてしまった。これは後から振り返ってみると極めて当然の成り行きであり結末なのです。本家たまごっちの続編としてバンダイが発売したゲームですらそういう有様だった訳で、これでは流石にどうしようもないでしょう。

 さて話をTCGに戻しましょうか。日本のTCGは遊戯王OCGによって1つの時代を築きました。日本のTCG市場は全盛期には500億円規模とも800億円規模とも言われていて、少なくともその半分を遊戯王OCGが占めていました。つまり1つのゲームが年商300億円〜400億円も売れている。しかもTCGは印刷物なので、多分製品価格に占める製造原価なんて微々たる物と想像されます。(同人等で印刷業者に仕事を依頼した経験があると分かるのですが、印刷物の原価の大部分は“原版”が占めています。つまり数を作れば作るほど1枚当たりの原価は安くなるのです。)とすれば、これに他の企業が便乗しない手はないでしょう。ましてや日本は米国のようにTCGに特許の網が被せられていないので、どの企業でも自由にTCG市場に参入する事ができるのです。

 しかし残念な事に、やはり日本のTCGにも「遊戯王OCG!?、笑わせるな。うちのTCGの方が遥かに面白いしサポートだって充実してるぜ!」と豪語できるようなビッグ・タイトルが現れていません。これはあくまで私個人の印象ですが、遊戯王OCGを追い抜けるだけの潜在能力を持ったTCGって、現在発売されているタイトルの中では多分 MAGIC:the Gathering だけではないかと私は感じています。しかしご存知のようにその Magic ですら、特にここ2〜3年は“二匹目のドジョウ”狙いみたいな売り方しかされていないのです。 (^^; 元祖TCGが自らの模造品に負けていて、しかもなぜかその模造品の商売のやり方を真似している。更にその他の国産TCGも似たり寄ったりで飛び抜ける物がない。これじゃあそろそろ日本の消費者がTCGというゲームそのものに見切りを付けても何ら不思議ではないのです。

 そこで問題となるのは「これから発売されるTCGタイトルが、一体今のTCGの現状をどう認識していて、そして具体的にどうしようと思っているのか?」という事です。私に言わせると「TCG市場はまだ多少は持ちそうだから、うちもちょっと製品を出して少しでもおこぼれに預かろうか。」みたいな企業なりタイトルがいくら参入しても、TCG市場の延命とか発展には貢献しないのです。ただ、たまごっちの事例と比べてTCGは「各作品が自分自身で高いネーム・バリューを持つべく色々と工夫している。」という点では評価されるでしょう。特定のビッグ・タイトルにおんぶにだっこではなく、自分で自分の名を売って市場を拡大しようという覇気が一応感じられます。しかし実際にはここ最近、新しく発売された(あるいは発売が発表された)TCGタイトルにほとんど期待する声が聞かれない。これも現実のようです。これは前にも書きましたが“日本人全体が既にTCGというゲーム・カテゴリーを見限っている”と受け取れるのです。実際にハリーポッター位話題性の高い物でも駄目だった。そうなると今後どれだけ凄いタイトルを持ってきても、かつての遊戯王OCGのような熱狂を起こすのはもはや不可能になっている。そういう印象が私には強くあります。

 じゃあなぜそうなったのかというと、1つには“1度TCGに手を出した人が得た経験則”という話があります。私の周囲にも1度は Magic に手を出して、そしてやめていった人が大勢います。その彼らの経験談を伺う限り、彼らが今度 Magic の世界に戻って来る事は到底期待できる物ではありません。となれば、彼らがその時点でTCGという遊びそのものにも自分なりの三行半を突き付けている可能性は高いのです。あともう1つは“TCGを見る周囲の目”という問題です。前のエッセイにも書きましたが、はっきり言って今TCGが遊ばれている様子を見ても、周囲の人達が「このゲーム面白そうだぞ!」と感じられる要素なんか微塵も無いのです。それである日誰かがそのユーザーが青息吐息で苦しそうに遊んでいるゲームを「これ絶対に面白いから遊んでみてよ!」と勧めてきた。それで買ったとしたらその人はバカです(爆)。

 TCGプレイヤーは過去の販売サイドのサポートのまずさとか、プレイヤー同士の軋轢(競技偏重/強さ重視/シャーク被害 etc. )によって、今やその多くが疲弊しきっています。そしてそういう様子を周囲のノン・TCGプレイヤーは極めて冷静に見ています。そんな中で新たなタイトルのTCGが発売されたって、かつての遊戯王OCGのような爆発的なヒットが期待できるはずがありません。言い換えると「既に日本ではTCGというゲーム・カテゴリー全体にケチが付いてしまっている。」という事です。じゃあ今後TCGを発売しようとしているメーカーは、果たしてその事に気が付いているのでしょうか。気が付いていないとしたら相当なお間抜けちゃんですが (^^;;; 実際にはそんな事はあり得ないでしょう。じゃあそういう現状を打破しようと何らかの策を考えているのか・・・これもはっきり言って全部のTCGメーカーには期待できません。つまり相当数のTCGメーカーは“おこぼれ頂戴”的な発想しか持っていない、そう考えた方が多分無難です。でもそんなTCGに手を出して、結局損をするのはプレイヤー自身です。ですから我々は今後、様々な情報を見聞きして自分が遊ぶTCGを取捨選択していく必要があるでしょう。目指すべき最終目的は“やる気のある面白いTCGを生き残らせる”事です。もちろん“自分が好きで遊んでいるTCGを生き残らせる”事ができれば理想なのでしょうが、現実は・・・どうですかねえ。このまま何もしなければ、それこそすべてのタイトルが遊戯王OCG衰退の煽りを受けて共倒れする事だけは確かなのですが(嫌爆)。

あいせんの“本音の部分”

 なんか最近 Magic の方が色々と賑やかみたいです。サプライ品のラインナップが充実して良い感じだと思っていたのですが、今度は学園祭での Magic イベントをサポートする動きがあるようです。(ただ雑誌に掲載された告知を見る限り、どうもこの企画の言い出しっぺはHJではなくWoCみたいな気がしますが。)あと細かい話ですが、例のぎゃざデッキ・スリーブがリニューアルして普通のスリーブになっちゃったようですね。 (^^; 多分客層をより高年齢層に設定した事による措置かと思われますが。

 少し前に書いたエッセイで「WoCはデュエル・マスターズを『 Magic へステップアップするための入門用TCG』と考えているのかな?」という推察を書いたのですが、何でもそのデュエル・マスターズの開発に携わられている某 Magic プレイヤー(・・・って、某にも何もなってませんが (^^; )の日記に、それを裏付ける内容が書かれていたそうです。そうなると、実はこの学園祭サポート企画ってかなり的を射た物だと私は感じています。要するにWoC/HJは1度小中学生辺りに向け始めた Magic の販売戦略を、再度高校生あるいは大学生以上向けに軌道修正し始めた訳です。GAMEぎゃざや例のCSの番組辺りで、HJが事ある毎に「高校に Magic サークルがある所もある。」という話を繰り返し紹介しているのもその現れでしょう。こういう形で1つの高校や大学の中での Magic の知名度を高める。これは一見するとかなり遠回りかつ地道な活動ですが、最終的に Magic というTCGを大きく育てるには必要不可欠な物なのです。しかも高校→大学と進学した学校に Magic サークルがあれば、その人が Magic との縁を長く結び続ける事も期待できます。まあそんな基本的な事に気が付くのが相変わらず3年程遅いのが何ともはやですが。 (^^;;;

 でも今WoCが考えているであろう販売戦略には、はっきり言って色々と解決すべき問題が山積みです。まず何よりも「TCGというジャンルの遊びに半ば飽きてしまった日本の子供達に、どうやって改めてデュエル・マスターズに手を出させるのか?」という問題、そして「そうやってデュエル・マスターズを遊び始めた子供達を、いつどういうきっかけを与えて Magic に転向させるのか?」という問題です。過去に Magic では Portal とか Starter といった初心者向けTCGがこけています。 (^^; しかも日本におけるデュエル・マスターズと Magic の販売網は全くの別系統ですから、両者が互いのユーザーを食い合って共倒れになる危険性すらあります。 (^^;;; ただ少なくともデュエル・マスターズと Magic の販売方針を統一する方法はあります。HJ以外の企業も直接WoCから Magic を仕入れられるようにし、同時にHJにもデュエル・マスターズといった他のWoC製品を扱わせる事です。(ただHJが必要以上に口を出すとろくな事がないので (^^; あくまで一問屋として販売に参加してもらう訳ですが。)そしてすべての販売方針をWoCがプロモーションし、その指示通り日本の企業が動く。たったこれだけの事です。まあそうなれば当然「現状の Magic の販売価格が妥当か否か?」に関しても、WoCが改めて判断する事になるでしょうが。というか、少なくともポストホビーとホビージャパンの間で行われている“謎のキャッチボール”は間違いなく解消されるのですが(爆)。それでは他の流通経路で流れてくるカードに対抗できなくなりますから。

 現状の様子を見て「WoCが本気で日本のTCG市場で覇権を握るべく動き始めた。」と考えるのは、そんなに飛躍した発想ではないだろうと私は考えています。ましてや日本のTCG市場を半ば独占していた遊戯王OCGはその勢いを失いつつあるものの、今度は事もあろうにWoCのお膝元である米国でそのシェアを伸ばしている。あまつさえその遊戯王OCGは元々 Magic をベースに考え出されたTCGで、でも遊戯王OCGがいくら売れてもWoCには1円の実入りもない(笑)。これでWoCが面白かろうはずがありません。「ならば今度は我々が日本のTCG市場を頂こう。ただ Magic ではもはや無理そうなので別のTCGを作るけどね。」という事なんでしょう。 (^^; しかもデュエル・マスターズに関しては、歪な販売戦略でTCG自身や多くのプレイヤーの道を踏み外させた某社の影響も無さそう(ぉ。あまつさえあのベイブレードを世に送り出したタカラが売り出すというおまけ付き。取りあえず期待してみてもよさそうかな?、と私は思っているのですが。ただデュエル・マスターズの販促ポスターにあった「 Magic 同様のサポートを企画中!」の文字が私には気になってしょうがないのですが。 (^^;;;

 そろそろ我々TCGプレイヤーは、TCGという遊びを包括的に考えるべき時代に来ていると思います。自分が遊んでいるこのタイトルだけが流行ればいい、そういう時代はもう既に終わっているし、何よりもそういう発想において日本のTCGは既に失敗したのです。 Magic をより広めるためにデュエル・マスターズも応援する。TCGという遊びを日本により広めるためにアクエリやモンコレ等とも連携する。そういう発想が必要になっています。個別タイトルが互いのシェアを争って凌ぎを削るのは、もうちょっとTCGという遊びの市場を育ててからでも良いのです。まずは遊戯王OCGにおんぶにだっこで、その盛衰がそのまま市場の将来を左右しかねない現状をどうにかする。日本国内でTCGという遊びを定着させて、それこそTCGを扱うサークルが高校や大学に当たり前のように存在する。そしてTCGが日本で囲碁や将棋並の市民権を得る。そういう状況を生み出す事を考えるべきなのです。それには何をさておき「もっとTCGという遊びを魅力のある面白い物にする」事が最重要項目になるでしょうが。

   

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